猫会議に参加する

トイダノリコ

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猫会議に参加する

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「次回猫会議のおしらせ」
そんな手書きのハガキが、月に一度届くようになった。

宛名は僕。差出人はなし。場所は、公園とか、誰も住んでいない古い家の庭とか。そのたび違う。

なんとなく気になって、指定された日時に行ってみると――たいてい猫たちが、十匹くらい集まっている。
好きな場所で丸くなって、ただ向き合っている。誰も鳴かないし、動かない。
メンバーは、時々入れ替わりがある。

最初は戸惑ったけれど、気がつけば僕も、輪の端っこに座って参加するようになっていた。

ある会議で、やる事もないのでうとうとしていると、白い猫がひょいと僕の膝に乗ってきた。
あったかくて、ふわふわだった。
それ以来、白猫がいる時は、決まって僕の膝の上に座るようになった。

これが猫会議なのか。
よく分からないけど、悪くない。

それからも、ハガキが届くたびに通った。
参加費は、月五千円。知らないうちに銀行口座から引き落とされるようになっていた。

まあ、猫会議費って書いてあるし、いいか……くらいの気持ちだった。

ひとつだけ、不思議なことがある。

満月の夜の猫会議だけは、みんな微妙にそわそわしている。
丸くなりながら、ぼそぼそと何か話しているような気配もある。

でも、耳をすましても、言葉までは聞き取れない。

そんなある夜、ふと疑問が浮かんで、思いきって言ってみた。

「すみません。僕、人間なんですけど……なんで参加してるんでしょう?」

途端に、猫たち全員の視線がスッとこちらに向けられた。

白猫も膝の上で固まったまま、こちらをじっと見上げてくる。

そのまましばらく、しーんと静まり返って――

次の瞬間、さーっとみんな四方八方に散って、いなくなってしまった。

それ以来、ハガキは一通も来ない。

ただ――銀行口座から「猫会議費」だけは、今もちゃんと、月一で引き落とされ続けている。

......月五千円は、ちょっと高いよなぁ。
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