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019 護る
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執務室からそのまま入れる寝室。ベッド以外なにも置かれていないただ寝るためだけの部屋にオレは居た。真っ暗な中、ベッドの上で横になり、考えを巡らす。
今のバウムガルテン領は、解呪したアイテムの売買と、教育を施した領民の給料の上前を跳ねるこの二本柱で成り立っている。
今のところ儲けが大きいは、前者だ。たまに掘り出し物があるからな。たまに驚くほど高価なアイテムが紛れ込んでいる。まぁ、それも呪われた状態では使えないから安く仕入れられる。この差額は大きい。
では、領民を売るのを止めれるかといえば、それは少し難しい。強制的に領民の人数を調整することができるので管理が楽なのだ。卒業生を雇って教師役にしたからな。時間が経ち、体制が整えばさらに楽になるだろう。
一部の母親の根強い反対はあるようだが、それを押し通すほどのメリットがある。
金策全体的には、まだまだ借金を返せるだけの余裕はないが、小康状態を作り出すことができた。少しずつではあるが、貯えが生まれている。
この貯えを元手に新たな産業をでも起こしたいところだが……。なかなか難しい。
バウムガルテン領は、西三分の一が作物の育ちが悪い枯れた大地で、東三分の二は手付かずの深い森林が広がっている。
焼き畑でもやりたいところだが、森を焼くと住処を失ったモンスターたちがスタンピードを起こすらしい。やりたくてもできない。
今のところ、東村で小規模な木こりに利用するだけで精いっぱいだ。
「はぁ……。東の森を活用できれば……」
コンコンコンッ!
そんなことを呟いた時、ノックの音が飛び込んできた。慌てた感じはない。緊急事態というわけではないだろう。誰だ?
「お兄さま……。もう寝てしまいましたか……?」
「リア? まだ起きてるよ。入っておいで」
ガチャッとドアが開き、揺れることがない青白い光を放つライトストーンに照らされたコルネリアが姿を現した。コルネリアの後ろには、デリアの姿も見える。
「どうしたんだい、こんな時間に?」
「その……。眠れなくて……。私も一緒に寝ていい?」
「いいよ。おいで」
「わーい!」
コルネリアがまるで弾かれたようにオレのベッドの上に登ってくる。
たぶん今日は昼寝していたからまだ眠くないのだろう。
「おじゃましまーす!」
勢いよくオレの隣に横になるコルネリア。じんわりとコルネリアの温もりが伝わってくる。
コルネリアは生きている。それだけでオレは泣いてしまいそうなほど嬉しい。
なにもかも、どんな罪でも許せてしまいそうなくらいハッピーである。
ただしアンナ、お前はダメだ。
「えへへ」
大きな枕を二人で共有し、お互いを見つめ合う。なんだかちょっと照れ臭いものを感じた。
オレは照れ臭さを誤魔化すためにコルネリアの頭を撫でる。サラサラとした手触りが心地いい。
「リア、昨日はどうだった?」
「昨日?」
「ほら、たくさんのゴブリンたちをやっつけたじゃないか。吐き気とか気持ち悪かったりしてないかい?」
やっつけたと言葉を濁したが、コルネリアが百を超えるゴブリンの命を奪ったことに変わりはない。
ゴブリンは人間とは似ても似つかないが、それでも人型のモンスターだ。その命を奪ったことに、良心の呵責を感じてはいないだろうか?
「大丈夫だけど? ちょっと怖かったけど……」
そう言って恥ずかしそうに笑うコルネリア。
そうだよな。百を超えるゴブリンがコルネリアの命を奪うべく迫ってきていたんだ。怖くないわけがない。
オレは布団の中でコルネリアの手を握る。
「怖い思いをさせて悪かった。リアがもう嫌だと言うのなら、もう遠征に無理してついてこなくても……」
「ううん! 私は行くよ」
「リア?」
「私の力がお兄さまの役に立てるのなら、私はどこにでも行く!」
「リア……」
「初めてお兄さまの役に立てたんだもん! 絶対に行く!」
「リアの気持ちは嬉しいよ。でも、リアはそんなこと気にしなくてもいいんだ。もっと自分の好きなことをしていてもいいんだよ? なんと言ったか……。たしかお友だちもできたんだろう?」
「エリザのこと?」
「そう。そのエリザと遊んでいてもいいんだよ?」
オレとしては、コルネリアを危険な場所に連れていくのに不安があった。昨日のゴブリンの大軍との戦闘は、完全にオレの想定外のことだったからだ。オレはいつかコルネリアを死地に向かわせてしまうのではないだろうか? 自分の無能が恨めしい。
「やっぱり私、お兄さまと行く。私がお兄さまを護るんだから!」
「ッ!?」
コルネリアがオレを護る? そんなことは想像したことも無かった。
でも、それは呪いに苦しんでいたコルネリアを知っているからだ。オレの中のコルネリア像は、か弱く護ってあげなければいけない存在から止まっていたのだということに気が付かされた。
「私はね、お兄さま。いつでもお兄さまと一緒に居たいの。でね、今度は私がお兄さまを護るの!」
「リア……」
オレはコルネリアの覚悟を見誤っていた。オレがコルネリアを護りたいと願うのと同じくらいコルネリアのオレを護るという気持ちは大きなものだったのだ。
今のバウムガルテン領は、解呪したアイテムの売買と、教育を施した領民の給料の上前を跳ねるこの二本柱で成り立っている。
今のところ儲けが大きいは、前者だ。たまに掘り出し物があるからな。たまに驚くほど高価なアイテムが紛れ込んでいる。まぁ、それも呪われた状態では使えないから安く仕入れられる。この差額は大きい。
では、領民を売るのを止めれるかといえば、それは少し難しい。強制的に領民の人数を調整することができるので管理が楽なのだ。卒業生を雇って教師役にしたからな。時間が経ち、体制が整えばさらに楽になるだろう。
一部の母親の根強い反対はあるようだが、それを押し通すほどのメリットがある。
金策全体的には、まだまだ借金を返せるだけの余裕はないが、小康状態を作り出すことができた。少しずつではあるが、貯えが生まれている。
この貯えを元手に新たな産業をでも起こしたいところだが……。なかなか難しい。
バウムガルテン領は、西三分の一が作物の育ちが悪い枯れた大地で、東三分の二は手付かずの深い森林が広がっている。
焼き畑でもやりたいところだが、森を焼くと住処を失ったモンスターたちがスタンピードを起こすらしい。やりたくてもできない。
今のところ、東村で小規模な木こりに利用するだけで精いっぱいだ。
「はぁ……。東の森を活用できれば……」
コンコンコンッ!
