重ねた掌

重ねた掌

手のひらを見つめる。左手の薬指にキラリと輝く指輪。うらやましい。今日は兄の結婚式。スーツ姿の自分を鏡で見つめる。今日は最高の一日だ。兄の妻は金髪で登場。おでこにキスをする兄。ラブラブだ。こっちが恥ずかしくなってきた。扉が開く。鐘が鳴る。おめでとう。数年前のことだ。彼女が隣に座る。しばらくして兄に譲る。都会の街を夜歩く。彼女は黙って歩いた。兄の妻は僕の彼女だった。兄も別の彼女にふられたばかりだった。兄の妻は結婚して女の子を産んだ。僕は笑った。これでいいんだと。じいちゃんとばあちゃんの喜ぶ写真を見て思わず泣いた。これでいいんだと。兄と彼女と僕はずっと歩いて行く。重ねた掌。繋ぎながら。重ねた掌。もう二度と離さない。永遠に。