泥の中で咲く花

松岡玖歩

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蓮の花

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「お前みたいなやつが生きていたらいけない」
そう言われて家の裏口から道に捨てられたのが俺の最初の記憶だ。

そのあと雨の降る路地裏で体を丸めて寝ていた記憶がある。

そのあとは無我夢中で生きてきた。
あまり覚えていないけれど生きるためになんでもやった。

ゴミを漁って、頼まれごとは何でもして、喧嘩をふっかけられたら死なないために戦った。

そのまま流れで気づいたら暗殺でもなんでもやるようになっていった。

スラムでなんでもやっていたからどんな仕事にも抵抗がなかった。
それが裏の界隈にウケたらしかった。まったく褒められた仕事じゃないが実績もできた。
仕事を受けるためには名前が必要だった。
実績と自分を結びつける必要があったからだ。
実績を覚えてもらうために名前はヨイと名乗った。

裏の世界でそこそこ有名になり、モテた。

「ねえ、今夜寄ってかない?あなたならタダでいいわ」
「へーいいの」
「え、ええ。もちろんよ」

酒屋で酒を飲んでいたら、いつのまにか女が隣に座っていた。

女が顔を赤らめた。ウリをやってるのだろうが一般的に美人と呼ばれるような顔立ちをしている。

「そうなんだ」
「ええ。そんなに無関心だなんてかなしいわ」

そう言って、手を絡ませてきた。
恐らく今夜そういうことになるんだろう。
特にこの女になんの感情もないがまあいいかなと思って、そのまま2人で店を出た。

女が俺に跨って座りながら嬌声をあげている。それをどこかぼんやりと聞いていた。

事を終えてベランダで一服していたら、後ろから女が抱きしめてきた。

「ねーぇ、邪魔してもいい?」
「うん、まあ」

そしたら女は無言でギュッと力を強めて抱きしめてきた。

そのまましばらく時間が流れる。
タバコの煙がゆらゆらと揺れた。

もしかしたらこの女は俺のことが好きなのかもしれない。
だけどどうでもいいし、その手のことにはあまり心が動かない。

気がのったらそういうことをする。
別に向こうが誘ってくれるしなんか柔らかくてあったかくて気持ちいいから誘いに乗っていたらいつのまにか遊び人と言われるようになった。

