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「セナ様、何してるんですか!」
培養球を乳母車に乗せて外出しようとしたところを、ロキに見つかってしまった。こっそり抜け出すつもりだったのに、失敗してしまったようだ。慌てて駆け寄ってきたロキが、扉の前に立ち塞がって俺の進行を妨げる。
「ちょっと散歩に行こうと思っただけだよ」
「散歩なら庭でしてください」
「外を歩きたいんだ」
「ラーフに知られたら怒られますよ」
「怒られるから、ラーフがいない時に外出するんだ」
「しかしですね」
「この子にだって、外の景色を見せてやりたいし。……少しだけ、お願い」
結局は、折れてくれたのはロキだった。乳母車を押すことは、ロキが譲らなかったが、それでも散歩に行くことが出来た。外は空気が冷たく、厚手のコートを羽織る。培養球の中は密閉されており、胎児をとりまく環境が温度に左右されることはないが、それでも赤ちゃんは培養球ごと毛布で包んで、温める魔法も展開しておいた。
「セナ様、お子さん、そんなに大きくなったの?」
事情を知る近所の人たちがそんな風に声をかけてくれた。ユギラとフィルリア家が古より縁があるため、この町の人は俺のことをセナ様と呼んでくれる。だが、そんな風に呼ばれると少し面映ゆい気持ちになるのだ。
「はい。来週くらいには生まれる予定で」
「それはめでたい!」
「赤ちゃん、そのボールの中で窮屈そうですね」
「そうなんです。そろそろ、狭いなぁって言いながら出てくると思うんですけど」
俺が冗談めかしてそう言うと、その場にいた人々が笑った。確かに、赤ちゃんは培養球の大きさと同じくらいまで成長しており、寝返りすらうてない状態になっていた。
頑張ってくださいね、と皆が声を掛けてくれる。こんな、異様な出産を目の当たりにしても動じないほどに、この街の非魔法使いたちは魔法使いというものに慣れていた。
彼らと別れ、散歩が続く。ふいに、背後から車がやって来た。荒々しい音を立ててこちらへやってくる。あまり丁寧な運転ではないようだった。
「セナ様」
ロキに声を掛けられて、車から遠ざかるように動く。ロキは乳母車を安全な場所へ、ゆっくりと運んでいた。俺を守るのではなく、赤ちゃんを守る。それは正しい選択だった。
「この街が好きだけど、子供を育てるには車が多いよね」
「そうですね。それに、魔法使いの子供が育つにしては、あまりにも非魔法使い的な物に満ちていますしね」
「やっぱり、エリアス城に移る方が良いのかなぁ」
あの城も、一部、電気やガスなどを通し始めているが、この街よりは古式ゆかしい魔法使いの生活が送れる状態になっている。新しいものに触れるのも良いが、先人たちが守ってきた文化も引き継いでほしいと思うのだ。
「ラーフの仕事の迷惑になるかな」
「ラーフは、セナ様や若様に関わることを迷惑などとは思いませんよ」
ロキの言葉は、正しいと思う。ラーフは、きっとそんなことは思わない。俺や、この子のことをきっと第一に考えてくれる。数年前まではそれを申し訳なく思うこともあったが、今はそうは思わない。有難いと、素直に受け取ることが出来るようになった。
開けた場所に出て、車が来ていない事を確認し、乳母車に置いた培養球をそっと抱き上げる。培養球自体に、そこまでの質量はない。今俺が感じているのは、正真正銘この子の重さだった。ずっしりとしていて、もう一人前の赤ん坊だ。
「本当に、大きく重たくなったなぁ。こんなに大変なことを、女性はひとりでやってのけてしまうんだから、凄いよ」
「セナ様もご立派ですよ。誰も為し得なかったことを達成された」
「俺が一人で達成したわけじゃないよ。ずっとラーフに魔力を貰っていたし、培養球だって俺が作ったものでもない。色んな人の、色んな努力の集合体がこの子なんだよ」
