異世界転生で伝説の冒険者になるも弱点は”妹”なんです

龍巳 照人

文字の大きさ
9 / 29
異世界転生編 1章 強者への道

9話 胎動

しおりを挟む
9話 胎動

 何かが聞こえる・・・まどろみの中で誰かの呼ぶ声がして、遠のいていた意識が戻る。緩やかに目を開けると20代くらいの若い男女が朗らかな笑顔で俺を見つめていた。転生先の両親だろうか? となれば、俺は生まれて間もないの赤子なのだろうな。何か言葉を発しようとも口が思うように動かせない、身体も思うように動かせない。神様が言っていた通りだな。前世の記憶があっても物心つくまでは思い通りにはいかないと。

 どうやら、今は泣く事しかできないらしい。また、意識が朦朧としてきたので、なすがままに身をゆだねた・・・



 5年後――


 あれから5年か・・・無病息災で成長した俺は、今日も魔法制御の鍛錬をしていた。

「制御がこれほど難しいとはなぁ」

 俺が居住しているところはアルスガルド大陸の西側に広大な領土を持つ『エルシュタイト王国』内に点在する領地の1つ『フェイグラム』に住んでいる。その領主の嫡男として生まれた。領主と言っても王国から遠く離れた、農業が盛んな地方の町だ。父親の爵位は子爵。住民からの評判は良く、俺自身も町の商業区に赴いた時は結構挨拶される。貴族と言っても英才教育だのマナーとかもそれほど厳しくはないので、毎日魔法鍛錬に勤しんでいる。

「ぬん!」

 手を前に掲げ、壁をイメージして魔力を込める。だが・・・

「おわっ!」

 2階建ての家くらいの高さまでそびえ立つほどの魔力障壁を生み出していまい、おまけにジェルのように柔らかくとても役に立ちそうにない。

「これじゃだめだ・・・」

 膨大すぎる魔力量のおかげで制御が全くと言ってよいほどできていない。これほど難しいとは思わなかった。マテリアライズは問題なくできたが、その具現化した魔力の調整が恐ろしく難易度が高い。
 例えば、指先に炎を出すとしたら拳くらいの大きさが一般的らしい。だけど俺の場合は、同じ要領でやると大玉転がしで使われる球体くらいの大きさになる。これを縮小させるのが半端なく容易ではない。
 なので、狭い所や不意に魔法を行使すると大惨事になりかねない。魔法書で制御法の記述はあるが、巨大化したものを縮小化する方法は記されていなかった。だから自分でどうにかするしかない。

「根本的なやり方が違うのかな?」 

 そもそも最初から縮小して具現化すること自体、いまだ成功したこともないしな。

「あ~わかんない~」

 俺は大の字になって芝生に大胆に寝転ぶ。

「・・・・・・今日も良い天気だ」

 そういやこの間、妖精さんが近づいてきて触れてみようと人差し指を差し出したら、何か画面のようなものが出たな。あれ、何だったんだろう? もう一度やってみるか。空に向けて人差し指を掲げてみる。

『ブォン』

 スイッチが入ったような音がした。

「出た! え~と・・・これは俺のステータス画面じゃないか!」

 驚いた。さすがにこれはないだろうと思っていたけど実在するとは・・・ありがたい。


―――――――――――――――――――――――――

名前:レン・フェイグラム   年齢:5歳 男性
呼称:地方領主の嫡男 
魔力保有量 ∞      

レベル 10
HP    280/280
MP    640/800
TP    195/210
物理攻撃力 80
魔法攻撃力 600 暴発(48000)
物理防御力 52
魔法防御力 163
敏捷    31
技量    47
運     78

適正属性 
 剣 A  槍 —  斧 —  鎌 —  杖 S
 火 S  水 S  風 S  土 S  光 SS  闇 A
熟練度
 剣 E  槍 —  斧 —  鎌 —  杖 D 
 火 D  水 D  風 E  土 E  光 D  闇 E 
スキル
 Mシールド(E)MP20  エリアサーチ(D)TP10
ユニークスキル
 ステータスビジョンTP5
 Mバースト(SSS)MP640・HP224(MP全消費・HP80%消耗)
パッシブスキル
 ゼウスの加護  ??????

――――――――――――――――――――――――――

 
 う~む、基準がさっぱりだから良いのか悪いのか分からんな。ただ、MPが多いのと魔力暴発させた時の威力がずば抜けているのは理解した。数値でみると参考になる。暴発と言えば、あの時のこと思い出すな・・・ 

 そう・・・実は2歳の頃、この領地に突如危険度Aクラス相当の1匹の魔獣が襲来して危険に晒された。在中している王国騎士やギルドの冒険者も歯が立たず家屋や農作物も焼かれ、後ほど詳しく耳にした話では非常にまずい状態だったとのこと。住民は避難し町が燃え盛る中、ついに町の最奥にあるこの領地にもその魔獣が飛来し壁を突き破り俺たち家族を襲おうとした。

