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076 タルタルソース
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バウムガルテンの王都の屋敷。その応接間でオレとベンノは会談していた。
「やあベンノ、久しいな」
「お久しぶりです、バウムガルテン子爵様。この度は子爵位への陞爵《しょうしゃく》おめでとうございます! これは大したものではありませんが、ご笑納ください」
ベンノが貢物のリストを書いた目録をくれた。
ざっと目を通すと、どうやら布が多いな。布は使ってよし、気に入らなければ売ってよしだから助かる。
他にも目立つのは、アクセサリーの類だ。コルネリアやリリー用の他にもオレ用の物まである。子爵になったからな。相応の格好をしなさいよっていうベンノのメッセージかもしれないな。
「感謝しよう、ベンノ。気を遣わせたようだな」
「いえいえ」
ベンノがまるで眩しいものを見るような目でオレを見ていた。
「そうでした。こちらもご覧ください。こちらが今月のマヨネーズの利益の一割になります」
ベンノがよこした羊皮紙には、かなりの大金が書かれていた。利益の一割と言ったはずだが、一割でもものすごい金額だな。ベンノはこの九倍儲けているのかと思うと、ベンノのニコニコ顔も納得だ。
「荒稼ぎしたな」
「独占販売ですから。マヨネーズが欲しければ、我が商会で買う以外に手に入れる方法はありません。宮廷からもお褒めの言葉を賜り、宮廷からも注文がくるほどです。こうなると子爵様が王都で店を構えるべきというのは慧眼でしたな。今では王室御用達品として飛ぶように売れています。材料である卵が足りないほどですよ。今は養鶏場の建設を計画しているところです」
ベンノは一気にまくし立てるように言った。だいぶ興奮しているらしい。まぁ、言い方は悪いが、ただの地方の冴えない商人だったベンノが、商人の憧れの地である王都に店を出して大成功を収めたのだ。
今では王都の店を本店にしてベンノが管理し、アルノーは修行のために地方に飛ばされたらしい。哀れアルノー。憧れの王都生活に目をキラキラさせていたのに。
「製法は盗まれていないか?」
「子爵様が教育なされた使用人は口が堅く、漏れた形跡はありません。優秀ですね。礼儀正しく、よく教育されています。店を大きくすることを考えているのですが、もう十人ほど雇うことは叶いますか?」
「ふむ。領地に居る爺に伝えておこう。優先的に割り当てよう」
「ありがとうございます」
当初は下級役人の使用人を想定していたが、意外にも商人にも需要があるようだな。子どもが生まれた家庭には祝い金を贈るなどして、子どもを産みやすい環境を整えるようにするか。
「噂を撒いてもらったことも感謝している。それで、邪神の呪いに侵された子どもは見つかったか?」
「申し訳ありません。見つかりませんでした。どうやら邪神の呪いの子どもは隠されて育てられている場合が多いようで、なかなか姿を現しません」
「そうか……」
ここでもやはりギフトが貰えないことがネックになっているのだろう。人でなしと差別されることを避けるために隠れていて当然か。
「しかし、いくつかタレコミがありましたので、今後はそちらを調査してみます」
「よろしく頼む」
「その際ですが、畏れ多いことですが、子爵様に同行をお願いする場合が……」
「かまわん。オレも予定を空けておこう」
急がねば死んでしまう場合があるからな。さすがにオレも死者の蘇生はできない。
オレがここまで邪神の呪いにこだわるのは、邪神の呪いを解呪した子どもたちが目覚ましいギフトを貰っているからだ。必ずしもそうではない場合もあるのだろう。だが、この世界で強力なギフトを持つ人材を集めるのは、かなり大きな意味を持つ。
他の貴族に取られないためにまた妹や弟が増えるかもしれないな。
「そうだった。今日、ベンノを呼んだのは他でもない。実はマヨネーズについてだが……」
ベンノの顔が一瞬鋭いものに変わる。マヨネーズはベンノの商会にとっての命綱だからな。反応がシビアになるのもわかる。
「そんな心配そうな顔をするな。ベンノにとってはいい話だ」
「いい話でございますか?」
「実はベンノに作ってほしいものがある。これだ」
オレがテーブルの上のベルを鳴らすと、皿を持ったメイドが二人現れた。
そして、オレとベンノの前に皿を置くと、メイドたちは楚々とした態度で部屋を出ていった。
「まずは食べてみてくれ。気に入ったらベンノの店で作ればいい」
「はい。失礼します……。もふッ!? パンに卵とマヨネーズ!? そして、このピリリとした辛みは胡椒ですな! それがちょうどいい塩味が包み込んで……」
「驚いたか?」
「はい……。まさかマヨネーズに更に卵を加えるとは……!?」
「こっちも食べてみろ。フライにソースを付けて食べるんだ」
「かしこまりました……。こちらにもマヨネーズに卵を加えたのですな。これはッ!? ピクルス!? 酸味がマヨネーズのまったりとした味にアクセントが!」
ベンノが目を見開いて大袈裟なくらい驚いてみせる。
「気に入ったのなら作り方を教えよう。マヨネーズと同じで、こちらへのバックは利益の一割でいい」
「ぜひともお願いします! まさかマヨネーズを使って新たな調味料をお創りになられるとは……。このベンノ、脱帽です」
「大したことはない」
「いえいえ。本心でございます。そうなりますと、養鶏場の建設を急がせた方がよさそうですな。あとはピクルスと胡椒も必要。ピクルスは増産できますが、胡椒は渡来品のため増産は難しい……。高価なものになるので、お売りする方を限定せねば……」