そんなことを呟いた時、ノックの音が飛び込んできた。慌てた感じはない。緊急事態というわけではないだろう。誰だ?
「お兄さま……。もう寝てしまいましたか……?」
「リア? まだ起きてるよ。入っておいで」
ガチャッとドアが開き、揺れることがない青白い光を放つライトストーンに照らされたコルネリアが姿を現した。コルネリアの後ろには、デリアの姿も見える。
「どうしたんだい、こんな時間に?」
「その……。眠れなくて……。私も一緒に寝ていい?」
「いいよ。おいで」
「わーい!」
コルネリアがまるで弾かれたようにオレのベッドの上に登ってくる。
たぶん今日は昼寝していたからまだ眠くないのだろう。
「おじゃましまーす!」
勢いよくオレの隣に横になるコルネリア。じんわりとコルネリアの温もりが伝わってくる。
コルネリアは生きている。それだけでオレは泣いてしまいそうなほど嬉しい。
なにもかも、どんな罪でも許せてしまいそうなくらいハッピーである。
ただしアンナ、お前はダメだ。
「えへへ」
大きな枕を二人で共有し、お互いを見つめ合う。なんだかちょっと照れ臭いものを感じた。
オレは照れ臭さを誤魔化すためにコルネリアの頭を撫でる。サラサラとした手触りが心地いい。
「リア、昨日はどうだった?」
「昨日?」
「ほら、たくさんのゴブリンたちをやっつけたじゃないか。吐き気とか気持ち悪かったりしてないかい?」
やっつけたと言葉を濁したが、コルネリアが百を超えるゴブリンの命を奪ったことに変わりはない。
ゴブリンは人間とは似ても似つかないが、それでも人型のモンスターだ。その命を奪ったことに、良心の呵責を感じてはいないだろうか?
「大丈夫だけど? ちょっと怖かったけど……」
そう言って恥ずかしそうに笑うコルネリア。
そうだよな。百を超えるゴブリンがコルネリアの命を奪うべく迫ってきていたんだ。怖くないわけがない。
オレは布団の中でコルネリアの手を握る。
「怖い思いをさせて悪かった。リアがもう嫌だと言うのなら、もう遠征に無理してついてこなくても……」
「ううん! 私は行くよ」
「リア?」
「私の力がお兄さまの役に立てるのなら、私はどこにでも行く!」
「リア……」
「初めてお兄さまの役に立てたんだもん! 絶対に行く!」
「リアの気持ちは嬉しいよ。でも、リアはそんなこと気にしなくてもいいんだ。もっと自分の好きなことをしていてもいいんだよ? なんと言ったか……。たしかお友だちもできたんだろう?」
「エリザのこと?」
「そう。そのエリザと遊んでいてもいいんだよ?」
オレとしては、コルネリアを危険な場所に連れていくのに不安があった。昨日のゴブリンの大軍との戦闘は、完全にオレの想定外のことだったからだ。オレはいつかコルネリアを死地に向かわせてしまうのではないだろうか? 自分の無能が恨めしい。
「やっぱり私、お兄さまと行く。私がお兄さまを護るんだから!」
「ッ!?」
コルネリアがオレを護る? そんなことは想像したことも無かった。
でも、それは呪いに苦しんでいたコルネリアを知っているからだ。オレの中のコルネリア像は、か弱く護ってあげなければいけない存在から止まっていたのだということに気が付かされた。
「私はね、お兄さま。いつでもお兄さまと一緒に居たいの。でね、今度は私がお兄さまを護るの!」
「リア……」
オレはコルネリアの覚悟を見誤っていた。オレがコルネリアを護りたいと願うのと同じくらいコルネリアのオレを護るという気持ちは大きなものだったのだ。
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