神の使いと呼ばれた男【僕は元地球人だった気がしないでもない】

ろっこつ

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任務失敗

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「で、これから僕はどうすればいいの?」

 少し不安げな面持でヴィータにそう訊ねた。

 ナオヤは操舵席からちょっと腰を浮かせ、正面にある小さめの窓越しに外を見ようと試みているが、着陸時に巻き上げられた枯れ枝や葉っぱなどが降り注ぎ、それが邪魔でしっかり外を見る事が出来ない。

「操縦の仕方は覚えてるか?」

「え?  これの?  操縦!?  ううん… わからん…」

「だろうね、まあ分かってて質問したんだ。こうやって何度も想起させ脳を使うと、そのうち思い出すのではないかとね、根拠もないが薄く期待もしている」

 ナオヤは周りの計器を恐る恐る触ったり、つついたりしているが、ヴィータはそれを黙って見ていた。
 本来指令を出すはずのパイロットであり、船長のナオヤなのだが、どうやらヴィータの見立てでは基本的な能力と、一般的な知識を残し、それ以外の部分は絶望だろうと考えていた。
 重要な事柄、今乗っている母船の事まで、ほぼ記憶を無くしているので、取り敢えず今のフロンティア号はヴィータの管理下に置いてある。
 基本的にはヴィータだけでも操縦はできるが、ヴィータはあくまでサポート役であり、重要でデリケートな判断は基本的に人間、つまりパイロットであるナオヤが決定する事になっている。

「思い出せそうなら少しくらい触っても平気だ、それでだ。本来の我々の任務なんだが…、少々長くなるぞ」

 そう口火をきってヴィータはナオヤに口頭で説明する他に、胸部モニターに映像を流すなどして、本来の任務など様々な事柄を説明し始めた。

「何故、この船に乗ってるかすらも忘れてしまった君に、この船のデータベースをもとに今から分かりやすく事の始まりから話そう」

「ああ、ありがとう」

「まず基本的なさわりの部分だ。西暦でいうところの2千20年、ある天文家が太陽系外縁天体の準惑星に近い場所。エッジワースカイパーベルト付近で不思議な天体を発見することから始まる。
 その天体は太陽系の公転軌道を回る天体ではなく、太陽系外からやってきて、太陽系の重力に捕獲されていたんだ。
 地球からの観測では質量が不確定。後に飛ばした探査衛星の情報で、見ための大きは木星クラスのガス惑星である事は分かったんだが、観測不可能の黒いガスで出来た殆ど光を反射しないその天体を、地球から捕える事は難しかった」

「ふーん… 真っ黒の星ねぇ… そんなものよく見えたね」

 ヴィータは人差し指を立て言葉を続ける。

「周りの星の動きで分かったんだ、周りの星が動いたなら、質量の計算はできる筈だが、それが出来なかった。
 謎の天体の近くにある惑星の軌道観測をするたびに、その謎の天体の計算上の質量は毎回変動してしまった。
 そんな星だったが冥王星の公転軌道内部に入り込んだ時、その天体は木星との衝突コースに入った。
 まるで木星をロックオンするようにだ。
 そこでやっと我々人類の、いや、太陽系その物が危機にさらされてる事が判明した。
 このまま木星に衝突すると、木星は質量の増加で太陽系のバランスを崩してしまう、そうなった時地球はどうなってしまうと思う?」

「さ… さあ…」

「よくて巨大隕石の衝突、最悪質量が変化した木星に公転軌道のバランスを崩され、地球は太陽系からはじき出されてしまう」

「そんな…」

「だが一つだけ希望があった、対策を考える時間があったんだ。謎の天体が木星に衝突するまでの時間だ。発見から衝突までの時間は約98年」

「…98年か、結構な余裕があったのか」

「そうさ、準備する余裕はあった。そこで数々の国、といっても列強国ばかりが協議した結果、地球から避難する計画が出される。諦めが良いのか悪いのかわからない生き物だな、人間は」

「………」

「そう怒るなよ、悪口のつもりじゃないぞ。私のユーモアのレベルはナオヤが自分で設定したんだからな? まあ話がそれたな。それで人類はその時の科学の粋を結集し、地球軌道上に、地球だけではなく月や火星からの資源を使い大きなコロニーを三つ作って浮かべ、旅に出た」

