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ご来園いただき誠にありがとうございます。
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煌びやかな灯りが眩しく輝き、賑やかな音楽が流れている。目の前にあるのは何とも素敵な夜の遊園地。
どうしてこんなところにいるんだろう。
少女は、戸惑いながら周囲を見渡した。いつのまにか長い長い行列に紛れ込んでいる。
確かに自分は、あの冷たい布団の中に潜り込んでいたはずなのに。
疑問はすぐに消えて無くなる。
入場門の外へも聞こえて来る、賑やかで楽しそうな笑い声。
こんな素敵な場所に、一度で良いから来てみたいと思ってたんだ。
ああでもどうしよう。少女は小さくため息をついた。こういうところに行くには、お金が必要なんだって、クラスのお友達が話してた。少女が絶対にそんなところに行けないことを知っていて、素敵な遊園地の話をして、買ったものを見せびらかすクラスメイトのことを、お友達と言うのかはよくわからないけれど。
「チケットをハイケンいたします」
どきんと、心臓が飛び跳ねるかと思った。目の前にいきなりうさぎの着ぐるみが現れたら、誰だって驚くに違いない。よく考えると、うさぎって普通は白や茶色や黒なのに、なんでぬいぐるみになると桃色になるんだろう。少女は緊張のあまり変なことを考えたまま、そっとごめんなさいと呟いた。
「チケット、持ってないの。ごめんなさい」
列から離れようとすれば、うさぎは不思議そうに少女の左手を指差した。ふうわりと、もこもこしたうさぎの手になぜか惹きつけられる。
「そちらのチケットを、おネガいします」
「え、チケット? あれ?」
少女が握りしめていたのは、ぐしゃぐしゃになった遊園地の入場チケットだった。文字は掠れて、上手く読み取れない。いつの間にこんなものを握りしめていたのだろう。よくわからないけれど、これさえあれば、目の前の素敵な場所で遊べるらしい。おずおずと差し出したチケットを、うさぎは当然のように受け取った。
「どうぞ、おタノしみクダさい。」
少女はそっと見上げてみる。よく見るとうさぎの目も口も少しばかり怖いような気もするけれど、大丈夫。この人は、パパやママや急に来るお客さんたちみたいに、自分に痛いことをしてこない。だったらきっと良い人だ。
ゆらゆらと揺れる桃色のうさぎは、鮮やかな赤い風船を差し出した。
「わあ、これもらっても良いの?」
ドキドキしながら手を伸ばせば、うさぎは当然だと言わんばかりにゆっくりとうなずいて彼女に手渡してくれる。少女が見上げた風船は、うさぎと同じ桃色をしている。よく見れば周りの子どもたちも、みな桃色の風船を持っている。うさぎが手に持っているのは色とりどりの風船の束だというのに、どういう仕組みなのだろう。
「ようこそ、ユメのクニへ」
少女は歓迎の言葉ににっこりと笑顔になって、軽やかに入り口を越えて行く。
その後ろ姿をうさぎの着ぐるみが、ゆらゆらと見送っていた。
どうしてこんなところにいるんだろう。
少女は、戸惑いながら周囲を見渡した。いつのまにか長い長い行列に紛れ込んでいる。
確かに自分は、あの冷たい布団の中に潜り込んでいたはずなのに。
疑問はすぐに消えて無くなる。
入場門の外へも聞こえて来る、賑やかで楽しそうな笑い声。
こんな素敵な場所に、一度で良いから来てみたいと思ってたんだ。
ああでもどうしよう。少女は小さくため息をついた。こういうところに行くには、お金が必要なんだって、クラスのお友達が話してた。少女が絶対にそんなところに行けないことを知っていて、素敵な遊園地の話をして、買ったものを見せびらかすクラスメイトのことを、お友達と言うのかはよくわからないけれど。
「チケットをハイケンいたします」
どきんと、心臓が飛び跳ねるかと思った。目の前にいきなりうさぎの着ぐるみが現れたら、誰だって驚くに違いない。よく考えると、うさぎって普通は白や茶色や黒なのに、なんでぬいぐるみになると桃色になるんだろう。少女は緊張のあまり変なことを考えたまま、そっとごめんなさいと呟いた。
「チケット、持ってないの。ごめんなさい」
列から離れようとすれば、うさぎは不思議そうに少女の左手を指差した。ふうわりと、もこもこしたうさぎの手になぜか惹きつけられる。
「そちらのチケットを、おネガいします」
「え、チケット? あれ?」
少女が握りしめていたのは、ぐしゃぐしゃになった遊園地の入場チケットだった。文字は掠れて、上手く読み取れない。いつの間にこんなものを握りしめていたのだろう。よくわからないけれど、これさえあれば、目の前の素敵な場所で遊べるらしい。おずおずと差し出したチケットを、うさぎは当然のように受け取った。
「どうぞ、おタノしみクダさい。」
少女はそっと見上げてみる。よく見るとうさぎの目も口も少しばかり怖いような気もするけれど、大丈夫。この人は、パパやママや急に来るお客さんたちみたいに、自分に痛いことをしてこない。だったらきっと良い人だ。
ゆらゆらと揺れる桃色のうさぎは、鮮やかな赤い風船を差し出した。
「わあ、これもらっても良いの?」
ドキドキしながら手を伸ばせば、うさぎは当然だと言わんばかりにゆっくりとうなずいて彼女に手渡してくれる。少女が見上げた風船は、うさぎと同じ桃色をしている。よく見れば周りの子どもたちも、みな桃色の風船を持っている。うさぎが手に持っているのは色とりどりの風船の束だというのに、どういう仕組みなのだろう。
「ようこそ、ユメのクニへ」
少女は歓迎の言葉ににっこりと笑顔になって、軽やかに入り口を越えて行く。
その後ろ姿をうさぎの着ぐるみが、ゆらゆらと見送っていた。
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