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154 太りたい
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「この場合はこうするのが正解か?」
「その場合ですと、ここを突かれると部隊が崩壊してしまいますわ。ですから、この場合はこのように……」
「なるほど……」
王都の新バウムガルテン邸。オレとコルネリア、リリー、クラウディア、クラウスの五人は、カサンドラを教師にして用兵というものを学んでいた。
オレは領主として有事には兵を率いることを求められる。コルネリア、リリー、クラウディアは、いざという時オレの代理として兵を率いる可能性がある。そして、クラウスはオレの補佐だ。
邪神も復活するし、用兵を術を身に着けるのは急務だった。とはいっても、一日で身に着くようなものではないので、こうして定期的にカサンドラによる講義が開かれている。
カサンドラはこの王国における武の代表格アルトマイヤー侯爵家の女だ。アルトマイヤー侯爵家では、子どもは男女関係なく用兵を習うのだという。
そして、カサンドラはかなり用兵に精通している。教師役にはぴったりだ。
他よりもわかりやすく説明してくれるカサンドラのおかげによって、オレは用兵や、この世界における戦術というものを覚えてきた。
クラウディアもスポンジが水を吸うようにカサンドラの用兵の授業を吸収していた。
コルネリアは……。頭の上に?マークがいっぱい出ているような表情を浮かべ、リリーなんて興味なさそうにしている。がんばれ、コルネリア。リリーもがんばって!
ここには居ないエレオノーレも用兵について勉強しているんだろうなぁ。傍に居ることはできないけど、一緒に頑張ろうね!
「エレオノーレ殿下の場合ですと、もっと数の多い用兵を学んでいると思いますわ」
「そうなの?」
「はい。バウムガルテン辺境伯家は五千の兵を率いますけど、エレオノーレ殿下は、国軍の指揮と、バウムガルテン辺境伯家をはじめ、さまざまな家の兵を率いるお立場になります。数が多くなると、それだけ複雑になりますので、もっと難しいですよ」
「はぇ~」
カサンドラに指摘されて、オレはもう変な声しか出なかった。すごいなエレオノーレ。素直に尊敬できるよ。
「わたくしも本当はそういった俗に帝王学などを勉強するはずだったのですけど、体が弱かったので……。そのことだけでもわたくしよりもエレオノーレの方が次期女王にふさわしいのです。そう思って身を引きましたけど、今ではエレオノーレに重荷を背負わせてしまったと申し訳なく思っています」
クラウディアが悲しそうな顔を浮かべていた。邪神の呪いに罹らなければ、順当にいけば、彼女こそ次期女王になるはずだった。いろいろと思うことはあるだろう。
「そろそろ休憩にしようか。実はクラウスにベルメールのケーキを買ってくるように頼んだんだ」
「まあ!」
「ケーキ!」
「ないす」
「でしたらお茶の用意もしませんと」
うちでは、クラウディアが贔屓にしているベルメールのお菓子を買うことが多い。これがまたおいしいんだ。オレは甘党だからね。ケーキの二つ三つなんてぺろりといってしまえる。
このドラゴンの体は燃費が悪いのか、よくお腹が空くんだよね。我が家では十時のおやつと三時のおやつが常態化しているんだ。
ケーキやお菓子は多めに買って、残ったものは使用人たちに下げ渡している。
新しい屋敷に移って、雇う使用人の数が増えたからね。カサンドラがアルトマイヤー侯爵家から連れてきた使用人も居るし、バウムガルテン領から連れてきた者たちも居る。他の貴族家から行儀見習いとして貴族の娘を使用人として雇うこともある。
バウムガルテン辺境伯家も、なんとか大貴族の体裁を整えているのだ。
未だに実感がわかないけどね。
ちなみに、カサンドラ曰く、使用人の娘たちには手を出してOKらしいが、そこは鋼の精神で我慢している。誰かオレを褒めてやってくれ。
「わぁ、どれにしよう……!」
「リリはぜんぶ」
テーブルの上にホールケーキがいくつも並ぶと、コルネリアは迷い、リリーは全部を所望する。リリーは思い切りがいいね。
「オレも全種類貰おうか。リアも全種類食べたら?」
「あのね、お兄さま。わたくしは今自分の食欲と戦っているの。そんなこと言わないで」
あれか? もうその年で太るとか気にしてるのか? さすがは女の子だな。
「リアは細身だし、運動してるからね。もう少しふくよかになってもいいくらいだよ」
「……そう?」
「そうそう」
「わたくしは運動できていませんので一つにしようかしら」
「わたくしは二つで我慢します……」
カサンドラは一つ、クラウディアは二つに我慢するらしい。二人とも、食べたいなら食べればいいのに。
「うーん……。やっぱりわたくしも二つにする!」
コルネリアも結局二つに我慢するようだ。女の子はたいへんだな。油ものも控えているようだし。好きなものが食べれないってのは辛いのだ。
「お兄さまも我慢しないとまるまると太っちゃうわよ?」
オレの前に置かれたたくさんのケーキを見てコルネリアが恨めしそうに言った。
「いや、オレは太りたいんだ」
「え? 太りたい? なんで?」
「筋肉が欲しい」
オレはいつも筋トレしているのに、未だに細マッチョの領域を出ない。
だが、オレは前世のある言葉を思い出したのだ。
『筋肉が欲しかったら、まず太れ!』
オレはその言葉を信じてまずは太る所存である。
「お兄さまはそのままでいいのに。まるまるなお兄さまもゴリゴリのお兄さまもわたくしは嫌よ?」
「そうか……」
コルネリアには不評なようだが、それでも男にはやらねばならない時があるのだ!