「間に合ったのか」

「窮地に陥ると本気を出すのが生き物の本質なのだろうな、そしてその旅の途中、予定通り謎の天体は木星と衝突し、吸収され、太陽系の大変革が巻き起こる。
 火星と木星の間にあるアステロイドベルト帯の小惑星などが、謎の天体の重力により撹拌され、かき乱され飛び出した小天体が太陽系の星々に重爆撃のように降り注いだ。
 水星、金星、地球、火星に、それだけじゃなく、外太陽系のガス惑星にも次々と衝突する隕石や彗星を、コロニーから観測した」

「みんな、逃げ切れたのかい?」

 そのナオヤの問いに、ヴィータはしばらくの間をおいて話を続ける。

「いいや…、コロニーに乗れた人間は、全部で約3億人だけだ…。1つのコロニーには約1億の人間と、180万種分のDNAと50万種類の動植物」

「そうなのか… でもそれって…」

「すべての生命を地球から救うことは出来ず、沢山の命を地球に置き去りにしてしまう結果になった…。ざっとここまでが事の始まりだ」

 ナオヤはふうっと一息大きく息を吐いて操舵席に座りなおした。
 ヴィータの胸の少し上にあるモニターには、太陽系を俯瞰で見せるような映像が流れていた。
 その映像には、火星と木星の間の小惑星体の一部が、様々な軌道を描いて周りの星々に衝突し、合体する映像が今も映っている。

「で、僕がここに居るのはなぜ?」

「そうだったな。避難の途中、太陽系を観測していた人類は、有る事に気がついた。それは、木星がどんどん質量を膨らませ、大きくなっているのにも関わらず、何故か太陽とのバランスは今までと大きく変化する兆候が見られなかったことだ。」

 ヴィータはここで身を乗り出しさらに画面をナオヤに近づけ、こんどはシンプルな太陽系の俯瞰図を映し出して説明する。

 「計算上、太陽系規模の惑星系には、巨大なガス惑星が3つ有ると重力の均衡を崩し、どれかがはじき出される様に飛んで行ってしまうが、これが2つならとても安定するんだ」

「木星と土星だね」

 ナオヤはヴィータのモニターに映し出される太陽系俯瞰図をみてそう言った。

「ご名答。今まで木星は、土星との起動共鳴で太陽系のバランスを取ってきたという訳だ。だがそこへ第3の巨大ガス惑星が現れ、木星と合体してその質量、重力を大きく膨らませ、比率的に連星系に近い形になると考えられていたんだ。
 そうなってしまうと太陽系の重心は今までのように、太陽中心ではなくなり、太陽を始め主要な星は揺さぶられ、大きく軌道が狂ってしまうと考えられた。
 だが予想とは裏腹に、一部の小さな小天体を残し、主要な惑星軌道に大きな変化が現れる兆候は見られなかった。
 そこで地球を諦めきれない人類は、一度捨ててしまった地球に戻れる可能性に賭けようと、そう考えた。そこで選ばれたのが君たち、国際宇宙連合軍の下編成された、正式名称、宇宙資源開発機構に所属する志願した調査官だ」

「はあ…。調査官…?」

「冥王星付近で3つのコロニーから合計50機放たれた君たちの任務は、攪拌され、不安定になった小惑星が落ち着くまで、冥王星より外縁の、太陽風の届かない末端衝撃波面の外で、太陽系内の観測をしつつ待機。
 小惑星帯の混乱が落ち着いたら内太陽系まで侵入し、地球に生命が住めるか否かを調査、可能であれば着陸し、現地でコロニーの人類が戻ってくる事が出来るように準備する。
 不可能ならばそのデータをコロニーへ送信しつつ、惑星間フライバイ繰り返し、末端衝撃派面の外側へ戻り、スリープ状態で待機し、コロニーからのお迎えに拾い上げてもらう。というまあ最後だけかなりざっくりとした説明だが…。どうだろう、思い出したりはしないか?」

