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第4章 終幕戦編

第90話 翼竜到る

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【メアside】

「花火が上がりましたね」
「直ぐに最終確認に入ります」
「ええ、そうして。太陽からのエネルギーの収集を中断して、砲の軌道と威力を安定させる為に総員の魔力を砲に注ぎます」
「了解しました!!!」

 先程に、彼からの合図である花火が上がりました。夕日の空で少々見づらかったものの、望遠の魔法を使っていたためしっかりと見ることが出来ました。

「それにしても、この砲は本当に効くのでしょうか………」
「………えぇ。きっと」

 いつも不安一つ溢さない臣下の一人が、私の前で初めてそのような弱音を吐きました。相当、精神が疲弊しているのでしょう。

 私と同じで、父が戦線に発っていきましたから。

「もし効くのだとしても、ここから花火が上がったところはかなり遠いです。砲の角度が1度でも変わると………全ての努力は無駄となります」
「それは心配いりません。角度の話なら、私の得意分野ですから」
「ですが………」
「ラルグ」
「………申し訳ありません。出すぎた発言を致してしまいました」
「気にしないでください。今は、そういう心持ちにもなります」

 私だって、心境は穏やかではありません。それは只単に、怒っているだけという分けではないです。

 私だけでは何も成せない無力感、お父様はきっともうこの世に居ないだろうという悲しみ、多くの犠牲を出すことになった元凶、魔族への恨み。数多のネガティブな思いが交錯し、心の中で反響しあっています。

「………でも」
「………はい」
「信じるしかないのです。自身のするべき事に対して全て出し切って、それでも勝てないというのならば………割り切るしかありません。でも、それもしないうちに心配ばかりしているのは心身を疲弊させるだけの行為」
「………仰される通りです」
「私だって、怖い。怖くて怖くて、私が役に立てなかったせいでこの国が亡んだら………なんて考えも浮かんできます。でも、その思考をするよりも。今は脳内で勝てるビジョンを浮かべて、それに向かって的確に物事をこなしていくしか道は無いのです」

 そう気づかせてくれたのは、クライトさん。貴方でしたね。

 王族としてではなく、一人の人間としてあなたを最大限に賛辞を送りたいです。心から思います。きっと貴方が居なければ、この砲が準備されることはありませんでした。

「メア様!最終確認が終了いたしました!!!あとは………メア様、お願いいたします」
「早かったですね、ありがとうございます。さて、辛気臭い話はこれで終わりにしましょう………それにしても、ここは静かですね。皆が手際よく作業をこなしてくれたおかげで………」
「………メア様っ!!!」

 あぁ………綺麗な花火が、再度上がりました。とっても鮮やかな、日暮れの空にも負けない程に。

 私が得意なのは精密射撃。学園戦技祭でも、魔力をいかに使わずに相手にダメージを負わせるられるかに重点を置いていました。

 今が、真髄を発揮するべき時。砲台を素早く正確に、花火が上がった方向へ向けます。





「──────────今ですっ!!!!!!!!!!」





☆★☆★☆

【クライトside】

「ちょっとちょっと、まだ何か隠し持ってるの………」
「………ほう?御前がそれを言うか」
「………もう手の内は全て見せたよ」
「嘘だな。だったら言わない」
「言わなくても変わらないし」
「ふむ、どうだか………まぁ良い。我は今までクライトを舐め過ぎていた、あまりにもだ。この王国でクライトが一番強いとは思っていたが………まさか、他の追随を許さないところまで来ているとは思わなんだ」

 ギュルリアはそう言いながら、魔法を使って自身の周りを魔素障壁で覆い隠した。何か、準備している。深追いするか、それとも一度距離を取るか。
 二択、ミスは出来ない。

「………何か溜めている」

 一度退こう。周囲から臙脂ベースのものが集まってきている、下手に近づいて至近距離で溜めた攻撃を当てられるとかなりまずいことになる。

「フ、フハハハハ!!!」
「何が可笑しい」
「選択を、見誤ったな………クライト!!!!!」
「っ!!!」

 ギュルリアの体が、見るからに先程よりも大きくなっている。勿論、ただの見た目の変化だけではない。筋肉が膨張し力が増している上に、魔力総量も漏れ出ているものだけで先程の魔力と同程度になる。平たく言えば………超強化されている。