よく女性の金切り声のような声や咽び泣く声、甘えた声や強請る声などが俺の周りでよく起こっていたがそれもどうでもよかったし、俺にはよく分からなかった。

朝起きたらその女はいなかった。そのまま仕事の依頼があった爺さんのところに行く。

「おう。これを頼みたいんだ。できるか?」
「胸糞悪い仕事頼んでくんな」
「まーそういうな。報酬ははずんどるじゃろう」
「まあ」

その依頼は、そこそこ大きな商家一家暗殺の片付けの依頼だった。

もう誰かが殺したあとで、偽装と密閉を任された。

現地に向かうとまあ全員事切れていた。口止めらしくここにいた使用人も片っ端から死んでいた。

「まー派手にやったな。こっちが大変になるっていうのに」

そう思いながらも慣れた作業なので飄々とこなしていく。

あとで国の役人による調査が入るが、役人がどこをチェックして事件性を判断するかはあらかた分かっている。

少し時間がかかり、気づけばもう日が暮れていた。

仕上げに家を燃やして火の不始末による火事ということにして完成だ。

何食わぬ顔をして火が燃え終わるのを遠くから眺め、野次馬として燃え尽きるのを確認しに行く途中、ふと路地裏に歪な影があるのに気づいた。

なぜかふとそちらに寄ってみたくなったのは偶然なのか。

引き寄せられるようにそちらに寄っていくと、なにかがもぞっと動いた。

そこにいたのは高級そうな服を着た赤子だった。
俺はその塊を手に取った。

服をびろーんと持って持ち上げると、その物体はこちらに向かってにこっと笑った。

俺の最初の記憶と同じような路地裏にその物体も落ちていた。

だけどその塊が俺と絶対的に違ったところはその塊は俺とは違って笑っていたところだ。

何かが心に衝撃を与えた。それが何かわからなかったけど、とりあえずその塊を持って帰った。

家に持って帰ったそれはキャッキャという鳴き声を発していた。

おそらくあの商家に関係のある赤子だとは思う。
誰かがダメ元でこの子だけでも生き延びるようにあそこに落としたんだろう。

まあ俺は死体の処理を任されただけなので生きてるものに関しては依頼の対象外だろう。

赤子の体は柔らかいから窓から投げても無事で生き残る勝算はなくはない。
まあその後の人生がどうなるかは知らんが。

さてこの塊をどうしようか。
何もわからなかったのでとりあえず俺は手頃な女性を呼ぶことにした。

「ひさしぶり。ってどうしたのその子」
「拾った」
「拾った?何それ」
「どうしたらいいかわからん」
「は?それで私を呼んだの?」
「ああ」

何かをギャーギャーと言いながら手つきだけはキビキビと世話をしていた。

「それであんたはこの子を育てたいわけ?」
「育てる?」
「育てるも分かんないの?ようは一緒に暮らすってことだよ。後このくらいの年齢だと補助なしには生きられないから補助をする必要があるわ」
「はあ」

まあ別に構わない。この物体のためだったら別に労力はいとわない。

「で、何をすればいいんだ」
「本当にやるの?」
「ああ」

女はなにか驚きながらも必要なことは一通り教えてくれた。

「そうか、助かる」
「お礼なんて初めて言われた気がするけど、私も子供がいたわけじゃないし完璧じゃないから」
「分かった」

とりあえず必要なことはわかった。
それを淡々とこなしていくだけだ。

おむつを変えて、ミルクを作り哺乳瓶というもので与え、泣いたらあやす。
あとは体調に変化がないかどうかを見続ける。

仕事の時は、その女性を中心に色々な女に頼んでみてもらっていた。

「おい、お前痩せたか?」
「そうかな」

よく仕事をくれるじじいのところに行ったらそう言われた。

「ああ痩せたというかやつれたというか、、やつれたことでそんな壮絶な色気出るやつそうそういねえな」

そう言ってじじいは髭を撫でた。
まあおおかたあの赤子を見てるからだろう。夜も眠る暇がない。
だが別にそれをこいつにいう義理もないから適当にいなしておいた。

そんななか事件が起きた。
赤子にあざのような打撲痕ができた。
本当に小さかったけれどそういった暴力の跡を見間違えるはずがない。

徹底的に調べ尽くしたら俺が赤子の世話を頼んでいた女性の1人がやったと判明した。

噂を色々流したからそいつはもうこの町ではもう生きてけないと思う。

「だって他の女との間に作った子供なんて耐えられなかったの。愛してたからなんでもしてあげたのにどうして」

みたいなことをカン高い声で言っていた。
覚えているのは、目の前が真っ暗になるような激情だ。

その女に制裁を加えた後に赤子を見た。
赤子は首を傾げてキョトンとした顔で笑っていた。

おれはじじいのところに行った。
「おい、これと一緒に暮らすにはどうしたらいい」

もうめんどくさいから赤子を持って行った。
じじいは目を白黒させながら
「はあ」
と言った。
「なるほどお前さんがねえ。そうか。お前赤子の育て方なんて知ってるのか?」
「よく知らない。だが人に任せたらこいつに暴力を振るった」
「はあ。どうせその辺の女に任せたんだろう」
「なんで分かった」
「本当にやったのか。そうか」

呆れたように目を細めて言う。

「そうかそうか」
爺さんは小さくつぶやいて真剣な目をした。

「お前さん本気でその子を育てるつもりかい?」
「ああ」

「その子供はどうしたんだ?」
「拾った」
「名前はなんで言うんだ?」
「名前?ない」
「は?まずそこからだ名前くらいつけろボケ」
「名前か。じゃあハスだ」
「ほう泥の中で咲く花か。お前にしてはロマンチックじゃな」