ベンノが上を向いて今後の商売の舵取りを考えてるのを見ながら、オレはフライにタルタルソースをたっぷり付けて味わう。うまいな。
「やあベンノ、久しいな」
「お久しぶりです、バウムガルテン子爵様。この度は子爵位への陞爵《しょうしゃく》おめでとうございます! これは大したものではありませんが、ご笑納ください」
ベンノが貢物のリストを書いた目録をくれた。
ざっと目を通すと、どうやら布が多いな。布は使ってよし、気に入らなければ売ってよしだから助かる。
他にも目立つのは、アクセサリーの類だ。コルネリアやリリー用の他にもオレ用の物まである。子爵になったからな。相応の格好をしなさいよっていうベンノのメッセージかもしれないな。
「感謝しよう、ベンノ。気を遣わせたようだな」
「いえいえ」
ベンノがまるで眩しいものを見るような目でオレを見ていた。
「そうでした。こちらもご覧ください。こちらが今月のマヨネーズの利益の一割になります」
ベンノがよこした羊皮紙には、かなりの大金が書かれていた。利益の一割と言ったはずだが、一割でもものすごい金額だな。ベンノはこの九倍儲けているのかと思うと、ベンノのニコニコ顔も納得だ。
「荒稼ぎしたな」
「独占販売ですから。マヨネーズが欲しければ、我が商会で買う以外に手に入れる方法はありません。宮廷からもお褒めの言葉を賜り、宮廷からも注文がくるほどです。こうなると子爵様が王都で店を構えるべきというのは慧眼でしたな。今では王室御用達品として飛ぶように売れています。材料である卵が足りないほどですよ。今は養鶏場の建設を計画しているところです」
ベンノは一気にまくし立てるように言った。だいぶ興奮しているらしい。まぁ、言い方は悪いが、ただの地方の冴えない商人だったベンノが、商人の憧れの地である王都に店を出して大成功を収めたのだ。
今では王都の店を本店にしてベンノが管理し、アルノーは修行のために地方に飛ばされたらしい。哀れアルノー。憧れの王都生活に目をキラキラさせていたのに。
「製法は盗まれていないか?」
「子爵様が教育なされた使用人は口が堅く、漏れた形跡はありません。優秀ですね。礼儀正しく、よく教育されています。店を大きくすることを考えているのですが、もう十人ほど雇うことは叶いますか?」
「ふむ。領地に居る爺に伝えておこう。優先的に割り当てよう」
「ありがとうございます」
当初は下級役人の使用人を想定していたが、意外にも商人にも需要があるようだな。子どもが生まれた家庭には祝い金を贈るなどして、子どもを産みやすい環境を整えるようにするか。
「噂を撒いてもらったことも感謝している。それで、邪神の呪いに侵された子どもは見つかったか?」
「申し訳ありません。見つかりませんでした。どうやら邪神の呪いの子どもは隠されて育てられている場合が多いようで、なかなか姿を現しません」
「そうか……」
ここでもやはりギフトが貰えないことがネックになっているのだろう。人でなしと差別されることを避けるために隠れていて当然か。
「しかし、いくつかタレコミがありましたので、今後はそちらを調査してみます」
「よろしく頼む」
「その際ですが、畏れ多いことですが、子爵様に同行をお願いする場合が……」
「かまわん。オレも予定を空けておこう」
急がねば死んでしまう場合があるからな。さすがにオレも死者の蘇生はできない。
オレがここまで邪神の呪いにこだわるのは、邪神の呪いを解呪した子どもたちが目覚ましいギフトを貰っているからだ。必ずしもそうではない場合もあるのだろう。だが、この世界で強力なギフトを持つ人材を集めるのは、かなり大きな意味を持つ。
他の貴族に取られないためにまた妹や弟が増えるかもしれないな。
「そうだった。今日、ベンノを呼んだのは他でもない。実はマヨネーズについてだが……」
ベンノの顔が一瞬鋭いものに変わる。マヨネーズはベンノの商会にとっての命綱だからな。反応がシビアになるのもわかる。
「そんな心配そうな顔をするな。ベンノにとってはいい話だ」
「いい話でございますか?」
「実はベンノに作ってほしいものがある。これだ」
オレがテーブルの上のベルを鳴らすと、皿を持ったメイドが二人現れた。
そして、オレとベンノの前に皿を置くと、メイドたちは楚々とした態度で部屋を出ていった。
「まずは食べてみてくれ。気に入ったらベンノの店で作ればいい」
「はい。失礼します……。もふッ!? パンに卵とマヨネーズ!? そして、このピリリとした辛みは胡椒ですな! それがちょうどいい塩味が包み込んで……」
「驚いたか?」
「はい……。まさかマヨネーズに更に卵を加えるとは……!?」
「こっちも食べてみろ。フライにソースを付けて食べるんだ」
「かしこまりました……。こちらにもマヨネーズに卵を加えたのですな。これはッ!? ピクルス!? 酸味がマヨネーズのまったりとした味にアクセントが!」
ベンノが目を見開いて大袈裟なくらい驚いてみせる。
「気に入ったのなら作り方を教えよう。マヨネーズと同じで、こちらへのバックは利益の一割でいい」
「ぜひともお願いします! まさかマヨネーズを使って新たな調味料をお創りになられるとは……。このベンノ、脱帽です」
「大したことはない」
「いえいえ。本心でございます。そうなりますと、養鶏場の建設を急がせた方がよさそうですな。あとはピクルスと胡椒も必要。ピクルスは増産できますが、胡椒は渡来品のため増産は難しい……。高価なものになるので、お売りする方を限定せねば……」
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