43 / 107
第2章 戦技祭編

第39話 残存する課題

しおりを挟む
「クライト!!!お前本当に凄すぎるよ!!!!!」
「本当に、色々と凄いよね」
「クライトよく緊張せずに堂々とできていたな」
「あわわわわ………」
「あの方も強かったな………私のポジションを奪われないようにしないと」

 メア様が離れてから少し経つと5人が僕の方へ向かってきた。

「何で助けてくれないの!」
「まぁまぁ、そう膨れないで」

 そうは言っても、僕大変だったんだから………!!!
 王女様が例え何気なく声を掛けてきていたとして、下手して嫌われたりでもしたら首ちょんぱとはいかなくても普通に立場が弱くなりすぎる。僕みたいな立場の貴族となればなおさら王家にとっては歯牙にもかけないほど弱小なんだから。

「ほら、今日は奢ってあげるから!」
「あ、私からも勿論だすぞ」
「ボクもクライトの事もっと色々知りたいからご飯一緒に行こうよ」
「わ、私もお金出します…!」
「ほらクライト君!ぼーっとしてないで、ご飯行こ!」

 はぁ、本当に。

「仕方ないな~」
「「「「「いえーい!」」」」」

 仕方ないな~と言った僕の口角は上がっていた。

☆★☆★☆

「ふぅ~、やっと休暇だぁ~!」

 表彰式を終えて、友達とご飯を食べて、寮に帰って一晩寝てから僕は帰ることを決めた。やっぱり、心配なんだ。なんせ悪役貴族のレンメル家だからね。世界の意志シナリオが例え僕を残酷に死なせる運命から外れたとして、僕の家が破滅の一途を辿っている運命は変わっていない。

 なんせレンメル家は、王国一の悪徳貴族だから。

「それで、なんで君たちがいるの?」
「え、えっとぉ………だめですか?」
「まぁそう言わずに」

 僕の前に居るのはキュールとクレジアント。ユーリアをはじめ、スタグリアンとマリスタンはそれぞれ僕と同じように家に帰るらしい。でもキュール達は何故か僕に付いてきている。

「わ、私達特にすることが無くて………」
「そうそう。帰るところって言ったら孤児院だし」

 なんか、触れずらい話題を出させてしまって申し訳ない。

「そっかぁ、まぁ全然気にしてないよ」

 本当はレンメル家を見て失望されたくないからあんまりついてきてほしくは無かったんだけどね。やっぱり、彼氏って立場になった以上はカッコいい所を見せたいでしょ?レンメル家は決してカッコいい事してないから………

 それに、クレジアントは原作ではレンメル家を破滅へ導く最大の要素だしさ………

「どうしたの?そんな険しい顔して」
「わ、私にできることがあったらなんでも言ってください!」

 そんな健気な事言われて否定できないじゃん。それに二人とも可愛いし………今の時間が続けばいいのに。

 馬車に揺られて三人、雑談をする。キュールが揺れを少なくする生活魔法を使ってくれているから馬車内の揺れはあまり感じないけれど、それでもぐっすり眠れるほどには静かなわけじゃないからね。

 大分時間が経つと、レンメル領が見えてきた。雑に舗装された道を馬車が通っていく。すると領民の人らしき人が僕の方に話しかけてきているようだったから、一度馬車を止めてもらう。

「どうしたんですか?」
「あ………」
「あ?」
「あの、その………食べ物を………下さい」
「あぁ、もちろんいいですけれど」

 改めて見ると、痩せ細っていた。僕は馬車から食品類を持ってくるとその人にあげる。その人はお礼を言うと目の前でバクバクと食べ始めた、余程お腹が減っていたのだろう。

「………ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 食べ物を食べ終えると泣きながら僕に感謝をしてくる。なんだか、申し訳なさでいっぱいになった。

「………ごめんなさい」

 僕が言えるのはその一言だけだった。

 レンメル領から移動できるお金の無い領民が税で苦しんでいるのは見るもあきらか。色んな感情が僕の中で渦巻いている。馬車に戻ると二人が談笑している。その姿を見て僕は少し心が安らいだ。同時に、食料を求める領民と孤児院の話を重ねてしまった。