 その時、父親が身を挺して家族の盾になろうと前に出ようとした。さすがにこれはヤバいと思い、俺は抱きかかえられていた母親から藻掻き如何にか脱出し、急いで母親の場所からできるだけ離れた。すかさず大声で泣き叫んで魔獣の注意を引き付けた。案の定、魔獣は俺に反応し遠吠えを上げ攻撃しようとした。
 当時、ようやく歩けだし少し話せるようになった俺だったが、魔法なんてまだ使ったことはなかった。神様に念を押されていたからな。だが、その時はそんなこと言っている場合じゃなかった。躊躇していたら自分も家族も『死ぬ』と悟ったからだ。

 俺は、速やかに魔獣に向けて手を掲げ集中しマテリアライズした。掲げた手から徐々に魔力が集約していくかと思ったら、光り輝く超巨大な魔力の塊が一気に放出した。その時俺はあまりの大きさに唖然としたが、直後全身に衝撃が走り強烈な痛覚や虚脱感で意識が朦朧とし、維持するなんてとてもできそうになかった。なので、魔獣めがけてこの魔力の塊をぶっ放した。辺り一面、眩い光に覆われそこから俺の記憶はない。どうやら力を使い果たして倒れていたようだ。

 その後、死んだのかなと思われるくらい、ほとんど身動きもせず10日ほど目覚めなかったのこと。あまりの威力で魔獣は瞬殺、解き放たれた魔力の塊は魔獣を消滅させても衰えず、徒歩で3日はかかる山に衝突し大爆発したと聞いた。実際にその吹き飛んだ山の一部はそのままの形で残っている。
 それを見たうちの両親はあまりの衝撃でトラウマになり、それ以降俺に魔力を使わせようとしない。だから、今こうして鍛錬しているのも気が気でないとのこと。現に今、母親が少し大きめな木に潜んで目を離さず俺を見張っている。

「見つかってないと思っているんだろうな」

 エリアサーチでバレバレであることも知らずに。

 あとこれ、今見ているのはユニークスキルに登録されてある。となると俺専用か・・・誰でも見れるわけじゃないんだな。他の人のも見れるのか後で試してみよう。しかし、適正属性がすごいな。さすがチート能力だけはある。まだ全然活かせてないが・・・進展しない魔法制御に思い馳せ自分の胸に手を当てる。静かな鼓動とほのかに温かさを感じる。

「虹色のマテリアルシード・・・」

 この心臓の中にあるのだろうか?神様は魂に宿ると言ってたな。魂=心臓って訳でもないから、そういう事じゃないんだろうな。気にしても答えなんて出ないから、さらに画面の下に目を向ける。

「ん?このパッシブのゼウスの加護ってなんだ? ・・・つかどっちのゼウスよ」

 あの時、冗談半分? で自分はゼウスと口にしたあの神様の事なのか、それとも本物の最高神のゼウスの加護なのか? 前者だったら・・・ちょっと嫌だな。
 
 なんとなく画面のゼウスの加護に触れてみると、画面が切り替わり詳細が映し出された。

「変な加護じゃありませんように・・・え~と、なになに」

 状態異常、精神異常の耐性値+60%を付与。3日に1度だけ即死攻撃を無効化。神への信仰心が高いほど効果値は上昇する。

「使える加護、来ました! でも、信仰心? 祈ればいいのかな。それで効果値が上がるならお安い御用さ」

 ??????が気になるけど、そろそろ・・・

「母上、いつまでも隠れてないで出てきたら?」

 いい加減、ずっと見られてるのもこそばゆくなってきたから母親を呼び寄せる。

「あら~ 気づいていたのね~ レン」

 そう言って、のろりのろりと俺に近づいてくる。

 彼女の名はクレア・フェイグラム。母親で俺を溺愛し何かにつけて束縛しようとする。実年齢より若く見え、穏やかで包容力があり、さらに美人でスタイルも抜群ときた。前世の記憶がある分、母親と認知しがたく変に意識してしまうから、できるだけ近づきたくはない。

「レン、今日はもう終わり?」

「そうだね、母上が心配そうにずっと見ているから集中できないよ」

「だって~ またあんなことがあったらもう心配で心配で~ お母さん居てもたってもいられなくなるのよ~」

 そう言って、俺を抱きかかえて力いっぱい俺を抱きしめる。

 !? クレアさん、その大きなお胸で顔を埋められたら息ができなくなってしまわれるのですよ! と、俺は懸命に藻掻く。

「ん~ん~ 母上苦しい! 僕窒息しちゃうよ」

 ほんと、その無駄にダイナマイトなボディで『ムギュ!』はやめてくれ。俺のダイナマイトが着火してしまう。

「あら~ごめんなさい。レン、大丈夫~?」

「ぷは~ 死ぬかと思った。もう勘弁してよね」

 母親に抱き締め殺されかけて、ため息ついていると、後ろの方から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「あ~ お兄ちゃん、またママとイチャイチャしてる!」

 誰がイチャイチャだ。窒息死されかけていたんだよ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...