「はぁ…」

 分かったような解らないような、そんな顔で生返事をしただけだったが、ふと気がついてヴィータに訊ねる。

「その任務ってどのくらいの時間がかかる予定なの?」

「やはり記憶は無理か…。任務は最短で約600年ほど、最悪失敗すれば永遠に冷凍のまま宇宙を漂う事になるだろうけど、どうやら私たちの任務は失敗に終わった様だ…」

「えッ!?  600年? ちょっと待てそれってどっちにしろ帰れないのと同じじゃないか!? しかも今さらっと失敗って…」

「まあそういう捉え方もあるが、それも見越して君は志願したはずだ。コールドスリープは母船が持つ限り、ほぼ永遠に寝ていられるし。燃料はこれほど宇宙を彷徨っていたのに、何故かまだまだ潤沢にあるので電力の心配はほぼ無い。君が生きてる間に電気料金はかからないぞ。何だったらフロンティア号での移動もできる」

 一瞬ナオヤは言葉を失い、次に何かを思い出してヴィータに勢いよくその言葉を投げかけた。

「え!  でもさ、 でもだよ、ほら!  外見なよ!  木がいっぱい生えてるじゃん?  ほらほら!」

 操舵席から立ち上がって、窓の外の葉っぱや枝などを一生懸命指しながら、少し興奮した様子で続けた。

「これって水も空気もあるってことだよなッ!?  生命が住めるてことならさ、目的は達成みたいなもんじゃないか!?  ほら!  これ芋虫だよ? これほら!  なんだっけ、さっき言ってたみたく皆戻ってこいって信号送ってさ、ほら…ね? …え?…」

 興奮して話すナオヤに、ヴィータは暫らく反応を止め、ぼんやりと微かに赤く光るスリットをナオヤの方へ向けながら、説明している時の声色より少し落ち着いた声でゆっくりと、こう言った。

「任務は失敗なんだ、私たちはもうコロニーの人類とは会えない…」

 ナオヤは窓に指を突いたままの恰好で目をまん丸く見開き、ヴィータの方を顔だけで見ながら、まだ理解が追いついてない様だ。

「は!? いやいやいや!  分かってないなーほら見てみろって、生命の宝庫じゃないか?  青い空白い雲緑の大地! そのコロニーだか何だかにピピと電話でもかけてさ、もどってこ―いって言えばいいじゃんか?」

「それはもう不可能だ」

 ヴィータは少し身を乗り出して言葉を続けた。

「ナオヤもう一度言う、任務は失敗に終わったんだ。フロンティア号が地球の重力に捕獲され、大気圏突入直前にシステムが眼覚めた、その際復旧したスタートラッカーが複数の星やパルサーの位置計測をし、本船の位置情報を獲得した時に判明したんだが…。我々がコロニーを出てから約2千500万年経過している事がわかったんだ。コロニーや他の母船の信号は、もう届かない」

 ヴィータは説明を一拍置き、再びもう一度、記憶を失い今だ軽く混乱状態にあるナオヤにも理解できるように、ゆっくりと説明を続けた。

「出発して何事もなく待機軌道から内惑星に向かい、地球の調査を進めた結果。種の保存が出来る間に地球への帰還は不可能であることを知った。
 我々の船団は太陽系外縁のカイパーベルトへ戻る事を決め、月で燃料を調達し、眠りにつきながら帰還軌道に入った。
 スリープしながらも信号は受信できていたが、出発から145年目の通信を最後に、他の船の信号は全てロストした。
 スリープ中も定期的に太陽系を観測していたが、木星は質量を徐々に膨らまし、その圧力で核融合を始め、ついに原始の恒星となった。
 その木星太陽のフレアを観測した直後、船の位置情報、航行システムがダウンした。太陽系中心の太陽とは全く違う、未知の粒子を恒星となった木星は撒き散らし始めたんだ。
 その後、この船は救難信号を出したまま、マグネターシールドを最大に展開し、我々は眠りについた。
 どういう訳か地球近傍まで近づき、その重力に捕縛されたところで緊急的にシステムが眼覚め、ここへ不時着した」
 