「あ、何があったんですか?」
「ん?クライト、暗い顔してるぞ。どうした?」
「あ、あぁ。なんでもない」

 僕の家の事情は僕が解決するべき問題だ。二人に迷惑はかけられない。それに二人にあの人の事を話したところでどうにもならないだろう。むしろ、不快な思いをさせるに決まっている。

 そして、少し経って馬車が僕の住んでいる離れに着いた。僕は三男という事もあって領主である父にあまり気にかけられていない。母はストレスで他界してしまったと聞く。だからこそ比較的に兄よりも自由だ。原作だとそのせいで性格が曲がっていくんだけど、それを僕は知っていたからあんまり気には病まなかったな。

 馬車を引いてくれた人にお礼を告げて、キュールとクレジアントと馬車から降りる。離れの門ではナイパーが掃除をしていた。ナイパーは僕の方を見ると目を丸くして、駆け寄ってきた。

「お坊ちゃま!!!帰ってこられたのですか!?学園の方はどうされたのですか!」
「ただいまナイパー。学園の方は区切りがついて今は長期休暇だよ」
「なるほど!どうでしたか。お疲れでしょう、ゆっくり休んで下さい。それで………お二人はお坊ちゃまのご友人様でしょうか?」
「うん、まぁそんな感じ」
「こんにちは、クレジアントと言います。この前彼女になりました」
「ちょっ!」

 は、恥ずかしいって!だから僕が友人ってごまかしたんだよ!

「ほう、そうでしたか!これはこれは、丁重ていちょうにおもてなしさせて頂かなくては!では、そちらの女性の方は………」
「あ、えと、わ、私ですか?」
「そうでございます」
「わ、私も、クライトの、か、彼女………です」
「あら、そうだったのですか!お二人ともゆっくりお休みになさってください。生憎、使用人は私含めて5人しかおりませんが精一杯務めさせていただきます。どうぞこちらへ」

 ナイパーが屋敷の中に案内してくれる。はぁ………僕だけ恥ずかしがっていても仕方が無いのでナイパーについていく。月明かりに照らされて、指輪がキラリと光っていた。

★★★★★

「ふざけるな!!!」
「ひぃっ!!!」

 それがしの手下共がまた勝手気ままな事をやらかしおった。何度言えばわかるというのか、本当に頭の足りん奴らである。やはり一度締めておこうか。

「連れていけ」
「も、申し訳ありません!!!将軍様!!!金輪際こんなことはしないと誓います!!!如何かお慈悲を!!!」
「黙れ、黙れ!!!」

 泣き言は嫌いだ。泣き言を言う前に何か対処をする事があっただろうに!!!

 ましてや今一番してはいけないことを一番してはいけない時期にするなど………言語道断である!!!!!

「………チッ」

 思わず舌打ちをしてしまう。今が一番大事な時期だというのに………計画が総崩れだ!!!

「もう、仕掛けるか………」

 幸い、王国の弱い所はもう調べが付いておる。なんでも、領民共を虐げて税を徴収し弱っているらしい。そこから入って行けばいいだろう。周辺の領地もこの際潰しておけばどこからでも攻め入ることが出来るはずだ。

「おいお前」
「は、はいぃ!!!」
「五月蠅い、静かに返事をしろ」
「す、すみません」

 別にお前には怒っていないのだから普通にしていれば良いものを………まあいい。なんせ仲間が連れていかれたから恐怖しているのだろう。それがしもその気持ちは分かる部分がある。

「クライト、と言ったな?」
「はい、その通りです!」
「本来の名前は?」
「そ、そこまでは………」
「チッ、そうか。ならば仕方あるまい」

 勝手な事をした彼奴あやつは許すことはないが、彼奴あやつのお陰ともいうべきかまた新たに警戒すべき対象が増えた。相手の強い奴は知っておくことに越したことはない。そいつらを一人ずつ倒していけば、それがしにも勝機は十分にある。

「それから………」
「なんだ?」
「もしかしたら、クライトと別にもうもう一人いるかもしれません。クライトと思わしき人物と行動を共にしていました。今回の襲撃を我らが潰炎オプスキュリテを扱うまで、剣一つで全員を相手取っていました」
「名前は?」
「名乗りませんでした」
「………分かった、下がれ」
「はっ」

 ………だるいな。クライトとそいつが一緒に出てきたら対処できる奴が限られてくる。倒せないことは無いだろうが。



 まあいい、それでは始めようか。



 まずは編成からだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

処理中です...