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第三章・銀行強盗事件。8

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「そ、そうだとしても……」

 でも納得がいかない。神崎さんが向かってくれなかったら誰かが犠牲になっていたかもしれない。神崎さんのお陰で皆無事でいられたのに……なのに逮捕されるとか、そんなのおかしいだろ!? 俺は、納得がいかなかった。
 するとすると神崎さんは、俺の頭を撫でてきた。えっ?
 突然頭を撫でられたので動揺してしまう。するとニコッと微笑んでくる。

「心配するな。すぐに戻る」

「神崎さん……」

 神崎さんはそう言うと、もう一度俺の頭を撫でると背を向けてしまう。
 そしてパトカーに乗ろうとする瞬間だった。一条という名の刑事さんのPCウォッチに電話が鳴る。一条さんは、慌てて出るのだが何だか渋い顔をする。
 どうしたのだろうか? テレビ電話を切ると何故か俺を見てきた。

「本部から連絡です。立花駆さん。あなたもご同行をお願いします」

えっ……何で俺まで!?

「おい。一条……何故立花まで呼ぶんだ!? 話なら俺だけでいいだろう?」

「話ならそれでいいのですが。本部……いや警視総監が直接お会いしたいそうです」

 け……警視総監だって!? 警視総監って警察の中でも二番手に偉い方ではないか。
 何で、そんな凄い方が俺なんかに? 意味が分からずにオロオロしていると神崎さんは、諦めたのかため息を吐いていた。

「あの方は、何を考えているんだ?」と……。

 それは、こちらが聞きたい。マジで? 本当に行かないといけないのか?

「ですのでご同行をお願いします」

「は、はぁ……」

 どう考えても拒否権もなく俺と神崎さんは、そのままパトカーに乗せられ警視庁に連れて行かれた。ど、どうしよう……緊張する。
 パトカーすら初めて乗るのに。それに一体俺を含めてどうする気なのだろうか?
 まさか、疑われたりしないよな?

 理由も分からないため余計に不安になっていた。だって警視総監直々なんて普通おかしいだろ? 面識だって無いのに。
 隣をチラッと見るが神崎さんは、黙ったままだった。腕や足を組み落ち着いている。表情も無表情。元刑事だったから、行き慣れているからかな?
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