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第四章・モデル・ストーカー殺人事件。9

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 それでも瀬戸さんに詳しく事情を話して同行させてもらう。
 まずは、現場の近くに居た人や関係者のアリバイを探ることに。エレナちゃんは、医務室に運ばれたが代わりにリカコさんが答えてくれた。

「私は、エレナちゃんと一緒に控え室に居たわよ。途中でスタッフが呼びに来たから証人として確認して」

 リカコさんとエレナちゃんは、聞くだけ無駄だろう。俺達が離れたのは、数分のことだし。伊藤さんと恋人だったエレナちゃんが殺すとか考えられない。
 第一発見者だった清掃スタッフの森さんの話しだと

「わ、私が発見した時は、外にすでに清掃中の看板が置いてありました。私の担当だったので変だなって思って中に……まさか人が死んでいたなんて」

 真っ青になりながらも答えてくれた。すでに清掃中の看板が?
まさか犯人が置いて行ったのか? 発見を遅らすつもりで?
 
 悶々と考えていると次にカメラマンの田辺さんの番になった。

「俺は、アシスタントの菊池と一緒でスタジオに。途中で、電話をしに離れましたが3分もかかりませんでした」

 それに対しては、菊池さんも同意見する。他の複数のスタッフもそう証言していた。そうなると犯行は難しくなる。この人は白だろう。
 
 次に二階堂ユミカの番だ。

「私は、その時間帯の少し前に由那と沙耶香と一緒にBスタジオに行ったわ。ちょっと電話しにも行ったけど私も3分もかからなかったわ。それに別に変わった様子も無かったけど……ねぇ?」

「えぇ、全然気づかなかったわ」

 同じモデルの由那ちゃんと沙耶香ちゃんも同意見する。皆にアリバイがある。
 AスタジオからBスタジオに行くには、階段かエレベーターで下りていかないとならない。事件現場の男子トイレは、人も通るし周りに聞いても変わった様子は、無かったと答えてきた。だとしたら、一体誰が?
 部外者が伊藤さんを殺したと言うのか?

 こういう場合は、よく身近な人が犯人だったりするが、俺には、さっぱり分からない。チラッと神崎さんを見ると何やら考え込んでいた。
 するとエレナちゃんが目を覚ましたと聞いて俺と神崎さんとリカコさんの3人で慌てて医務室に向かった。エレナちゃん大丈夫だろうか?
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