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第七章・記憶喪失。13

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「私は……ずっとこの女にイジメられて辛かったの。暗いだの大人しいからと馬鹿にしてきて。辛くて、辛くて……学校にも行けなくなった。全部コイツのせいよ。だから許せない。でもいい気味だわ……今のこの女は、私と同じ立場よ。だから次の復讐はコイツの死だけよ」

 この目つきは正気じゃない!?
 彼女は、完全に目が据わっていた。ヤバい……このままだと。
 本当に岸谷ほのかの命令で自殺をさせられてしまう。

「さぁ……命令をするだ。ほのか。そうしたら君の望みは全て叶う。心配はいらないよ? この後の処分は、僕が全部引き受けよう。心置きなく彼女を殺せ!」

 ダメだ……そんなことをしたら。そんな人殺しだなんて……。
 俺は、絶体絶命だと思った。頭痛までしてくる。
 何より何だろうか……目が離せない。止めないと思うのに、身体は言う事を聞かず、言葉も出てこない。まるで金縛りにあったような感じなる。

「さぁ……立花君。君もよく見るんだ。これが人間の闇の部分。そして汚い部分だ!」

 人間の……闇の部分?
 しかしその時だった。ドンッと音と共に堀内瑞穂の手に何かが当たり、持っている拳銃が落ちた。えっ……?
 振り返ると神崎という人が拳銃を構えていた。何で……この人が!?

「赤羽。今すぐその3人から手を引け! お前の企みは全て俺が、証拠として集めておいた」

「ほう……聞かせてもらおうか? その証拠とやらを」

 仮面の男は、ニヤリと余裕の表情を見せていた。証拠……あの人が?
 俺は驚きながら神崎って人を見る。すると俺と目線か合うとニコッと笑ってきた。えっ……?
 すると神崎さんって言う人は、仮面の男に視線を戻すと語り始めた。

「そうだな。まず……お前は2人の人間を利用した。 1人は、そこに居る岸谷ほのか。お前は、イジメにあっているコイツを利用して学校の掲示板などに『華の雫』の噂を流させた。調べた所、IDの発信元は一定していた。
その後にもう一人の犯行者……堀内瑞穂。コイツには『華の雫』を使い麻薬にかかった状態の時にだ。コイツのスマホで掲示板に同じIDを使わせ、二重に噂を流させる。もしIDからアドレスを調べられたとしても、混乱させるためと、コイツを犯人に仕立てるために。同じ名前に2人の人物。そしてある程度、利用したら岸谷ほのかに約束として、全ての犯行を堀内瑞穂に背負わせ自殺として処分させるはずだった。それも『華の雫』を利用して自殺と見せかけてな」
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