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第2章 戦技祭編

幕間3ノ2 ユーリアの奮闘 後

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【ユーリアside】

 クレジアント君はあまりに強かった。私の出る幕が無いほどに。

「強い………」

 クレジアント君は迫り魔人の攻撃を躱したり受け流したりしつつ着実にダメージを与えて、倒さないまでも戦闘不能にしていっていた。それでも魔人たちは空間の狭間のような所からどんどんと出てくる。

「………よし、私も魔法を撃とう」

 クレジアント君は強い。でも、それでもやっぱり一人であの量の魔人と戦うのは無理がある。それにクレジアント君はクライト君と戦った後で消耗もしてるはず。実際さっきまで迎撃のために最小限とは言っても沢山上位魔法を撃っていたのに、今は剣だけで魔人達と戦っている。まあ、魔人は魔力耐性が高いから節約のために撃ってないだけかもしれないけど。

「暗雲ガ天空ヲ包ミ隠シ、いかづちハ大地ヲ駆ケル。遥カ上空カラ注ガレル一筋の………」

「「「いけ、潰炎オプスキュリテ!!!」」」
「そんなもの………って、なっ!!!???」

 私は詠唱を続けながら声の方に顔を向ける。するとなんと上空には昨日クライト君が使っていた魔法の潰炎オプスキュリテを魔人達が今まさにクレジアント君達に落ちようとしていた。私は必死に詠唱を続けながら、内心絶望していた。

「く、クライト君………」

 クレジアント君がクライト君を持って逃げようとするけれど、持ち上げられないみたい。幸いなことに潰炎オプスキュリテが落ちるからかクレジアント君を攻撃する魔人は今は居なかった。でも、でも………

 私は詠唱を止めてクライト君を助けに行こうとするも、上空に浮かぶ小さな太陽を見ると足がすくんで動けなくなる。動け、動け!動いてよ………!!!いくらそう念じても、足は動かない。理性と本能がせめぎ合って泣きそうになる。

「もう、だめ………」
「はーい、沌霖カオス
「………え」

 そう思った瞬間、横から澄んだ声で大魔法を発動する人物が居た。ナヴァール先生だった。

「あ~遅れてごめんなさい。ユーリアさん、良く戦ってくれましたね」
「あ、わ、私は全然ダメで………」
「いいえ、あなたは2人を助けようとしてましたよね。普通の人はそんなことできません。その心を、大事にしてくださいね」
「あ………」

 そう言って、ナヴァール先生はクレジアント君にも声を掛けに行った。その間に、先生達が続々とフィールド内に入って魔人達を蹂躙していく。

「お、ユーリア。こんなところでどうしたんだ!」
「に、ニーナ先生」
「ん、もしかして魔人達と戦おうとして腰抜けたパターンか~?」
「あ、えっと」

 地面にへたりこんでいる私を見てユーリアさんはそう声を掛けてくる。図星だ。ナヴァール先生はああやって言ってくれたけれど、私はただの腑抜けでしかない。クライト君を助けれなかった腑抜けでしか………

「はは、後でみっちり教育だなこれは!」
「は、はい………」
「でも助けようとした心意気は褒めてやろう!他の奴らは助けにも来ないからな~、全く。学園は何のための養成機関なんだ………まぁとにかく!!!ユーリア、そんなに肩を落とすな!お前は磨けば光る魔法センスをしてると思うし、心も強い!」
「そ、そんなこと………」
「あるさ、でも後日教育はするからな。ユーリア自身が乗り気だったらだが」
「は、はい!受けさせてください!」
「いいじゃねぇか、今の顔!良い表情してるぜ!」

 ナヴァール先生に続いてニーナ先生まで私を励ましてくれた。

「ほら、あっちで友達の3人がユーリアを呼んでるぞ?」
「おい、ニーナ先生。さっさとフィールドに行くぞ」
「あぁカール先生、すまない。それじゃ!」
「君、ニーナがダル絡みしてすまなかったな」
「おい、カール先生!そりゃあないだろ」
「おいさっさと行くぞ」
「あぁもう!」

