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第2章 俺だって、俺だって!

第22話 リアルホラー展開到来

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文化祭もだいぶ終盤に差し掛かってきた
あれからだいぶ色々と回り、行っていないのはお化け屋敷くらいになっていた
なんでもお化け屋敷には並ぶ気が失せるくらいの行列ができていたからだ

「もう空いてるな」
「良かった良かった、文化祭ももうすぐ終わるしね」
「文化祭のお化け屋敷って並んでるイメージ強いよね」

確かに
他の学校の文化祭も行った事があるけど、そこでもお化け屋敷は並んでいた
なんでなんだろ?実は去年も一昨年おととしも、並んでいたせいで入ったことが無いのだけど

「あ、すぐに入れるって」
「ラッキーだね、最初の方1時間待ちとかじゃなかった?」
「ええ、そんなに並んでたんだ」

何でそんなにも文化祭のお化け屋敷は人気なんだろう?
普通に遊園地に行ったら割とあるし
縁日とかミニゲームとかやった方が良くないか?

「すいませーん、入ってもいいですか?」
「良いですよ。5名様ですか~?」
「はい、5人です」
「それでは順番に1人づつお入りください」

最初に入るのは康孝やすたか
なんでも『俺は怖いものとか無いから』とか言っていたからな
勇ましく入っていった

「じゃあ次俺はいるわ」
「じゃあ私ケーの後に入る」
すぐる君はどうするの?」
良哉りょうや先に入っていいよ」

という事で入る順番は、康孝やすたか→俺→美紀みき良哉りょうやすぐるになった
さて、じゃあ俺はそろそろ入ろうかな

教室内に足を踏み入れる
扉を閉めると暗幕によってほとんど見えなくなった
このお化け屋敷は迷路のようになっているらしい

「うわっ!」
「ぅぉ、タカの声だ」

あいつ、意気揚々と一番初めに行かせてくれって言ってきたのに
普通に驚いてるじゃん
でもこれで期待は高まった

「取り敢えずは道なりに進んでいくしかないな」

迷路には左手の法則というのがあってだな
左手を常に壁に当てながら進めば、迷うことなくゴールまで行けるというものだ
暗いしこれを使った方が安全だろう

「ん?おぉ、すげぇ」

これかなり作りこまれてるな
壁に手を着いた時気が付いたけど、コレ赤い手形がついてる
暗くて良く見えなかったのに、よくこんなところまで作りこんだなぁ

「うおぉ、風ぇ」

作りこんだなぁ、とか思ってたら急に強めの冷風が吹いて来た
どういう作りになってるんだこのお化け屋敷
しかもまだ序盤だし

「あ、あそこちょっと光ってる?」

ぼんやりとなにかが地面に浮かんでいる
近づいてみると急にパッと消えた
何だったんだろ?まぁいいか

と思ったら急にだいぶホラーな顔が映った
これ子供見たら泣いちゃうよ

パンッ!!!

「うわっ!びっくりした・・・」

静寂な教室の中で急に大きい柏手かしわでを打たれた
何にも音の鳴っていない空間で急に破裂音はキツイ
今は俺の心臓が破裂しそうだよ、ほんとに

「よし、ちょっと落ち着いてきた」

また左手の法則を使って暗闇を進んでいく
しばらく進んでいくと分かれ道があった
まずは左だな、突き当りでも左手の法則で引き返せるから

ゆっくりと進んでいく

ペタ・・・ペタ・・・

「なんだ?足音かな?」

なにかが聞こえる、後ろからだ
段々と音が近づいているようだ
ミッキーの可能性は・・・ないだろ

「速めに歩けってか」

ゆっくり歩いていたものの、足音が近づいてくるので仕方がない
少し早歩きをする

ビリッ

「んぁあ!ちょっと、ほんとに・・・」

その時突然目の前の壁から手が飛び出してきた
動いていない、マネキンのようだ
早歩きさせて油断させた後にそれはずるいよ、ちゃんと驚いたもん

「いやぁ、びっくりぃいい!?」

マネキンで気が緩んでいたところに生首がロープに吊るされて移動してきた
上に張ってあるひもにハンガーの先端のようなもので生首を掛けて移動させたのだろう
もちろん生首はマネキンのだが、それでも怖い

