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異世界転生編 1章 強者への道

29話 激戦の後

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 激戦の末、レンの全属性集束魔法で暴走したナイトメアヘッジホッグを消滅させる事に成功。
 MPをほぼ使いきり脱力して倒れこむレンのそばに、いち早く向かっていく人影があった。

「レン様! 大丈夫ですか?」
 マリアの治療がまだ完治していないのにも関わらず、レンの容態が気がかりで仕方がない、ご主人様ラブリーなフィオだった。

「フィオか・・・俺は大丈夫だ。MP枯渇で立っているのが辛くなっただけだよ。それより、マリアの容態はどうなんだ?」
「あ・・・いえ、その・・・レン様が倒れたので、居ても立っても居られなくて、途中にしたまま駆けつけてしまいました」
「おいおい・・・心配してくれるのは嬉しいが、さすがにマリアが拗ねるぞ」
「ほんと、それね! フィオはご主人様想いよね~」
 いつの間にか、こちらに近づいていたマリアが皮肉を言う。

「あ・・・マリア様、申し訳ございません」
 深々と謝罪するフィオ。

「まぁ、いつもの事だからいいけど・・・8割方回復してもらったし、それに私が吹き飛ばされた後、すぐに駆けつけてくれたから許す!」
「ありがとうございます」
 特に気にしている様子もなかったので、いらぬ心配だったと安堵し、再び目を閉じゆっくりと深呼吸して状態を安定させることにした。

「レンく~ん」
 遠くから大きな声で呼ばれたが、今は大声で返事する気力も残ってないので沈黙し続ける。
 少しして、シリアがレンたちの側に来て様子を伺ってくる。

「マリアちゃん、レン君は大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ。MP消費しすぎて寝転んでいるだけだから」
「そっか! 良かったぁ。それにしても最後のアレ凄かったね! あんな魔法見たことないよ」
 シリアはさっきの出来事を思い浮かべて、やや興奮気味で落ち着きがない様子。

「あの魔法は、私も初めて見たわ」
「私もです。思わず魅入ってしまいました」
「確かに規格外というか、全属性を1つに束ねる魔法なんて聞いたこともないし見たこともないよ」
 遅れて学院長たちがレンたちの元に辿り着く。

「そもそも、全属性を扱える魔法士なんて存在自体聞いたことがない。いったいどんな種を宿しているんだか・・・」
「正直、俺も理屈はさっぱりなんですよね。なんとなく全属性を1つに集束したらどうなるんだろ? な、感覚でやったらできたので」
「本当に、あなたはデタラメな人ですね」
「凛か・・・」
「だから名前で呼ばないでください!」
「なんだ、君らは仲が悪いのか?」
「いえ!」
「はい!」
 見事に意見が分かれる2人だった。

「ククク・・・まぁ、喧嘩するのはほどほどにな。君ら2人が暴れたら学院の至るところを破壊しつくされそうだからな」
「確かに!」
 皆、笑い出した。

「学院長! 学年主席で品行方正である私が、その様な暴挙に出るはずがありません! とても不愉快です」
 ムスッとして、学院長に食って掛かる。

「いや、そうは言うけどねぇ・・・さっきのアレを見る限りはねぇ」
 全員、頷いている。

「・・・・・・フン」
 ほんのり顔を赤らめ、先ほどの自分の言動や行動の顛末を思い返して、何も言い返す事ができなかった。

「さて・・・君たちのお陰で事なきを得たが、こちらの不手際で多大な迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ない」
 学院長が、今回の暴走について深く謝罪する。

「正直なところ、原因が未だ判明されていない。今までこの様な事例がないのもあって、エンジニアはてんてこ舞いだよ。ともかく、何か分かったら知らせよう」

 今回の暴走は単なる予期せぬシステムエラーなのか・・・もしくは悪意による人為的なものなのか・・・現時点では定かではないが、早く原因を突き止めてもらえる事を願うしか、俺たちにはできなかった。

「では、今日はこれで解散するとしよう。こんな事があっては私もこの後、講義している場合ではないからな。みんなご苦労だった・・・いや、恐れずよく戦ってくれた。私からも礼を言う。本当にありがとう」

「私は、何もしてないけどね。あ~でも、見てるだけでもすんごく疲れたよ~ こういう時は、お風呂に入って癒されないとね!」
「ん? 風呂か・・・それなら、学院内に入浴施設があるわ。普段生徒は使用できないけど、暴走魔獣討伐の特別サービスで使用させてあげるわ」
「やった~ 学院長太っ腹! じゃあ、みんなで行こう!」
「良いわね。フィオも疲れているでしょから一緒に行くわよ」
「はい。お供します」
「ほら兄さん、いつまで寝転んでいるの! お風呂行くから立ちなさい」
「お~う、分かった」
 重い体をどうにかして起こすが、まだ少しふらつくな。

「レン様、歩けますか? 肩をお貸ししましょうか?」
「大丈夫よ、フィオ! そこまで甘やかさなくても、兄さんはちゃんと二足で歩けるわよ」
「フン、あれしきの事でへこたれるなんて、まだまだですね。レン・フェイグラム」
 俺、結構頑張ったんだけどな・・・このダブル妹は俺に対して塩対応すぎやしないか?

「はぁ・・・行くか」
 冷たくあしらわれた妹たちの背中を見ながら、いつかお前たちをデレさせてやる! と、ちょっぴり思った。


――――――――――


 レンたちが実習室を去った後、1人の男が姿を見せる。

「レン・フェイグラム・・・まさかあの魔獣を倒すとは」
 男の正体はリンの兄、ジャストールだった。

「ちっ、面倒だな。奴をこのままのさばらしておくのは不愉快極まりない。何としてでもリンから遠ざけなくては・・・」
「また、あの方に力添えを頼むとしよう」

 そう・・・今回の一件は、このジャストールが仕組んだこと。あの方から頂いた、ウィルスを認識させずに魔導演算を狂わせ暴走させる、ハッキングツールを使用した。
 あの方とは何者だろうか? そして、ジャストールは何故、レンを亡き者にしようとしてまで、リンに近づけさせないようにしているのか?

 近い未来、レンを中心に何か大きな歪みが訪れるのかもしれない・・・ 
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