7 / 117
007 ゴブリン
しおりを挟む
オレ、アベル・ヴィアラットは十一歳になった。十歳の時ほど盛大に祝わなかったが、両親も村のみんなも祝ってくれた。オレにはそれで十分過ぎるよ。
毎日父上との訓練や自主練習、瞑想やシリルとの神聖魔法の訓練も欠かさず繰り返してきた。その成果として、オレはついこの間父上から一本取ることができたし、神聖魔法もヒールの魔法を覚えることができた。
やっぱり、毎日コツコツやるのが結局は一番の近道なんだよなぁ。
たしかに、オレは『ヒーローズ・ジャーニー』の世界をゲームを通して知っている。だが、実際にこの世界に転生してみると、知らないことばっかりだった。
例えば戦闘。ゲームでは強い技を連打してれば勝てたが、この世界ではそんな簡単にはいかない。攻撃をするまでに相手との距離を詰める足運び、相手を出し抜くフェイント、ゲームでは無かった基礎的な要素が勝敗を大きく左右するのだ。
だから、オレは基礎を大事にする。基礎とはすべての土台。派手な技やスキル、魔法などは、その土台の上に立てるもの。土台が弱ければ、いくら強力な力を持っていても崩れる。父上の言葉だが、オレはこの言葉を気に入っている。まさに、オレのようなモブにこそふさわしい言葉だ。
「せあっ!」
オレの胸くらいまでしかない小柄なモンスター、ゴブリンの振るう棍棒を盾で受け止め、その喉に片手剣を突き刺す。
ゴブリンは口から血の泡を噴き出して、そのヤギのような金色の目がぐるりと上を向いた。仕留めた。
オレはゴブリンの胸を蹴り、ゴブリンの小柄な体を蹴飛ばした。ゴブリンの体が飛んで行った方には、まだ三体のゴブリンがいる。オレの蹴飛ばしたゴブリンに衝突して、その足が止まった。手早く片付けないと。
右手に持った剣を振り、血糊を落とすと、ゴブリンたちにむけて――――。
「はぁああああああッ!」
次の獲物に定めていた三体のゴブリンが、一瞬にして両断された。
早い、もう来たのか!
オレの視界の端では、筋肉モリモリマッチョマンが大剣を振り切った姿勢で残心しているところだった。
「父上、私の獲物だったのですが?」
「アベルよ、遅いのが悪いのだ。はっはっはっはっはっはっ!」
オレの抗議なんて軽く受け流し、父上は豪快に笑っていた。その軽快な様子からは、ゴブリンを五体も屠ったようにはとても見えない。
父上にとって、ゴブリンなどいくら集まっても敵ではないのだろう。さすが辺境最強の男だ。
オレも早くその領域まで行きたいな。
「まったく……」
少しはオレの成長のために残してくれてもいいのに……。
「それより、妙だな……」
「そうですね、領主様。こんな所でゴブリン七体と出くわすとは……」
「はぐれだと良いんですが……」
父上の一撃で戦闘が終わると、父上と狩人の二人が真剣な顔で話していた。
「どうしたんです、父上?」
「うむ。今まで見なかったのに、急にゴブリンが現れたからな」
「んー?」
たしかに、父上の狩りに同行するようになって一年ほど経つが、そういえばゴブリンと対峙したのは初めてだ。
でも、ゲームではゴブリンはどこにでも現れる雑魚モンスターだった。ゴブリンがいることのなにがおかしいのだろう?
なんでそんな真剣な顔で話し合ってるんだ?
「父上?」
「ふむ。そうか、アベルにはまだ話してなかったな。いいか? ゴブリンというのは群れで生きるモンスターなのだ。その群れの数は七体なんてもんじゃない。百を超えることもザラだ。そんなゴブリンが村の近くで発見された。あとはわかるな?」
「なるほど……」
今倒した七体のゴブリンたちの他にもゴブリンがいる可能性があるってことか? それも、村の近くに。
「でも、ゴブリンなんて倒すのは簡単なんじゃ?」
現に未熟なオレでも倒せたし、父上にかかれば、百匹のゴブリンも簡単に倒せてしまうのではないだろうか?