「その場合ですと、ここを突かれると部隊が崩壊してしまいますわ。ですから、この場合はこのように……」
「なるほど……」
王都の新バウムガルテン邸。オレとコルネリア、リリー、クラウディア、クラウスの五人は、カサンドラを教師にして用兵というものを学んでいた。
オレは領主として有事には兵を率いることを求められる。コルネリア、リリー、クラウディアは、いざという時オレの代理として兵を率いる可能性がある。そして、クラウスはオレの補佐だ。
邪神も復活するし、用兵を術を身に着けるのは急務だった。とはいっても、一日で身に着くようなものではないので、こうして定期的にカサンドラによる講義が開かれている。
カサンドラはこの王国における武の代表格アルトマイヤー侯爵家の女だ。アルトマイヤー侯爵家では、子どもは男女関係なく用兵を習うのだという。
そして、カサンドラはかなり用兵に精通している。教師役にはぴったりだ。
他よりもわかりやすく説明してくれるカサンドラのおかげによって、オレは用兵や、この世界における戦術というものを覚えてきた。
クラウディアもスポンジが水を吸うようにカサンドラの用兵の授業を吸収していた。
コルネリアは……。頭の上に?マークがいっぱい出ているような表情を浮かべ、リリーなんて興味なさそうにしている。がんばれ、コルネリア。リリーもがんばって!
ここには居ないエレオノーレも用兵について勉強しているんだろうなぁ。傍に居ることはできないけど、一緒に頑張ろうね!
「エレオノーレ殿下の場合ですと、もっと数の多い用兵を学んでいると思いますわ」
「そうなの?」
「はい。バウムガルテン辺境伯家は五千の兵を率いますけど、エレオノーレ殿下は、国軍の指揮と、バウムガルテン辺境伯家をはじめ、さまざまな家の兵を率いるお立場になります。数が多くなると、それだけ複雑になりますので、もっと難しいですよ」
「はぇ~」
カサンドラに指摘されて、オレはもう変な声しか出なかった。すごいなエレオノーレ。素直に尊敬できるよ。
「わたくしも本当はそういった俗に帝王学などを勉強するはずだったのですけど、体が弱かったので……。そのことだけでもわたくしよりもエレオノーレの方が次期女王にふさわしいのです。そう思って身を引きましたけど、今ではエレオノーレに重荷を背負わせてしまったと申し訳なく思っています」
クラウディアが悲しそうな顔を浮かべていた。邪神の呪いに罹らなければ、順当にいけば、彼女こそ次期女王になるはずだった。いろいろと思うことはあるだろう。
「そろそろ休憩にしようか。実はクラウスにベルメールのケーキを買ってくるように頼んだんだ」
「まあ!」
「ケーキ!」
「ないす」
「でしたらお茶の用意もしませんと」
うちでは、クラウディアが贔屓にしているベルメールのお菓子を買うことが多い。これがまたおいしいんだ。オレは甘党だからね。ケーキの二つ三つなんてぺろりといってしまえる。
このドラゴンの体は燃費が悪いのか、よくお腹が空くんだよね。我が家では十時のおやつと三時のおやつが常態化しているんだ。
ケーキやお菓子は多めに買って、残ったものは使用人たちに下げ渡している。
新しい屋敷に移って、雇う使用人の数が増えたからね。カサンドラがアルトマイヤー侯爵家から連れてきた使用人も居るし、バウムガルテン領から連れてきた者たちも居る。他の貴族家から行儀見習いとして貴族の娘を使用人として雇うこともある。
バウムガルテン辺境伯家も、なんとか大貴族の体裁を整えているのだ。
未だに実感がわかないけどね。
ちなみに、カサンドラ曰く、使用人の娘たちには手を出してOKらしいが、そこは鋼の精神で我慢している。誰かオレを褒めてやってくれ。
「わぁ、どれにしよう……!」
「リリはぜんぶ」
テーブルの上にホールケーキがいくつも並ぶと、コルネリアは迷い、リリーは全部を所望する。リリーは思い切りがいいね。
「オレも全種類貰おうか。リアも全種類食べたら?」
「あのね、お兄さま。わたくしは今自分の食欲と戦っているの。そんなこと言わないで」
あれか? もうその年で太るとか気にしてるのか? さすがは女の子だな。
「リアは細身だし、運動してるからね。もう少しふくよかになってもいいくらいだよ」
「……そう?」
「そうそう」
「わたくしは運動できていませんので一つにしようかしら」
「わたくしは二つで我慢します……」
カサンドラは一つ、クラウディアは二つに我慢するらしい。二人とも、食べたいなら食べればいいのに。
「うーん……。やっぱりわたくしも二つにする!」
コルネリアも結局二つに我慢するようだ。女の子はたいへんだな。油ものも控えているようだし。好きなものが食べれないってのは辛いのだ。
「お兄さまも我慢しないとまるまると太っちゃうわよ?」
オレの前に置かれたたくさんのケーキを見てコルネリアが恨めしそうに言った。
「いや、オレは太りたいんだ」
「え? 太りたい? なんで?」
「筋肉が欲しい」
オレはいつも筋トレしているのに、未だに細マッチョの領域を出ない。
だが、オレは前世のある言葉を思い出したのだ。
『筋肉が欲しかったら、まず太れ!』
オレはその言葉を信じてまずは太る所存である。
「お兄さまはそのままでいいのに。まるまるなお兄さまもゴリゴリのお兄さまもわたくしは嫌よ?」
「そうか……」
コルネリアには不評なようだが、それでも男にはやらねばならない時があるのだ!
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