「はぁ、驚きすぎて疲れてきた」

いや、でも教室跨いだっぽいしもう直ぐで出口だと思う
あぁ、この道は行き止まりだったようだ
さっきの所まで引き返して、もう一つの道を進む

「あれ、人が居る」

人か?マネキンかなぁ?
うずくまっているようだけど、どうしようか
無視して通り過ぎたいけど、進行方向にいる以上は絶対に何かあるんだろうな

「うぅ・・・」

息を殺して通り過ぎようとする
何かしてくるのか・・・!?
いや、動かないな

「死んではなさそうだし、これ置いてっていいよな・・・?」

病人だったらどうしようとか思いつつ通り過ぎる
まあ、かすかに動いてはいたし大丈夫か

「あ、もう出口近いぞこれ」

なんとなく扉から光が漏れているのを発見する
良かった、このお化け屋敷完成度高かったな

ドンドンドンッ!!

「いぇうあ!?」

出口が見えて安心した時、隣にあるロッカーの中から激しく叩いた音が響いてきた
真隣にあるものから突然でっかい音出てくんのほんとに心肺停止する
出したことないヤバい声出たし

「はぁ、はぁ」

息切れしながら扉向かって目指す、もう目の前だ
扉の間にある距離は約5メートル
この間に何か仕掛けがあるんだろ?俺知ってるから

ペタペタペタペタ

「え!?」

さっきの足音だ、早歩きしてこっちに近づいてきているみたいだ
後ろを振り返ると先ほどまでうずくまっていた人が追いかけてきている
しかも結構な速度で

「ちょちょ、まじで」

人生でTOP10には入るくらい焦りながら急いで扉に向かって走る
素早く扉を開けて外に飛び出す
出た先にはタカが居た

「ちょ、ちょっと待って、休ませて」
「あっはははは!他人がお化け屋敷で怖がってるのめっちゃおもろー!」
「お前、ほんとに、覚えてろよ」

入った瞬間から叫び声が聞こえてきたタカが良く言うわ
お前も俺と同じようなもんだっただろ
呼吸を整えて他の3人を待つ

しばらく待ち、ようやく全員が戻って来た

「いや~怖かった・・・というか心臓止まるかと思った」
「ちょっと完成度高くない?人気の理由分かったかも」
「俺はもう入りたくないな」

確かに完成度は高かった
ただ、俺ではあのキャパシティを受け止めきるのは無理だ
もう一回やってみてくれと頼まれても絶対入らないだろう

「皆そんなに怖かったの?俺は面白かったけど」
すぐる、お前確か趣味でホラーゲーム作ってるんだよな?そのおかげだろ」
「え!すぐるくんってホラーゲーム作ってるの!?すっご」
「僕やらせてもらったけど、結構楽しかったよ~」
「ほんとに?ありがと」

確かにあれ楽しかったな
驚かせに来るというより、シナリオがホラーだったしストーリーも中々良かった
じわじわ怖いって感じだったな

「ねえ、あの最後に幽霊みたいな人が追いかけてくる奴あったじゃん?」

俺が心臓止まりそうになった奴
ほんとに多分あれで寿命縮まったんだが

「え、なにそれ」
「知らん知らん、知ってる?」
「いや私もわかんない」
「僕も、多分知らないかも」
「え、え?何?リアルホラー展開止めて?ねぇ、ドッキリだよね?ね?」

俺だけ雲行きが怪しいんだけど
え、ほんとに。ドッキリって言ってよ
お願いだから、ねぇ・・・



この時の謎は一生解けることはなかった
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