オレには、ゴブリンの出現はむしろボーナスステージの到来にしか思えなかった。
「そいつは違いやすぜ、坊ちゃん」
「ですね」
狩人として森を案内してくれているセザールとコームの親子が言う。
「たしかに領主様はお強い。坊ちゃんの腕も大したもんです。ですが、それだけじゃゴブリンどもから村を守るのは厳しい。ゴブリンどもがいつ村を襲うかもわからねえですからね」
「親父の言う通りです。早く奴らの巣を見つけて潰さないと、村の家畜や子どもが危ないんですよ」
「うむ」
父上がセザールとコームの言葉に頷くと、オレをまっすぐ見た。
「アベルよ、お前の言う通り、ゴブリンを攻め滅ぼすのは容易いかもしれん。だが、我々は巣の場所さえ知らんのだ。攻めるに攻められん。巣を見つけるまでは守勢に回るしかないが、守ることは攻めることよりも何倍も難しいぞ? 特に、誰かを守るというのはな」
「はい……」
オレは、そんな簡単なことにも気付けなかった自分が悔しくて、俯いてしまう。
「なに、気にするな。ぼちぼち覚えていけばいい」
父上の大きな手がオレの頭を掴んで、ぐりぐりと乱暴にオレの頭を撫でたのだった。
毎日父上との訓練や自主練習、瞑想やシリルとの神聖魔法の訓練も欠かさず繰り返してきた。その成果として、オレはついこの間父上から一本取ることができたし、神聖魔法もヒールの魔法を覚えることができた。
やっぱり、毎日コツコツやるのが結局は一番の近道なんだよなぁ。
たしかに、オレは『ヒーローズ・ジャーニー』の世界をゲームを通して知っている。だが、実際にこの世界に転生してみると、知らないことばっかりだった。
例えば戦闘。ゲームでは強い技を連打してれば勝てたが、この世界ではそんな簡単にはいかない。攻撃をするまでに相手との距離を詰める足運び、相手を出し抜くフェイント、ゲームでは無かった基礎的な要素が勝敗を大きく左右するのだ。
だから、オレは基礎を大事にする。基礎とはすべての土台。派手な技やスキル、魔法などは、その土台の上に立てるもの。土台が弱ければ、いくら強力な力を持っていても崩れる。父上の言葉だが、オレはこの言葉を気に入っている。まさに、オレのようなモブにこそふさわしい言葉だ。
「せあっ!」
オレの胸くらいまでしかない小柄なモンスター、ゴブリンの振るう棍棒を盾で受け止め、その喉に片手剣を突き刺す。
ゴブリンは口から血の泡を噴き出して、そのヤギのような金色の目がぐるりと上を向いた。仕留めた。
オレはゴブリンの胸を蹴り、ゴブリンの小柄な体を蹴飛ばした。ゴブリンの体が飛んで行った方には、まだ三体のゴブリンがいる。オレの蹴飛ばしたゴブリンに衝突して、その足が止まった。手早く片付けないと。
右手に持った剣を振り、血糊を落とすと、ゴブリンたちにむけて――――。
「はぁああああああッ!」
次の獲物に定めていた三体のゴブリンが、一瞬にして両断された。
早い、もう来たのか!
オレの視界の端では、筋肉モリモリマッチョマンが大剣を振り切った姿勢で残心しているところだった。
「父上、私の獲物だったのですが?」
「アベルよ、遅いのが悪いのだ。はっはっはっはっはっはっ!」
オレの抗議なんて軽く受け流し、父上は豪快に笑っていた。その軽快な様子からは、ゴブリンを五体も屠ったようにはとても見えない。
父上にとって、ゴブリンなどいくら集まっても敵ではないのだろう。さすが辺境最強の男だ。
オレも早くその領域まで行きたいな。
「まったく……」
少しはオレの成長のために残してくれてもいいのに……。
「それより、妙だな……」
「そうですね、領主様。こんな所でゴブリン七体と出くわすとは……」
「はぐれだと良いんですが……」
父上の一撃で戦闘が終わると、父上と狩人の二人が真剣な顔で話していた。
「どうしたんです、父上?」
「うむ。今まで見なかったのに、急にゴブリンが現れたからな」
「んー?」
たしかに、父上の狩りに同行するようになって一年ほど経つが、そういえばゴブリンと対峙したのは初めてだ。
でも、ゲームではゴブリンはどこにでも現れる雑魚モンスターだった。ゴブリンがいることのなにがおかしいのだろう?
なんでそんな真剣な顔で話し合ってるんだ?
「父上?」
「ふむ。そうか、アベルにはまだ話してなかったな。いいか? ゴブリンというのは群れで生きるモンスターなのだ。その群れの数は七体なんてもんじゃない。百を超えることもザラだ。そんなゴブリンが村の近くで発見された。あとはわかるな?」
「なるほど……」
今倒した七体のゴブリンたちの他にもゴブリンがいる可能性があるってことか? それも、村の近くに。
「でも、ゴブリンなんて倒すのは簡単なんじゃ?」
現に未熟なオレでも倒せたし、父上にかかれば、百匹のゴブリンも簡単に倒せてしまうのではないだろうか?
オレには、ゴブリンの出現はむしろボーナスステージの到来にしか思えなかった。
「そいつは違いやすぜ、坊ちゃん」
「ですね」
狩人として森を案内してくれているセザールとコームの親子が言う。
「たしかに領主様はお強い。坊ちゃんの腕も大したもんです。ですが、それだけじゃゴブリンどもから村を守るのは厳しい。ゴブリンどもがいつ村を襲うかもわからねえですからね」
「親父の言う通りです。早く奴らの巣を見つけて潰さないと、村の家畜や子どもが危ないんですよ」
「うむ」
父上がセザールとコームの言葉に頷くと、オレをまっすぐ見た。
「アベルよ、お前の言う通り、ゴブリンを攻め滅ぼすのは容易いかもしれん。だが、我々は巣の場所さえ知らんのだ。攻めるに攻められん。巣を見つけるまでは守勢に回るしかないが、守ることは攻めることよりも何倍も難しいぞ? 特に、誰かを守るというのはな」
「はい……」
オレは、そんな簡単なことにも気付けなかった自分が悔しくて、俯いてしまう。
「なに、気にするな。ぼちぼち覚えていけばいい」
父上の大きな手がオレの頭を掴んで、ぐりぐりと乱暴にオレの頭を撫でたのだった。
206
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~
キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。
異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。
役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。
隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。
戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。
異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。
まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。
ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。
それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。
次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。
その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。
「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」
※カクヨムにも掲載中です。
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる