[異世界恋愛短編集]泣くものですか、復讐を果たすまでは。

石河 翠

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4.同じ時に天に召されるのなら、それは幸せなことじゃないかしら

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「今のままなら、僕たちは不老長寿だよ。いや、ほぼ不老不死と言ってもいい。妖精の気まぐれが続く限り、僕たちは生きられるそうだから。僕はもう二度と君を失いたくない。記憶を取り戻さずに、このまま楽しく暮らしていくのは嫌かい?」

 彼の言葉にゆっくりと首を横に振る。失われた時間の間に紡がれた物語。それは甘い物も苦い物もあったのだろうけれど。なかったことになんてしたくはない。

「私はあなたと共に暮らしてきた日々の中で、今の私になったのよ。私は、あなたとの日々を取り戻したいわ。私によく似ているという娘の思い出も、あなたによく似た孫娘との思い出も失ったままなのは嫌なのよ」
「でも記憶を集め始めたら、再び寿命は動き出す。すべての記憶が戻ったら、僕たちはそこで死んでしまうんだ」
「同じ時に天に召されるのなら、それは幸せなことじゃないかしら?」 
「それはまあ、確かに」

 よし、もう一押し。目標は孫娘の結婚式に、ちゃんとしたおじいさま、おばあさまとして出席することだ。

「大好きなダグラスさまのこと、ひとかけらだって忘れたくないの」
「そうだ、結婚式の日のホリーの可愛さは本当にこの世の物とは思えなかった。それに初夜も、いや新婚旅行の夜も最高で。はっ、せっかくなら記憶を取り戻す前に、結婚式も初夜も新婚旅行ももう一度行えば二度楽しめるのでは?」
「その話は置いておいて」

 恋人時代に散々いたしておいて、初夜だのなんだの言われても。そんな気持ちをぐっとこらえつつダグラスさまを見つめて懇願すれば、しぶしぶ彼は同意してくれた。やはり、私の必殺おねだりはいまだ有効のようだ。

 そもそもいたずら好きというか性格の悪そうな妖精に、自分の運命をゆだねるなんてしたくない。これから先、何が起きるのかわからないこそ自分の選んだ道を歩きたいのだ。

「ホリー、僕のこと嫌いになったかい?」
「何でもできるくせに、肝心なところで馬鹿で弱虫なあなたが好きだから、これからも隣にいてあげる。一緒に死ぬのなら、もう怖くはないわよね?」
「ありがとう」
「ただ、さしあたっては今後どうするかを考えないと。うっかり周囲に不老長寿がバレてしまったら、いろいろと面倒くさそうだもの」
「大丈夫だよ、各国で楽しく過ごすための地位や身分なんかは全部用意しているからね」
「相変わらず手際が良いのね。悪だくみも得意だし」
「でも、そういう僕が好きだろう?」
「残念なことにね」

 そうして私たちは、そっと唇を重ね合わせた。
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