 そしてフィールドに向かっていく。私はその後ろ姿を頼もしく思いながら、自分に悔しくなった。強くなろうと、そう思った。

「………キュールちゃん達と合流しよう」

 クレジアント君がクライト君を担いで安全な場所まで運んでいくのを見て、私は走りだした。スタグリアン君とマリスタンちゃんを呼んできてくれたキュールちゃんに会いに行くために。

☆★☆★☆

「ごめん!!!」

 私はキュールちゃんに謝る。

「キュールちゃんはスタグリアン君とマリスタンちゃんを呼んできてくれたのに、私は魔人達と結局戦えなかった………!!!」
「そ、そんな、頭上げてください!わ、私じゃそもそも戦えないですし、スタグリアンとマリスタンを呼ぶのは私じゃなくてもできますから!」
「まぁまぁ二人とも、そんなに卑下ひげするのやめなよ。俺なんてそもそも現場に居なくて助けれなかったわけだし」
「そうだぞ、私もさっきの試合で負けてしまったから、ユーリアが戦えなかったなら私だって戦えてなかったと思うしな」

 3人がまた私を慰めてくれる。本当は慰めてほしいわけじゃない。でも、好意で行ってくれているのは分かるから。素直に受け取る。

「ありがとう皆………」
「え、えっと、それでクライト君は保健室に運ばれたんですよね?」
「うん、クレジアント君に運ばれていったよ」
「それじゃあ会いに行こう!」
「そうだな、クライトが無事をと分かったはいいけどやっぱり自分の目で確かめないとどこか不安だしな」
「分かった、それじゃあ行こう」

 4人で保健室へ向かう。キュールちゃんはさっき走ったことで疲れてしまったみたい。私は『先に行くね』と声を掛けてから保健室へ走って行き、保健室に着いた瞬間声を発する。

「あ、クライト君とクレジアント君!」

 クライト君とクレジアント君はビクッと肩を揺らす。そして、気付く。クライト君が起きている。良かった、やっぱり無事だった。

「クライト君は怪我大丈夫?クレジアント君もクライト君を守ってくれたみたいだったね。クライト君を守ってくれてありがとう、それとクレジアント君すっごく強いね!ほんと尊敬するよ!」

 これは心から思っている事。私にはできなかった事を一人で全部やってのけた事は本当に凄いと思うし、尊敬できる。クライト君に最初抱いた感情と似ているかもしれない。

「ユーリアありがとう。あと、クレジアントは………」
「えっとボク、男じゃなくて女なんだよね」
「え、えぇぇぇ!!!???」

 突然の新情報に慌てる。クレジアント君………ちゃんって、お、女の子だったんだ。確かに、見た目は中性的で女の子と言われたら完全に女の子に見える。それと同時に分かった。この子の目、キュールちゃんと同じだ。そっと耳打ちをする。

「クレジアントちゃん、クライト君の事好きでしょ?」
「えっ」

 クレジアントちゃんの顔がみるみる赤くなっていく。これは図星だ。それと同時に私は一瞬いっしゅんの時間、逡巡しゅんじゅんする。この子はクライト君の彼女になったら、クライト君は利用されるだけ利用されて終わらないかどうかを。でも、目を見たら分かる。この目は気になっている程度ではない、ちゃんと中身まで好きになっている目だ。

 私は私がクライト君の彼女という事、クレジアントちゃんならクライト君と結ばれても良いという事、この後キュールちゃんとクライト君と3人きりにするという事をクレジアントちゃんに耳打ちする。

「えっと、ぁ………その」

 クレジアントちゃんは口をモゴモゴさせている。その仕草がさっきまであんなに勇敢に戦っていた人と同一人物とは思えないほど可愛かった。という間にキュールちゃん達が追い付いたみたい。

「あ、クライト!!!大丈夫だった?」
「お、クレジアントさんもいるじゃないか」
「あ、こ、こんにちはクレジアントさん。えと、クライト大丈夫?」

 スタグリアン君の手にはなにやらクッキーの入った小包がある。私も私より女子力を発揮しているスタグリアン君を見習いたい。
 そして、キュールちゃんにクレジアントちゃんと同じようなことを耳打ちする。キュールちゃんの顔もクレジアントちゃんと同じように赤くなる。

