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第五章・ご令嬢誘拐事件。10

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 そう言った神崎さんは、ハッとカバンの方を見る。
 そのカバンは、大金が入っているカバンだった。えっ? ま、まさか……!?
 神崎さんは、二階堂ユミカを静かに下ろすと、慌ててカバンに近づき耳を当てる。そしてチャックを開けてみた。予想的中だった。大金と一緒に時限爆弾が入れてあった。何でこんなところに!?

 もし出られて逃げれたとしてもカバンを持っていたら同じことだ。爆発していただろう。想像するだけでもゾッと背筋が凍ってしまう。
赤羽って奴は、どれほど冷酷で鬼畜な性格をしているんだ?
 人を殺すってことに抵抗がないなんて……。

「とにかく、これを解体しないと爆発する」

 神崎さんは、そう言うと時限爆弾の蓋を開ける。すでに残り時間が五分を切っていた。もう5分もないじゃないか……。
 しかし神崎さんは、いくつかあるコードを丁重にほどき、折りたたみナイフをポケットから出すと切っていく。

「ちょっ……神崎さん!? 危ないですってば」

「心配するな。時限爆弾の解除方法なら刑事の頃に専門の奴に教えてもらった」

 そ、そうなんだ……。さすが神崎さんだ。何でも出来るから凄い。
 俺は、少し安心するが、神崎さんは何だか暗い表情になっていく。

「立花。すまなかった……お前まで危険な事に巻き込んでしまって」

「えっ? そんなの仕方がないですよ。それに今回も赤薔薇会の仕業でこうなったんだし」

 確かに、このバイトをしてから危ない目には遭っている。しかし自分も辞めずにやり続けているし。自己責任といえば自己責任なのだ。
 誰かのせいとかは思わない。しかし神崎さんは、深刻そうな表情になっていた。

「……違う。俺のせいでもあるんだ。俺がもっとしっかりしていたら……伊波のようにはならなかった」

 伊波さん……。
 神崎さんの心には、伊波さんに対しての罪悪感でいっぱいになっている。
 大切な親友で幼なじみでもあり、そしてバディだったのだろうと思うと心が締め付けられそうに痛い。

「違いますよ……だって彼は自殺なんだし。それは、自分自身の問題で」
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