爺さんが面白そうに言う。

「うるさい」
「そうか。それでな子供が大きくなるのはわかるか」
「ああ。まあそうだろうな。だいたいわかる」
「だろう。この子供、ハスか。ハスは女だからこの辺にいる女みたいになるな最終的には」
「は?そんなわけないだろう」
「いや逆にどうしてそうならないと思った。子供は素直だ。周りにいる奴のようになってく。例えばハスを見てた女のようになるかもな」
「、、、」
「そこでお前は少しずつ大きくなってくハスとどういう生活がしたい?」
「あ?」
「だからハスにどういう風に生活してほしいかとそのために何が必要か逆算して考えろ。まあお前さんにそこまでの情があるとも思えないけどな」
「分かった」

他の奴らが信用ならないなら俺がずっとこいつを見てればいい。

ハスが殺人や死体を見るのはなんとなく気乗りがしなかった。
抗争やその他のいざこざに巻き込まれるのもやだった。

この街は歓楽街で稼ぎやすいがハスにとっては危険も多い。
俺は大きな街に引っ越して薬屋になった。

薬を扱うことには長けていたし情報を集めることにも長けていたから薬屋は向いていた。

最初の方は地方を行商することも多かった。

地方の薬が不足しているところとコネクションを作って契約を結ぶ必要があったからだ。

ハスを背負って薬の行商をしているとバスのおかげで契約が結べることも多かった。

男なのに赤子を育てているところが信頼を生んだようだ。

そんなこんなでハスと2人で暮らしていたら、気づいたらハスを拾って15年経っていた。

「ハス学校の用意できたか?」
「まだーちょっと待ってー」
「だから早く起きなって言っただろ」
「そんなこと言わなくてもわかってるって」
「分かってないからそんなに遅いんだろ」
「はいはいわかりましたー行ってきます」

学校にも通ってハスは順調そうだ。

たまたま行商で行った先の大きめな商店の跡取り息子がハスに惚れたこともあった。
ハスが大きくなってからは珍しくハスも一緒に行商に行っていた。

顔も良くてモテそうなのに、ハスと会った瞬間耳まで真っ赤になってろくに話せなくなっていた。
誰がみてもハスに惚れていた。

ハスは美人なのでまあそういうこともあるかと思いその街を後にした。

その後はありがたいことにコネクションができたのでちょくちょくその商店には訪れていた。たまにハスもついてくるとその息子は分かりやすいくらい顔を赤くしながらハスと話していた。

内密にその息子の父親つまり商店の大旦那からハスとの縁談の打診もあった。
俺はハスの気持ちを大事にしたかったしまだ学生だったのでハスが学校に行っている間はと断った。

その息子もだんだんとハスと話すことに慣れてきて、そうするとハスの笑顔も増えた。

笑い合って話しているハスとその息子はなんだかお似合いに見えて俺は目を擦った。

いいところの商家の跡継ぎ息子で顔も悪くない。
女遊びは年相応にしていたが、ハスと会ってからはそれもしていないらしい。

ハスは元々商家の娘だろうし、それなら元あった場所にハスが戻るようで相応しい気もした。

まあそんな未来もあるかもなと思うとなんだか寂しくなった。
俺だけが異物に感じた。

そろそろハスが学校を卒業するという頃にその商家の息子が俺に話があると言ってきた。
想像通りハスと結婚したいという話だった。

「ハスあの商家の息子覚えてるか?」
「うん覚えてるよ。仲良いもの」
「そうか。あの息子が好きか?」
「まあそりゃあ好きだけどなに?」
「いやそうか。それならいいんだ」
「何なのよヨイ」
「いや別に」