「このクッキーさっきのお菓子のお返し!『』の『』、なんてね」
「スタグリアン、公爵家なんだからそういうの社交会とかではやらない方が良いぞ」
「マリスタン、冗談じょうだんじゃん」
「おぉ、すまない。あまりにも面白くなかったもので」
「なんだとぉぉお!許さない!!!」
「ははは、すまない」

 スタグリアン君とマリスタンちゃんは仲が良いね。その場の空気が余計和んだ気がする。私もさっきからどこか緊張きんちょうしていたけど、その緊張も今のできれいさっぱり無くなった。まぁ本当に緊張してるのはキュールちゃんとクレジアントちゃんだろうけど。

 少し話した後、スタグリアン君とマリスタンちゃんに2人の事を話す。すると二人はニヤニヤと悪い笑みを浮かべて目で示しを合わせてきた。マリスタンちゃんは別にクライト君の事を恋愛対象としてみてないだろうからそそのかしたりはしない。

「それじゃ、私達はここらへんでお暇するよ~!クライト君またね!」
「「また後で~!」」
「あ、ちょっと………」

 クライト君を今回だけは無視して保健室から3人で出ていく。まぁ出ていくと言っても、保健室のすぐそばに居て聞き耳を立てているのだけど。大丈夫、そそのかした以上は茶化ちゃかしたりすることはない。ただ、クライト君の選択が気になるだけ。

 やけに時間が長く感じる。少し経つと、二人はクライト君に告白したようだ。

「来た………!」
「いや、こっちまでドキドキする………」
「うわ~、ちょっと悪い事してる気分」

 クライト君の返答を待つ。少したって、クライト君が声を発した。

「え、えっと………気持ちはありがたいんだけど………僕には、か、彼女がいるから………」

 え、クライト君。もしかして………私のせいで二人の告白を断ってる?………クライト君が本当に好きじゃないんだったら断っても良いと思う。でも、彼女はもう私がいるからっていう理由だったら、二人の想いが報われなさすぎる。

「ちょっと、二人のお願いは受け取れな………」
「ふ~ん、なるほどなるほど」
「っ!?」

 クライト君は焦ってるみたい。まぁそりゃあそうよね、だって私の話をした時に私が出てきたら焦るに決まってる。

「私は、全然大丈夫だよ」
「………え?」
「まぁ、最終決断はクライトに任せるけど」
「え、あの………状況説明をしてくれますか」

 クライト君に二人が彼女になっても良い理由を説明する。それにプラスして、今の内に彼女は何人かいた方が良いという事も言う。なんで彼女の私がこんな他の人の背中を押すようなことをしてるんだろうとも一瞬思ったけれど、これはやっぱり私がやらないとクライト君は納得しないだろうし、何より私のせいで二人の想いが届かないのは納得いかない。

 私が説明したらクライト君は分かってくれたみたいで、二人が好きになった理由を聞いていた。途中、クレジアントちゃんがクライト君に毒を盛ったとかいう話が出て『ちょっと選ぶ人間違えたかなぁ』とも思ったけど、想いは本気っぽいから水に流してあげた。
 何よりクレジアントちゃんは私が立ち向かえない中、一人でクライト君を守ってくれたし。キュールちゃんはいつも優しくしてくれるクライト君が好きという本気で好きになる理由として順当なものだった。まぁ好きに順当も何もないけれど、それでもやっぱりキュールちゃんは私が思ってる通りの凄く可愛くて奥ゆかしい子だった。

 二人が一生懸命話して、クライト君は二人とも彼女になって欲しいと言った。晴れて二人の恋は成就したわけだ。二人をお祝いしたい気持ちもあるけれど、ここからはクライト君の1番になるための戦いが始まる。

 だから私はもう一度二人に耳打ちする。

「私、負けないからね」
「あ、ぼ、ボクも負けないよ!」
「えと、わ、私も負けません!」

 クライト君がさっきから耳打ちする私に何話してるか教えてほしそうにしている。でも、これはクライト君に知られるわけにはいかないから。皆でこういうんだ。

「「「女の子だけの秘密!!!」」」

 ってね!
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