8 / 8
(8)
しおりを挟む
「それで、これからどうするつもりだ」
「『片付け』の聖女の極大魔法を発動させて、加護の回収と記憶の改ざんを行いましたからね。私は故郷に帰ります」
「恩人を追い出すような真似はしない」
「そもそも、魔法少女として活動しているところを見られたら、『片付け』の聖女としての力も失ってしまうのです。殿下のお役にはもう立てそうもございません。どうぞ故郷へ戻ることをお許しください」
今まで王太子に対してもぞんざいな口調だったのは、『片付け』の聖女だったから。力を失った状態では、貴族の令嬢として礼を尽くすのみだ。だが、そんな彼女のことを王太子がぎゅっと抱きしめた。
「こちらを夢中にさせておきながら、お前は俺を捨てると?」
「へ?」
「お前がいなくなるなど許さない」
「いや、殿下。それ、超わがままじゃないですか? 聖女という理由もなしに、田舎貴族の令嬢をそばに留め置いちゃダメですよ」
つい素の口調でツッコミを入れたところで、王太子がにやりと笑う。
「まったく不敬な女だ。しっかりと躾けてやろう」
「はわわあわわわ」
「急にどうした」
「いや、だって、なんか台詞が超エロくてですね。なんだか萌えパワーがみなぎってきて……あれ? 聖女としての力が復活しているような」
「回収した加護を与えた神々が、また別の加護をぽこぽこそこらへんに授けたのであろうよ。もしくはお前の桃色妄想が天元突破したのかもしれんな」
あきれ果てたといいたげなもふもふが、説明しつつ、気だるげにワインをラッパ飲みしていた。後片付け中のパーティ会場から持ち出してきたらしい。可愛らしいが、よく考えると最低な絵面である。
「いや、殿下。それはやっぱりなんというか」
「お前を望んで何が悪い?」
「力目当てですか! 殿下、私の身体だけが目当てなんですね! いくら、特別な力を宿しているからって。いやらしい! スケベ!」
「そうだ。お前の身体目当てだ。好きな女と相思相愛だとわかっているのに、王国の利益のために口に出せず、好きでもない女どもの機嫌をとっていた男の不満がわからないのか?」
「わわわわわわあ、な、なにを言っているのか、意味が」
「意味がわからないのなら、わかるようになるまでじっくり教えてやろう。そもそもお前が聖女の力を取り戻さずとも、逃がす気はなかったからな」
「アンネマリー、この男は『良縁』の加護を持っていた。お前とこいつを結ぶ赤い糸が日に日に太くなって、紐どころか綱になっていくさまはさながらホラーだったぞ。まあ相思相愛なら、かまわんだろ。諦めろ」
それから引退し損ねた「片付け」の聖女さまは、愛されポンコツ王妃として長く国民に愛された。ときどきとんでもなく個性的なドレスをお召しになるらしい、それは夫君のご趣味らしいという噂をまき散らしながら、大好きな旦那さまのためにせっせと働いたと言われている。
「『片付け』の聖女の極大魔法を発動させて、加護の回収と記憶の改ざんを行いましたからね。私は故郷に帰ります」
「恩人を追い出すような真似はしない」
「そもそも、魔法少女として活動しているところを見られたら、『片付け』の聖女としての力も失ってしまうのです。殿下のお役にはもう立てそうもございません。どうぞ故郷へ戻ることをお許しください」
今まで王太子に対してもぞんざいな口調だったのは、『片付け』の聖女だったから。力を失った状態では、貴族の令嬢として礼を尽くすのみだ。だが、そんな彼女のことを王太子がぎゅっと抱きしめた。
「こちらを夢中にさせておきながら、お前は俺を捨てると?」
「へ?」
「お前がいなくなるなど許さない」
「いや、殿下。それ、超わがままじゃないですか? 聖女という理由もなしに、田舎貴族の令嬢をそばに留め置いちゃダメですよ」
つい素の口調でツッコミを入れたところで、王太子がにやりと笑う。
「まったく不敬な女だ。しっかりと躾けてやろう」
「はわわあわわわ」
「急にどうした」
「いや、だって、なんか台詞が超エロくてですね。なんだか萌えパワーがみなぎってきて……あれ? 聖女としての力が復活しているような」
「回収した加護を与えた神々が、また別の加護をぽこぽこそこらへんに授けたのであろうよ。もしくはお前の桃色妄想が天元突破したのかもしれんな」
あきれ果てたといいたげなもふもふが、説明しつつ、気だるげにワインをラッパ飲みしていた。後片付け中のパーティ会場から持ち出してきたらしい。可愛らしいが、よく考えると最低な絵面である。