俺は商家の息子に返事をした。
「ハスが了承するなら」

卒業式の日から数日たったある日俺はハスを連れてその商家を訪れた。

商家の息子がいつものようにハスに話しかけた。

「ちょっと話したいことがあるんだけどいいかな?」
「うんいいけど。なんの話?」
「ちょっと移動したいんだ」
「うんいいけど、、」

2人は丘の方に向かっていった。
今の時間夕陽が綺麗だろう。

俺はそっと2人をつけた。
昔取った杵柄であの2人にバレないでつけることなんてお手のものだ。

夕日の逆光で2人は陰になっていた。
遠くで商家の息子が手を出しているのが見えた。
ハスがその手を握ったのが見えた。

その瞬間悶えるような苦しみが襲った。
俺の半身が俺のものではなくなった。
途轍もない苦しさに襲われて息ができなくなった。

そのままその商家の大旦那にハスをお願いしますと頭を下げてそのまま去った。

俺の蓮が、泥の中で咲く一輪の希望のない世界なんて耐えられなかった。
距離を置く以外の方法がわからなかった。

俺から見える景色はハスに会う前に戻った。
色も感覚もない。
モノクロームで無機質なものが近づいては遠ざかっていく。それらの繰り返しの中で機械のように動き続ける。

黒い闇の中では呼吸はできない。生きてはいないが生きている。

そういった日々に戻った。

ハスと別れてから半年ほど経っていた。
酒場で酒を飲むことが日常になった。ハスがいる時は深酒は控えていたがもう関係ない。昼間からずっとその酒場にいた。
近くで女が何かを言っているが分からない。化粧の匂いがした。ハスの健康的な匂いとは違う。

酒屋の扉がギイと開いた。なぜか光って見えた。
と思ったら、スタスタスタと歩いてきた女にバチンと頬を叩かれた。
クラクラとして顔を下に向けて、その後顔を上に上げると

そこにはハスがいた。

「見つけた」

綺麗な顔の整えられた眉毛を吊り上げて怒った顔をしていた。

「なんで置いてったのふざけているの」

壮絶なまでの怒りを露わにしながらハスはそう尋ねていた。

いまいちハスがここにいる事を理解できてない俺はボーッとその綺麗な顔を見続けてた。

「ヨイ?もうぼけたの。なんかいったらどうなの?」

なんだかハスは色々とギャーギャーと言っていたが、ハスからは相変わらず綺麗な光が漏れ出ているように見えた。そしてその周りをシャラシャラと輝く光が綺麗で懐かしくて俺はなぜだか目から水が落ちた。

「やだヨイ泣いてるの?なんで?」

また慌ただしくハスが何かを言っていたが、俺はその光の暖かさに驚いていた。

「ハスどうしてここに」
「どうしてじゃないわよ!」

そこからその言葉はさも心外だとでも言うようにぎゃーぎゃーとなにかを言っている。

光が戻ってきた。やっと分かった。俺はこの光の近くじゃないと息ができないんだ。

「あの商人の息子は?」
「断ったわよ。そっちこそなんで勝手に置いてったのよ」
「だって丘で手を握り返してたから」
「あの丘にヨイもいたの?じゃあちゃんと聞いときなさいよ!ちゃんと断ってたんだから」

バチン
また叩かれた。今日俺は何回叩かれるんだろう。

「勝手に勘違いしてるんじゃないわよ」
「だって俺はハスはそっちの方がいいと思って」
「勝手に決めてんじゃないわよ。なんでそんなこと言うわけ」
「相手はいい人だったしハスも好きだと言ってたから」
「はぁぁぁ。好きにも色々種類があるのよ。いい?私だって色々分かってたのよ。ヨイは一生懸命普通を演じてくれてたけど私たちが全然普通じゃないってこともね。」
「それは、、」
「私ヨイが全くの他人なのにこうやって育ててくれたって知った時に決めたことがあるの」
「何?」

