拳で解決する田舎育ちの平民聖女は、呪いなんて信じない。害虫駆除はともかく、呪われた王太子さまをなんとかしてくれと言われても困るのですが。

石河 翠

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 お茶会さえなければ、私の1日の予定など掃除以外に特にありません。そこで今日は掃除道具を持って、のんびり城内を回ることにしました。

 王太子さまのお部屋の周囲は頑張って掃除をした甲斐があって、随分と雰囲気がよくなりました。積極的に換気にも励んだ結果でしょう、よどんでいた空気が抜けて爽やかな風が通っています。

 そのぶん他の場所の汚さが目立ってきているので、掃除場所を変えようとなったわけです。

 荷物を抱えながら移動していますと、馴染み深いあの気配を感じました。

「使者さんストップです」
「何か忘れ物ですか?」
「声を落としてください。一同、敬礼!」

 大きな声で掛け声をかけたくなる気持ちをぐっと抑えながら、静かに敬礼を行います。ぽかんと驚いた表情をしながらも、同じように敬礼をしてくださる使者さんは、本当に優しい方です。

「……マルティナさま?」
「動かずに、目線だけ南南東に向けてください。大声は禁止ですよ。そこに、軍曹殿がいらっしゃいます」
「軍曹殿? わかりましt!」

 事前に注意を入れておいてよかったです。やはりいきなり出会うと、驚いてしまいますよね。

 私たちの目の前を、足先まで含めればてのひらサイズを軽々と越える軍曹殿が歩いていきます。どうやら王太子さまの部屋の近くでは、獲物が捕れなくなったようですね。

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