 そして再度念を押すように、ゆっくりとこう言った。


「2千500万年だ、私も信じられないよナオヤ。2千500万年後の地球なんだよ、ここは。地球は一度、リセットされたんだ」



 ナオヤは言葉を失っていた。訳のわからない宇宙船に乗せられ目覚めた時には、自分が何者で、何を成すべき者なのかさえも分からなくなっていた。
 自分の事も家族の事も何が起こっていたのかさえの記憶を失い、突き付けられた現状といえばアンドロイドと二人だけの狭い船内空間。
 いったい何が起こったというのか。頭を両手で抱え掻き毟るようなしぐさの中、何処か冷静に俯瞰するように、ナオヤは考えをまとめにかかる。
 混乱しているのは記憶のせいだ。今は、この現状を受け入れ、今の自分に出来る範囲で処理すればいいのだ。そう、記憶がない今は自分を縛る足枷が無いのと一緒ではないかと。

「僕、家族とか兄弟とか故郷とか友達とか、なんもかんも忘れてしまったんだけどさ」

「ああ、そうらしいな」

 そうぶっきら棒に返答をする機械人間、このヴィータというアンドロイドは喋り方や仕草がやたらと人間臭い。
 いまも操舵席の隣の席に座り、計器パネルに頬杖を突きながら話している。
 会話している時は顔のスリット内の赤い光がウヨウヨと意思を示すように動く様だ。

「僕は…、どうすれば…、いやまてよ…、帰る場所? なぁ、僕らに帰る場所って、あるのか?」

「さぁ…」

 ヴィータは頬杖をやめ、両手を上に肩をすくめ立ち上がり、他の計器のパネルを見始めた。
 その機械人間を目で追いながら考える。
 記憶がこの状態で、現状出来る事とは何か? 帰還は不可能。なにせ2千500万年経ってしまった今は、違う時間軸といっても過言ではないこの世界。
 記憶が元通りなら自分は何をしたのだろうか? まるで想像もつかない。

「やっぱり、こんな状態の頭で深く考えても始まらないよな…」
 
 そう独り自分に言い聞かせるように呟いた後。

「なぁ… これから先ここで生活するしかないって事だろ?」

 ナオヤは振り返りながらそう聞く。

「この船は、太陽系の大変革時に危機を感じた人間が、地球以外で生物が生存可能な惑星を探す目的で作った船なんだ。人間が住める惑星を探すのはとてもとても大変でねぇ、さっきも言ったけど途方もない年月が掛るんだよ」

 その質問の答えになっていない説明をしつつ、振り返ると今度は他の計器の前に移動し、そして話を続ける。

「節約して使えばナオヤ、君の寿命が尽きた後も稼働してる筈だ、なにせこの船は風化や放射線劣化に対して対応出来る様に作られている」

 ヴィータの発言の意図をくみ取り感心した表情のナオヤは、ふと船内をいろいろ見て回ろうと立ち上がった。
 それに気がついたヴィータは、少し強めな声で注意を促した。

「外に行くならまだ駄目だ。前の地球とは違い未知のウイルスや細菌、有毒物質や放射線をなどがあって、着陸直後から計測しているが、どうも見た事のない波長の放射線らしきものに、大気までこの星は侵されているようだ。それに、2千500万年かけて移動した大陸が地表を一変させている。我々が地球のどのあたりに着陸したかすらまだわかっていない」

 外ではなく、先ずは船内を散策しようとていたナオヤだったが、その言葉を聞いてがっかりと肩を落とした。

「外に出れないのか?」

「最悪はスーツを着て出てもらう、それだ」

 と言ってヴィータはハンガーの中の圧迫感あふれる船外服を指差した。
 背中から潜り込めるよう設置されたその船外服を見たナオヤは、何故か嫌な物でも見るかのように、一人では着れないようなその宇宙服を眺めつつ、船内の探索を開始した。
 この服はとても着心地がわるそうだ。直感でそう感じた。