「………血液だね?」
「明察だ。御前は頭がよく切れる………もしあの時順調に魔人になっていたならば、我と共に世界を征服すること等容易かったろうに」
「そんな物よりも大切なものがあるんだ」
「………そうか。尤も、それも今に消える」
「………させない」

 足を魔人化させて、瞬発的に蹴る力を増大させる。本当は、戦闘中ずっと魔人化していたいんだけれど………如何せん難しい部分がある。
 魔人の体は、強大であるが故に負担が大きい。僕は魔人と人間の両方の特性を持ち合わせているから、あまりに魔人形態を長く保っていると………人間の体に戻った時に、内側から体が崩壊してしまう可能性がある。

 剣が交わる。それと同時に、ギュルリアは属性をさせてきた。

「〈寛容〉1式!!!〈慈悲〉1式!!!」

 僕は最低限の属性を発動させて対処する。ギュルリア………さっきも属性を発動させていたくせに、〈傲慢〉1式は属性七つ所持状態でも本来一日一回しか使えないはずだけれど………使えている。

 僕はギュルリアから距離をとって、剣を自分の体に突き刺しながら問う。

「………属性の制限が無いの」
「或る。だが、ほぼ無い」

 〈憤怒〉1式で損傷した内臓の状態を僕自身の刺突で上書きする。血がドクドクと流れ出て来るけれど、今の最善手はこれだ。自分で回復魔法を使っていたら、そのスクにギュルリアに首を刈り取られてしまう。魔人の血が混ざった自己治癒に任せるしかない。

「………少々、御前に興味を持ち過ぎた。与太話はここまでだ!!!!!」
「ぐぅっ!!!」

 先の戦いよりも数倍早く僕に接近して力強い一撃で叩いてくる。まともに受けたら剣が折れてしまう。

停霹タブヘイト!!!」
沌霖カオス
「うぁあああっ!!!!!」
「自身の魔法で灼けろ」

 ………電気系魔法の最上級魔法、停霹タブヘイトをギュルリアの懐に潜り込んで叩き込む。けれど今のギュルリアからしてみればこれは最下級魔法の雷球ボルトくらいの威力みたいだ。ギュルリアは自身で最上級水魔法の沌霖カオスを発動させて、関電によるダメージを僕に与えて来る。

「質量が………大きすぎる」
「我も貰ったさ」

 ギュルリアは体勢を崩した僕に追い打ちをかけて来る。さっき自分で貫いた傷がまだ癒えきっていないのをいいことに、かなり重点的に狙ってきている。

「ぅぁあああっ!!!」

 まずい、受け身を取れば命を奪われるのは確実。かと言って、取らなければ無防備になる………いっそのこと屋根を砕くか。幸いなことに

「させないさ」
「なっ………!!!」

 屋根を破壊しようと魔法を発動させる。しかし、行動を予測していたギュルリアがそれを防ぐように魔祖障壁を屋根に貼った。屋根を破壊することは出来ずに、派手に体が横転する。

 屋根を破壊するつもりだったから回避行動をとれていなかった………!!!

 これは、まず………

「さらばだ、クライ………」
「させない!!!!!」
「っ、な、なにっ!?」
「チッ、こちらが聞きたいが」

 僕の体のギリギリを過ぎ去っていったのは翼竜。しかもワイバーン種みたい。一体でも要求冒険者ランクはSランク、しかしSランク冒険者が対峙してもかなり手こずるし、何なら依頼達成されるのは稀な部類になる。それが………上空に七体。

 ギュルリアの差し金かと思ったけれど、確実に違うみたい。今のワイバーンの行動はまるで………僕を助けてくれたようにも見えた。

「………クライト!!!」
「ん?………あっ」
「話を聞いてくれ!!!」
「後で、こいつを倒したらたっぷり聞くさ。でも、ニーナ先生から来てくれることは聞いてた」
「それなら………さっさと倒さないといけないな」

 ギルバードだ。ギルバードが翼竜を同時に七体の指揮を執っている。ギュルリアが僕から目を話した隙に、自分の体に鞭打って倒れた体勢を立て直す。

「………こんな隠し玉が居たとはなぁ?だが………かなり弱い。」
「使いどころによっては化けるよ」
「まずは、使えるかどうかだなっ!!!」

 戦闘は、未だ終わらない。
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