ハスはバチンと手で顔を挟んでそのままぎゅーと顔を手で挟みながら言った。

「ヨイとずっと一緒にいるってこと」

その瞬間世界が変わった。
ずっと泥の中にハスが一輪咲いていると思っていた。
だけど周りにハスの蕾がたくさんあったみたいだ。
泥一面にハスが咲き誇った。

呆然としていたら

ふふんとハスが得意げに言った。

「それにヨイが私から離れても私ちゃんとヨイを見つけられたもんね。だからもうはぐれたってまた見つけ出すんだから」

見つけた。俺のものだ。
腹の底から欲深いどろりとした感情が溢れ出てきた。
これは俺のものだ。誰かに渡したりなんて今後決してしない。

ずっと蓋をしていた感情。蓋をしようと思ってでもできなくてずっともがいていた感情。

「決めた」
「何?」
「籍を入れようハス」

その感情のままに獣のように生きようと決めた。

「はああああああ」

ハスが絶叫した。
驚いた顔をした後

「ヨイ何言ってるの?」

と本当に疑問に思っているというようなポカーンとした顔をした。
俺は無性におかしくなって、笑い転げたくなる気分だった。

ああ。こいつは俺のものだ。
こいつが俺を追いかけてきたんだ。もう二度と手放したりなんてしない。

心の底から湧き上がるこの感情に委ねよう。

「んーだから籍を入れようって」
そう言いながら俺は椅子から立ち上がってハスの頭を撫でた。

俺はいままで周りにいた父親という立場を真似てハスのそばにずっといた。
その方が一緒に暮らす時に都合が良かったからだ。

けどそれもやめた。
俺は俺だ。
俺のままでハスのそばにいることにした。

されたことのないことをされてハスが驚いている。
「なんかヨイ会わない間に性格変わった?」
「んー?」

ハスは頭を撫でられることは一応受け入れてるみたいに見えた。
まあ戸惑って反応できないだけかもしれないけど。

「かわいーなー」
心の底からそう言って撫でてると

「え?なに?ほんとにどうしたの?」

ハスが戸惑っている。まあじっくり慣れていけばいい。

「ところでハス。お腹すいたか?」
「ん!空いた!」

ハスの気を逸らす。

「そうか。この辺に美味しい飯を出す食堂があるから食べに行くか?」
「うん!行く」

目がキラキラしてる。

「よしじゃあ行くか」
「うん!」

そのまま2人でご飯を食べに行く

「美味しいね!」
ハスが驚いて言う。

「だろ。この辺で有名なんだ」
「そうなんだ!すごく美味しい。」

ハスが美味しそうに食べている。
一緒に美味しいご飯を食べる。
こういう昔からやってること忘れずに継続する。

そこに少しずつ今までと違うことをさりげなく混ぜていく。

「口についてるよハス」
そう言って口についてる汚れを拭う。

「ん、でももう子供じゃないんだから自分でできるよ」

そう言って同じところを紙で拭き取っている。
馬鹿だなあ子供じゃないからしてるのに。

そう気づかなくていい。ゆっくりゆっくり浸食していく。
そういうのは得意だ。

お会計を済ませて2人で歩いている時にハスが意を決したように
「あのさ、何でもいいからもういなくならないで」
と言った。
こういうハスに俺は弱い。

「ん」
背中に手を回してハスの背中をさする。

「だからもう子供じゃないって」
ハスが嫌そうにする。

だから子供じゃないから*以下略

まあどっちだっていい。ハスが悲しそうなのは嫌だ。それはずっと変わらない。

そのまま2人で俺がとっている宿まで歩いた。

「籍を入れるって話だが」
「ほんとに言ってたの?」
「当たり前だろう」

ハスが嫌そうにする。

「ヨイの周りにいた女の人みたいにはなりたくない。みんな泣いてた」
「は?何を知ってる?」

ハスと暮らすようになってからもそういう遊びをすることがごく稀にあったが、ハスには影響が出ないようにすごく気をつけていたはずだ。

「むしろ知らないと思ってたの?その人たちに私色々言われてたんだから」
「あ゛?」
「そいつら誰だ。名前は?」
「言ったらなんかするでしょ」
「しない」
「はいはい。別にほんとにそれはいいって。たまに来てたじいちゃんに相談して対処法教えてもらってたし」
「は?あのじじい知ってて黙ってたのか?」
「だから怒んないでって」
「今更怒ってもしょうがないでしょ。終わったことなんだし」
「まあ」
「でしょ」
「あと何を知ってるか知らないけど。おれがハスを泣かすようなことするわけない」
「そんなのわかんないでしょ」

まあいい。別にやりようなんていくらでもある。じっくりと確実に仕留めればいい。
そういうことは得意範囲だ。

じっくりと射止めればいい。







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その後
こんなに大口叩いておいて意外とハスが大事すぎてまったく上手くいかないです。
(ヨイはモテる上に昔の仕事柄マインドコントロールなども一通り齧ってるけど全然上手く行きません。というかハスが大事すぎてマインドコントロールかけれません)

ついでに言うとそれで困り果てて爺さんに相談して
「いままでのツケじゃぼけ」
と大爆笑されて散々面白がられます。

最終的にはハスが絆されてしょうがないなあって感じで上手くいきます。

でもその後も尻にひかれて散々爺さんに揶揄われます。
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