上 下
25 / 55

『めがみさま』はこたえない

しおりを挟む
条件:「め」「が」「み」「さ」「ま」「か」「ざ」を使用してはならない



 テーブルにいてあるのはふるふるとれるプリン。胸焼むなやけしそうなそれをべ、わたしは今日きょうもにっこりとわらう。

「おいしいねえ」

 わたしはオリジナルの情報じょうほうをもとに、白衣はくいおとこのぞこたえをした。プリンはオリジナルの大好物だいこうぶつ。よってこのこたえはただしいはずなのに、あなたは表情ひょうじょうくもらせる。あなたにわらってほしいのに、偽物にせものにはなにもできない。あなたのこころあなすことも。

 わたしはオリジナルの伴侶はんりょによってつくられたクローン。代替品だいたいひんのひとつだ。おとことの記憶きおくは、実験じっけんをよりおこなえるようにあたえられた電気信号でんきしんごう。すべてオリジナルのっていたおも

 それなのにあなたのそばにいると、どうしてこんなにいたくて、くるしいのだろう。あなたにれたい。あなたにれられたい。実験動物じっけんどうぶつにだってこころはあるのだと、あなたをあいしているのだとつたえたならば……。いいや、仕様しようのない想像そうぞうはよそう。

 あのひとこころにあるのは、オリジナルのことだけ。おな遺伝子いでんしつはずのわたしたちは、ただの模造品もぞうひん検分けんぶんし、やはりことなるものだと結論けつろんづけたあと、よごれた白衣はくいおとこはわたしたちのいのち躊躇ちゅうちょなく手折たおる。

 どうやらわたしも処分しょぶんすることにしたらしい。あなたは左手ひだりて淡々たんたんとわたしをげた。わたしはあばれることもせず、それをれる。いとしいひとによってせいえるわたしは、きっとしあわものなのだ。

 あいするひときずつけたわたしにおゆるしを。てんにおられるとうと女性ひとにわたしはひたすらいのる。
 どうぞあのひとこころいだものに。もちろんいらえなどるはずもない。それでも、ただいのるのだ。

 あなたの温度おんど気持きもちいい。これだけはわたしにあたえられたわたしだけのもの。ゆるしにもぬくもり。

 ああ、ようやっとわたしもりえた。胸元むなもとふるえる白桃色はくとういろ球体きゅうたい。あなたにうそれこそ、あなたのほっするすくいそのもの。大丈夫だいじょうぶ大切たいせつなものはもともとあなたのすぐそばにある。あなたは孤独こどくではないのだ。

 あふれるしずくへの恐怖きょうふでも苦痛くつうでもなく、ただいびつなあなたへのおもいゆえなのだとげずに、わたしは意識いしき手放てばなした。




こちらは、あっきコタロウ様作『そしてふたりでワルツを」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/499172701/630048599)のキャラクター(ジュンイチくん&カミィちゃん)をお借りしたifSSです。よろしければ本編をご覧ください。

※告白:1、秘密や好意を相手に伝えること。2、神への懺悔(告解)
しおりを挟む

処理中です...