 動き回るナオヤをヴィータは計器パネルの前で頭だけを向けてナオヤを見ていたが、そのうち興味を無くしたかのように自分の作業に集中し始めた。



 しばらく船内を散策して戻ってきたナオヤは、ヴィータが居る操舵室にもどり、操舵席の右側の椅子に座った。
 操舵席は3つ並んでいたし、船外服もその位の数が掛けられていたのを先ほど見たので、この船は3人で運用するんだろうと、勝手に思い込んでしまう。
 見て回ったが全く持って何が何やらわからない装置と部屋で、迷子になりそうだ。
 通路は狭く、人間が二人ギリギリ身体を横にして抜けられる幅しかなく、壁や天井にはびっしりと配管や機器が並んでいる。一面に碁盤の目のように区分けされ其々に取っ手が付いた壁面など、記憶を失っている今のナオヤには、それがどういう装置なのか、どういう意味を持つのか、まるで考えが及ばないのである。

「何か思い出したか?」

 そう気にするヴィータに、ナオヤは得意げに。

「おもいだした! この船は3人で動かすんだと思うね!」

 ナオヤがそう告げるとヴィータはあからさまにがっかりした、という素振りを背中で見せ付けた後、振り返り。

「ナオヤ、ほんの数分前の話も忘れてしまったのかい…? ここまで来るのに私と君で来たんだぞ?」

 ナオヤは大失敗した時の顔を大袈裟に作り。

「ああっ! そうだった忘れてた忘れてた!」

 と、今度は失敗など気にしてないような顔で、けらけらと笑っていた。

「この船は実質私一人でも動かせるが、重要な決定事項は人間であるナオヤが選択しないと機能しないのだ。その内色々とナオヤにも手伝ってもらうが、今はあまり気にしなくても問題は無い。大抵の事は私一人でできる。ナオヤは人間なのだから、私では選択できないデリケートな問題の時に、船長としての意見をくれれば良い」

「あいあいさー」

「記憶を無くす前の君は、とても頼りになる優秀なパイロットだった筈だ。早く回復してほしいと願ってるよ」

 ぼそりと呟くようにヴィータが漏らすと、ナオヤは真面目な顔で自分を心配して。

「なぁ、僕は人間性や性格まで変わってしまったのか? 本当に、昔と比べて頭が変になってしまってるとか…?」

 少し落ち込んだ雰囲気を出して吐露した。するとそれを見ていたヴィータは、いやいや変わってないと言う意味を素振りだけで伝えてきた。

「ヴィータは少し意地悪だよね?」

 いじけさせられた仕返しに、そう口にした途端、ウロウロゴトゴトと忙しなく計器を確認していたヴィータは立ち止り身振りを交えて力説し始める。

「忘れてるかもしれないが、私の性格を決めたのはナオヤ、君本人であり、君が宇宙開発機構に所属してからこっち、数々の訓練を共にした私たちは、それはとても関係の良いバディだったんだぞ?」

「バディねぇ…」

 ナオヤは腕を組み、ヴィータを上から下までなめるように見ながら呟く。そんな他愛のない掛け合いの最中、何かの音に気が付き一人と一機は動きをとめた。



・・・ゴン!・・・ 

・・・カンカン・・・



 何か硬いものが船体にぶつかっている様だ、少し軽めにだが確かに何かを叩きつけるような音がしている。

「ん?」

 そうナオヤが呟くと草木に覆われている窓に顔を近づけ、何とかその隙間から外を見ようと頭を振っている。

「船体の近くに何か生命反応がある、一つだ」

「わかるのか?」

 ヴィータはおもむろに操舵パネルの計器が並ぶモニターにある映像を映し出した。
 船体外部には無数のセンサーや観測用カメラが取り付けられている。その内の一つに船から出入りするハッチを写すカメラがある。
 これは実際のところ、宇宙空間で他の船とドッキングした時、連結がうまく行っているかを映像などで見て確認するためのカメラだ。

「誰も映ってないね」

 そうこうしてると今度は上から音がした。トトトトト…とまるで身軽な何かが走り回ってるような音だ。

「上かッ!」

 天井を睨みつけるが何も見えるはずもなく、今度は不意に操舵席前の窓の外を、何かが滑り降りていった。
 その何かは窓の外の景色を邪魔していた草木と一緒に一瞬で滑って行ったようだ。
 その事により窓の外が見やすくなった。

「微かに悲鳴っぽい何か聞こえなかった?」

 そうヴィータに訊ねても隣の白い機械人間は何を考え込んでるのか黙ったままだ。

 その時、ついにその姿をカメラがとらえた。

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