没落貴族の愛され方

シオ

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「ふーっ、ひと段落ついたね」

 引っ越し作業がひと段落し、セナが額に浮いた汗をぬぐった。
 それぞれの荷物を貴族街のある王都から、ユギラまで運んでいたのだ。一度、セナが移動魔法でいけないだろうか、と挑戦していたが、どうやら不可能だったようだ。悔しそうにしていたセナは大変可愛らしかった。
 荷物をそれぞれの衣装棚や本棚に収め、作業が完了した。

「お疲れ様」
「俺は全然疲れてないよ。ラーフにばっかり力仕事ばっかり頼んでごめん」
「それくらいしか取り柄がないんだから、使ってやって」

 セナに重たいものを持たせる気は微塵もない。本当は全てシェイナ家の使用人たちを呼んで片付けさせようとしたのだが、俺たち二人の家になるんだから二人でやろう、とセナが誘ってくれたのだ。セナの誘いを俺が断るわけがない。

 二階のリビングルームのソファに腰かけた。当然セナも俺の隣に座るのだろうと思ったら、セナはキッチンの方へ歩いて行く。

「紅茶でも飲む? それともコーヒー?」
「セナは?」
「んー、俺は紅茶かなぁ」
「じゃあ俺も紅茶で」

 どうやら、俺のために紅茶を淹れてくれるらしい。普段は、そんなことは従者が行う些事だと思っていたのだが、セナが淹れてくれるとなると尊く崇高な行為に思えてくる。

 セナは紅茶が好きなようで、あまりコーヒーを飲んでいるところを見たことが無い。俺はどちらでも良いので、セナが好きな方に合せる。暫くすると、ティーポットとカップを二つ持ってセナがやってきた。俺の隣にちょこんと腰かける。

「ロキにも持って行ってあげた方が良いかな」
「いいんだよ、あいつは」
「もっと優しくしてあげなよ」

 一階部分にはロキもいる。だが、俺たちの生活に関与してくることはない。俺がロキに求めるのは、主にセナの警護だ。俺の目が離れている時には、俺の代わりにセナを守ってほしい。

「そういえば、今日、ロキと一緒にスマホを買ってきた」

 嬉しそうにセナが新しいスマホを見せてくれた。新品だ。聞けば、引っ越しの際にフィルリアの御当主から持たせてもらった準備金の余りで安い機種を購入したらしい。

「え? いつ行ってきたの」
「ラーフが公爵様に会いに行ってた時」

 確かに今日、荷物を取りに貴族街へ行くついでに父さんに呼び出されていたのだ。その間に、ロキと一緒に街へ出てささっと契約を済ませていたらしかった。

「いろいろ機能がついててもよく分からないから、シンプルなものを選んでもらったんだよ」
「……俺が選びたかった」
「最近は俺が着る服とか、全部ラーフが選んでるじゃないか」
「何もかも俺が選びたかった」

 子供のように不貞腐れて、セナの方に雪崩かかりその膝の上に頭を乗せた。困ったように笑いながら、セナが俺の頭を撫でている。なんて優しい手だろうか。太腿はとても柔らかい。あまり筋肉がついていないセナの体は、色々の所がぷにぷにとしている。贅肉がたくさんついているわけではないのだが、どこもかしこもマシュマロのように柔らかいのだ。

「ラーフがこんなに甘えたなんて知らなかった」
「嫌いになった?」
「まったく」

 俺の頭を撫でながら、セナが笑っていた。そして、軽く額にキスをする。額じゃないところが良かったな、と思って見ているとセナは照れたように顔を逸らした。

「ほら、紅茶が冷めるぞ」

 せっかく淹れてもらった紅茶を冷ましてはいけない。身を起こして、カップに口をつける。紅茶を飲むために少し俯き、そっとカップに唇をつけるセナの横顔を見ていた。伏せられた瞼。まつ毛は長く、紫水晶の瞳を隠す。カップにキスをしているような、可愛らしい唇。なんて美しい横顔だろうか。
 熱い紅茶を口に入れて、飲み干す。体の中心を熱いものが走って行った。もう一度セナを見る。やはりその美しさは変わっていない。

「ねぇ、セナ」
「うん?」
「……してもいい?」

 びくりと、セナは肩を振るわせる。何を、とは言っていない。ただ、したい、とそう言っただけだ。けれど、セナはその意味が分かっているのか、顔を赤くしてこちらを見た。拒まれるだろうか、と思っていたが、その目を見たときに理解する。セナのその双眸は熱で潤んでいる。セナは、俺を受け入れる覚悟を決めているのだ。

「シャワー、……浴びたい」
「一緒に浴びても良い?」

 セナに近付いて、小さな頭の側面に掌を付ける。可愛らしい耳に触れれば、びくりと体を震わせて僅かに逃げる。なんて敏感なんだろう。さらに距離を詰めて、鼻先と鼻先が触れる距離へ。セナは震えながら頷いた。
 
