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第1章 失われた青春の半分、アヴェックの成立

第1話 なんか悲しいプレゼント

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俺は山崎啓介やまざきけいすけ、16歳、普通の高校1年生男子だ
ただ同期とは少し違う特徴を持った学校に通っている
それは、男子校という監獄だ

そんな俺だが今日は小学校時代の友達と祝杯を挙げに来ている
正確に言うと俺が祝杯を挙げてあげる側だ
祝杯と言っても未成年だからお酒ではない
カラオケのソフトドリンクの飲み放題プランを頼んでいる
内容は「高校受験終了おめでとう」と「久しぶり!」って感じだ

「「「かんぱ~い!」」」

今回祝杯を挙げられる側は約半年前に高校受験を無事に終えた
引村康孝ひきむらやすたか、同じく16歳の普通の高校1年生だ
ただこいつは俺と違って共学に通っている

そしてもう一人、内田美紀うちだみき、15歳普通の女子高校生
だけど美紀みきは可哀そうに、女子校に通っている
だが全く悲しそうではないので同情はしなくて良さそうだ

という事で頭の良い人はもう気づいたかもしれないが俺たちは
全員違う学校に通っている
その上に各々部活や私用があるせいで夏休みにも集まれず
偶然祝日だった今日に集まることになった

「まずはタカ、合格おめでとう!」
「タカ、合格おめでとう!」

康孝やすたかは愛称としてタカと呼ばれている
美紀はみっきー、俺はケーだ
久しぶりにこの名前を口にした気がする

「二人ともありがとう!」
「いやいや、そんな。ほらこれ、合格祝い」
「私も、凄い遅くなっちゃったけどコレあげる」
「え、これ開けていいのか?ありがとう!」

タカが俺と美紀のプレゼントを開ける
俺のプレゼントは・・・かぼちゃパイ!
タカはかぼちゃパイ!?という顔をしているが、気にしない
だって、かぼちゃパイ美味しいもん

「皆で分けて食べようぜ」
「だからあんなに慎重に持ってたのか」
「これめっちゃ美味しいから、近くのケーキ屋さんで買った奴」
「いや知ってるよ!というかそれ俺の親が作ってるやつだよ!」
「うぇ!そうなの!?」

そういえばそうだった気もする
ケーキ屋に行くのも久しぶりだし、何ならタカの家には最近めっきり言っていないから忘れていたのかもしれない

「それはケーが悪いでしょ~」
「ほんとだよ、コレ俺頼めば持ってこれるのに」
「いやごめん、じゃあまあこのパイとパイのお代がタカへのプレゼントってコトで」
「あ~、まぁありがとう。気持ちはありがたいけど家は覚えといて欲しかったわ」
「いやホントにごめん!」
「冗談だよ(笑)」

ひっ!こわ!
目が笑ってないから!ごめんなさい!
なんか別の買うから!

「いや、まあ気持ちはホントにありがたいと思っているよ」
「お、おお、良かった、良くないけど」
「はい、じゃあ私のも開けてみて」
「OK!開けるよ!」

今度はみっきーのプレゼントを開けたようだ
箱の中にはスーパーで買ったと思われる文房具類が大量に入ってあった
普段貰うものだったら嬉しいけど・・・プレゼントでスーパーの文房具か

「これ?」
「そうだよ」
「あ~そっか~、うん。ありがとう!」
「なんか悟り開いた?」

遠い目をしている・・・
可哀そうに、と言いたいところだけど言ったら言ったで
怒られそうだからやめておこう

「よし、二人ともありがとう!気持ちを貰えて凄い嬉しかった!」
「それじゃあ、かぼちゃパイ食べようか!」
「いいね!3等分ね!」
「あ~そうだな、うん」

ボーとしているタカを放っておいてみっきーとかぼちゃパイを均等に3つに分ける
分けたかぼちゃパイと飲み放題で注いできたコーラを押し付ける
受け取るとなんだかんだいって美味しそうに食べ始める
まあ、買ってきて良かったのかな?美紀もおいしそうに食べてるし
俺も食べよう

「あ、めっちゃ美味しい」

かぼちゃの甘すぎないクリームがパイ生地にあってて凄い美味しい
また今度も買おう、それと同時に今度は喜びそうなもの買ってくるか~

「タカ、ところで高校どうなの?うまくやれてる?」
「お母さんみたいなこと言わんでくれ、ぼちぼちだけど好きな子が出来た」
「え、まじで?どういう子?」
「えっと、黒髪ロングの子なんだけどさ。凄い可愛くて優しくて頭もいいんだよ」
「え~!私も会いたい!」

何故か俺よりもみっきーが興奮しだした
みっきーは女子校に入ってから何か変わった
何というか、可愛い女子を見たり聞いたりしてはやけに食いつく
やはり環境は人を変えてしまうんだな

俺だってもともとは、ほぼ恋愛に興味が無かった
でもいざ男子校に入るとそうは言ってられなくなってしまった
失ったものの大きさは失ってから気づくともいうし

「それで?今どんな感じなの?」
「運よく隣の席になれたからこれから仲良くなってアプローチかけていくわ」
「違うでしょ、今どんな感じかって聞いてんじゃないの?ケーは」
「あ、今ね。今はまだ友達くらいの感じ、たまに遊びに行くくらいかな」
「そうなんだ、意外と押したらいけるんじゃないか?」
「男子校の奴には乙女心は分かるわけないでしょ」

解せぬ
別に乙女心の観点から言ったつもりではなかったのだけれど
まあ、変なこと言って失敗しても責任は取れないし、口出ししない方が良いか

「私が思うに、黒髪ロングの女の子は押したらいけるよ」
「なるほど、みっきーが言うなら間違いないな」
「俺も全く同じこと言ったんだが?」

乙女心って難しいかも

「それじゃ、歌うか~」
「バイブスあげてこー!」
「バイブスって何?」
「え、わかんない」
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