【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

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007 ゴブリン

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 オレ、アベル・ヴィアラットは十一歳になった。十歳の時ほど盛大に祝わなかったが、両親も村のみんなも祝ってくれた。オレにはそれで十分過ぎるよ。

 毎日父上との訓練や自主練習、瞑想やシリルとの神聖魔法の訓練も欠かさず繰り返してきた。その成果として、オレはついこの間父上から一本取ることができたし、神聖魔法もヒールの魔法を覚えることができた。

 やっぱり、毎日コツコツやるのが結局は一番の近道なんだよなぁ。

 たしかに、オレは『ヒーローズ・ジャーニー』の世界をゲームを通して知っている。だが、実際にこの世界に転生してみると、知らないことばっかりだった。

 例えば戦闘。ゲームでは強い技を連打してれば勝てたが、この世界ではそんな簡単にはいかない。攻撃をするまでに相手との距離を詰める足運び、相手を出し抜くフェイント、ゲームでは無かった基礎的な要素が勝敗を大きく左右するのだ。

 だから、オレは基礎を大事にする。基礎とはすべての土台。派手な技やスキル、魔法などは、その土台の上に立てるもの。土台が弱ければ、いくら強力な力を持っていても崩れる。父上の言葉だが、オレはこの言葉を気に入っている。まさに、オレのようなモブにこそふさわしい言葉だ。

「せあっ!」

 オレの胸くらいまでしかない小柄なモンスター、ゴブリンの振るう棍棒を盾で受け止め、その喉に片手剣を突き刺す。

 ゴブリンは口から血の泡を噴き出して、そのヤギのような金色の目がぐるりと上を向いた。仕留めた。

 オレはゴブリンの胸を蹴り、ゴブリンの小柄な体を蹴飛ばした。ゴブリンの体が飛んで行った方には、まだ三体のゴブリンがいる。オレの蹴飛ばしたゴブリンに衝突して、その足が止まった。手早く片付けないと。

 右手に持った剣を振り、血糊を落とすと、ゴブリンたちにむけて――――。

「はぁああああああッ!」

 次の獲物に定めていた三体のゴブリンが、一瞬にして両断された。

 早い、もう来たのか!

 オレの視界の端では、筋肉モリモリマッチョマンが大剣を振り切った姿勢で残心しているところだった。

「父上、私の獲物だったのですが?」
「アベルよ、遅いのが悪いのだ。はっはっはっはっはっはっ!」

 オレの抗議なんて軽く受け流し、父上は豪快に笑っていた。その軽快な様子からは、ゴブリンを五体も屠ったようにはとても見えない。

 父上にとって、ゴブリンなどいくら集まっても敵ではないのだろう。さすが辺境最強の男だ。

 オレも早くその領域まで行きたいな。

「まったく……」

 少しはオレの成長のために残してくれてもいいのに……。

「それより、妙だな……」
「そうですね、領主様。こんな所でゴブリン七体と出くわすとは……」
「はぐれだと良いんですが……」

 父上の一撃で戦闘が終わると、父上と狩人の二人が真剣な顔で話していた。

「どうしたんです、父上?」
「うむ。今まで見なかったのに、急にゴブリンが現れたからな」
「んー?」

 たしかに、父上の狩りに同行するようになって一年ほど経つが、そういえばゴブリンと対峙したのは初めてだ。

 でも、ゲームではゴブリンはどこにでも現れる雑魚モンスターだった。ゴブリンがいることのなにがおかしいのだろう?

 なんでそんな真剣な顔で話し合ってるんだ?

「父上?」
「ふむ。そうか、アベルにはまだ話してなかったな。いいか? ゴブリンというのは群れで生きるモンスターなのだ。その群れの数は七体なんてもんじゃない。百を超えることもザラだ。そんなゴブリンが村の近くで発見された。あとはわかるな?」
「なるほど……」

 今倒した七体のゴブリンたちの他にもゴブリンがいる可能性があるってことか? それも、村の近くに。

「でも、ゴブリンなんて倒すのは簡単なんじゃ?」

 現に未熟なオレでも倒せたし、父上にかかれば、百匹のゴブリンも簡単に倒せてしまうのではないだろうか?

 オレには、ゴブリンの出現はむしろボーナスステージの到来にしか思えなかった。

「そいつは違いやすぜ、坊ちゃん」
「ですね」

 狩人として森を案内してくれているセザールとコームの親子が言う。

「たしかに領主様はお強い。坊ちゃんの腕も大したもんです。ですが、それだけじゃゴブリンどもから村を守るのは厳しい。ゴブリンどもがいつ村を襲うかもわからねえですからね」
「親父の言う通りです。早く奴らの巣を見つけて潰さないと、村の家畜や子どもが危ないんですよ」
「うむ」

 父上がセザールとコームの言葉に頷くと、オレをまっすぐ見た。

「アベルよ、お前の言う通り、ゴブリンを攻め滅ぼすのは容易いかもしれん。だが、我々は巣の場所さえ知らんのだ。攻めるに攻められん。巣を見つけるまでは守勢に回るしかないが、守ることは攻めることよりも何倍も難しいぞ? 特に、誰かを守るというのはな」
「はい……」

 オレは、そんな簡単なことにも気付けなかった自分が悔しくて、俯いてしまう。

「なに、気にするな。ぼちぼち覚えていけばいい」

 父上の大きな手がオレの頭を掴んで、ぐりぐりと乱暴にオレの頭を撫でたのだった。
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