「いいよ」








「……っ、ん、……ふ」

 互いに裸になってシャワーの雨に打たれている。濡れた状態で、互いを求めあった。抱きしめあいながら、唇を重ね合わせて貪り合う。角度を変えて離れたり、ひっついたり。軽く口付けたり、深く求めたり。

「上手になったね」
「ラーフの真似してるだけだよ」

 短時間の間に、セナはぐっとキスが上手くなった。拙い口付けも可愛らしくて大好きだったが、今のキスもとてもいい。全て下半身にくるようなキスで、俺のものはもうすでに大きく反り立っていた。

「……凄い大きくなってる」
「怖い?」
「……ちょっと、怖い。こんなの、入るのかな」
「少しずつ慣らすから大丈夫」
「触っても……いい?」

 思いがけないお願いに、俺は面食らってしまう。戸惑いながら、いいよ、と言えばセナが恐る恐る触れてきた。同じものがセナにもついているのだが、どうにも新発見生物でも触るような手つきだった。
 竿の部分に軽く触れられ、それだけで俺は体の奥が締め付けられたような感覚を抱く。セナの手に思い切り擦り付けて絶頂に向かいたい気持ちにすらなった。なんとか必死に耐える。今、果ててしまえばおそらくセナを怖がらせてしまう。

「セナのは可愛いね」
「……小さいって言いたいのか」
「悪い意味で言ったんじゃないよ。純粋に、可愛いなって思っただけ」

 俺のものとは何もかもが異なっている。肌と同じ乳白色で、先端だけが薄紅色。俺の赤黒いものを見てセナがびっくりするのも当然だろう。色も大きさも違うのだから、怖く思っていたとしても仕方のないことだ。
 セナを抱き寄せて、体を引っ付ける。互いの熱が直接増え合うので、痛いほどに熱い。俺は手を伸ばし、セナの二つの尻たぶの間を触れた。小さなくぼみ。そこをちょんちょんと触る。

「今まで、ここを触った人っている?」
「いっ、いるわけないだろ!」
「じゃあ、俺が初めてなんだね」
「……そうだよ」

 俺が、セナの初めて。あまりの幸福に、頭がぼうっとしてしまう。抱きしめながらセナの肩に額を置いて俯く。幸福が強すぎてくらくらとしてしまっているのだ。

「俺、すっごく我慢したと自分でも思う」
「我慢させてごめん」
「いいんだよ、その我慢が、今めちゃくちゃ大きな幸福に変わったから」

 小さな耳に、細い肩、薄い胴体。何もかも、俺とは大きさが異なる。それなのに、俺の凶暴なものを突っ込んで、セナが死んでしまわないだろうか。そんな心配が胸をよぎった。けれどもう我慢が出来ない。俺はこれ以上の待てが出来ないのだ。

「……少し触るね」

 俺は己の手に少量のボディソープを垂らし、セナのものと俺のものを合せて握った。少し力を込めて扱く。突然の感覚に、セナの腰が抜けそうだった。瞬時に俺はセナの腰に手をやってその体を支える。
 掴む俺の手が上下するたびに、二つのものは泡を立てていた。セナは小さな嬌声を耐えずあげている。俺は歯を食いしばった。快感があまりにも強くて、俺の意識も飛んでしまいそうだったのだ。

「あ……っ、あっ、あ……へ、んな……かんじっ」
「気持ちい、の間違いじゃなくて?」
「わかん、な、ぁっ、あっ、ぅあっ……っ」
「信じられないっ、セナと、扱き合ってるなんてっ、駄目だ、もう、イきそう」
「ラーフ、ラーフ……ッ」

 セナが何度も俺の名を呼んで、何かを求めているようだった。俺はそれを理解する。即ち、セナにキスをしたのだ。セナがキスを好いているのは知っていたから、セナの求めるものがすぐに分かった。深く口付けながら、互いに果てる。セナの吐き出したものを見てみたかったが、シャワーの雨がそれを流してしまった。

「……大丈夫? セナ」
「うん……、大丈夫」
「続きは、ベッドでね」
「……うん」

 ぐったりとしているが、それでもセナは嬉しそうだった。
 俺はやっとセナの中に入れる。出会いから数えるなら二十年近く。恋を自覚してから十年。長かった。ずっと、己をセナの中に入れたいと願っていたのだ。それが今、叶おうとしている。

「優しくしてね、ラーフ」

 初体験に怯えるセナは、恐怖を押し殺して俺に抱き着き、耳元でそう囁いた。絶対に怖がらせたり、痛い思いはさせないと、俺は改めて心に誓った。


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