「いや、殿下。それはやっぱりなんというか」
「お前を望んで何が悪い?」
「力目当てですか! 殿下、私の身体だけが目当てなんですね! いくら、特別な力を宿しているからって。いやらしい! スケベ!」
「そうだ。お前の身体目当てだ。好きな女と相思相愛だとわかっているのに、王国の利益のために口に出せず、好きでもない女どもの機嫌をとっていた男の不満がわからないのか?」
「わわわわわわあ、な、なにを言っているのか、意味が」
「意味がわからないのなら、わかるようになるまでじっくり教えてやろう。そもそもお前が聖女の力を取り戻さずとも、逃がす気はなかったからな」
「アンネマリー、この男は『良縁』の加護を持っていた。お前とこいつを結ぶ赤い糸が日に日に太くなって、紐どころか綱になっていくさまはさながらホラーだったぞ。まあ相思相愛なら、かまわんだろ。諦めろ」
それから引退し損ねた「片付け」の聖女さまは、愛されポンコツ王妃として長く国民に愛された。ときどきとんでもなく個性的なドレスをお召しになるらしい、それは夫君のご趣味らしいという噂をまき散らしながら、大好きな旦那さまのためにせっせと働いたと言われている。
434
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
魅了魔法に対抗する方法
碧井 汐桜香
恋愛
ある王国の第一王子は、素晴らしい婚約者に恵まれている。彼女は魔法のマッドサイエンティスト……いや、天才だ。
最近流行りの魅了魔法。隣国でも騒ぎになり、心配した婚約者が第一王子に防御魔法をかけたネックレスをプレゼントした。
次々と現れる魅了魔法の使い手。
天才が防御魔法をかけたネックレスは強大な力で……。
「貴女、いい加減コンロコ様から離れてくださらないかしら」婚約者の幼馴染み女からそんなことを言われたのですが……?
四季
恋愛
「貴女、いい加減コンロコ様から離れてくださらないかしら」
婚約者の幼馴染み女からそんなことを言われたのですが……?
※一部修正しました。そのため、見づらい等ありましたらすみません。(>_<)
死のうと思って家出したら、なんか幸せになったお話
下菊みこと
恋愛
ドアマットヒロインが幸せになるだけ。
ざまぁはほんのり、ほんのちょっぴり。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄されて幽閉された毒王子に嫁ぐことになりました。
氷雨そら
恋愛
聖女としての力を王国のために全て捧げたミシェルは、王太子から婚約破棄を言い渡される。
そして、告げられる第一王子との婚約。
いつも祈りを捧げていた祭壇の奥。立ち入りを禁止されていたその場所に、長い階段は存在した。
その奥には、豪華な部屋と生気を感じられない黒い瞳の第一王子。そして、毒の香り。
力のほとんどを失ったお人好しで世間知らずな聖女と、呪われた力のせいで幽閉されている第一王子が出会い、幸せを見つけていく物語。
前半重め。もちろん溺愛。最終的にはハッピーエンドの予定です。
小説家になろう様にも投稿しています。
王家の血を引いていないと判明した私は、何故か変わらず愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女であるスレリアは、自身が王家の血筋ではないことを知った。
それによって彼女は、家族との関係が終わると思っていた。父や母、兄弟の面々に事実をどう受け止められるのか、彼女は不安だったのだ。
しかしそれは、杞憂に終わった。
スレリアの家族は、彼女を家族として愛しており、排斥するつもりなどはなかったのだ。
ただその愛し方は、それぞれであった。
今まで通りの距離を保つ者、溺愛してくる者、さらには求婚してくる者、そんな家族の様々な対応に、スレリアは少々困惑するのだった。
過去の青き聖女、未来の白き令嬢
手嶋ゆき
恋愛
私は聖女で、その結婚相手は王子様だと前から決まっていた。聖女を国につなぎ止めるだけの結婚。そして、聖女の力はいずれ王国にとって不要になる。
一方、外見も内面も私が勝てないような公爵家の「白き令嬢」が王子に近づいていた。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
テンポもノリもアッサリ感も、
いい感じのバカバカしさも良かったです🤣
面白かったです😄