ぎゅっと抱きしめる。培養球越しではなく、この子を抱きしめたかった。赤ちゃんというのは、どんな匂いがするのだろう。どんな肌触りなのだろう。この子の瞳の色は、何色なのだろう。どんな声で泣くのだろう。知りたいことが山ほどあった。心の底から、愛おしさが込み上げてくる。
「無事に生まれておいで。皆待ってるよ」
この目が見開かれ、この口が泣き声を上げるその瞬間を、今か今かと待っている。
帰宅したラーフのために夕食を作り、共に食器を洗う。その間、ずっと培養球には触れていないが、赤ちゃんは勝手に俺から魔力を吸収していた。触れなくとも魔力の受け渡しが出来るほどに、強く結ばれているということだった。そんな様子を見ていたラーフが、生命の神秘に感銘を受けて深く頷いた。
「本当に触れていなくても平気なんだね」
二人でベッドに向かい、抱きしめた培養球をベッド傍の一人掛けソファにそっと下ろした。そうしてやっと、一日が終わる。ラーフと共にベッドに入った。
「うん。欲しい時に自分で持って行くから、敢えて俺が培養球に触れて魔力を送る必要がないくらいだよ」
「そっか、なら……久しぶりに、俺がセナに触れても良い?」
そう言って、ラーフが俺に覆いかぶさってきた。唇が触れそうなほどに近い。一度、赤ちゃんに視線をやるといつも通り穏やかに目を瞑っている。目の前のラーフは、少し苦しそうに俺を見ていた。
「……いいよ」
赤ちゃんのことが大切だ。それと同じくらいにラーフのことだって大切だ。赤ちゃんの状態が落ち着いて、俺から離れていたとしても勝手に魔力を持って行くなら、ラーフと触れ合えない理由はない。
「魔力、たっぷりあげるからね」
そうやって耳元で囁かれ、体がびくりと跳ね上がる。低く心地よく響く声に、体が反応したのだ。そして、唇が重ねられる。酸素を奪うような、激しいキスだった。徐々にシャツのボタンが外されて、上体の前を全て晒す。
ラーフは、俺の胸に舌を這わせる。舌先で乳首をぐりぐりと押しつぶし、もう片方の乳首も指で摘まんでは手を離し、親指でそれをくりくりと回す。胸なんて、触られても何も感じなかったのに、今ではとても敏感な場所になってしまった。
ぐりぐり、くりくりと弄ばれて、胸の先端がぴんと立ち上がる。それにラーフは思い切り吸い付いて、強烈な快感を俺に与える。
「ア……ッ!! あっ、あ、やぁ、ぁん……っ」
胸の周りには、ラーフが思い切り吸い付いたことによって出来る赤い痕が無数に出来ていた。
「ラーフ……っ、そこばっかりっ、やだ」
「でも、セナ。お母さんになったら、赤ちゃんにおっぱいあげないと」
「俺は、おっぱいでないから……っ」
「そんなことないよ。ずっとここ舐めてると、すごい甘い味がしてくる」
「そんなのっ、ラーフだけ……っ、あぁっ!」
ラーフに胸の先端を甘噛みされて、背中を駆け抜ける強烈な快感に体が弓なりになる。俺のものはもうすでに立ち上がって、ラーフの手の中にあった。ラーフは緩く俺のものを掴んで上下するくせに、果てさせてはくれない。寸前で根本を強く握るのだ。
「ラーフ……っ、いきたいっ」
「俺よりもセナの方が溜まってたかもね」
胸がラーフの唾液でべたべただ。少しの風でも冷たく感じて、それすら刺激になってしまう。もう果てたい。そう願うと、ラーフは小さく笑って俺から離れた。俺の足の間に移動して、俺のものを口に含んだのだ。
「……ラーフ……っ!」
ラーフが俺のものを咥えることはしばしばあるのだが、俺は恥ずかしいのであまり好きではなかった。ラーフが俺のものを口に入れているという事実に、背徳感と羞恥心を抱くのだ。だが、こうなったラーフが途中でやめてくれた試しはない。力強く吸われ、腰が浮く。あまりの快楽に、大きな声で叫びながら絶頂を迎えた。
「たくさん出たね」
俺が出したものを飲み干しながら、ラーフがそんなことを言うものだから、恥ずかしくて堪らなくなる。身を起こして、今度は俺がラーフの股に向かった。
「今度は俺の番」
「え、セナもしてくれるの? 珍しい、嬉しいなぁ」
余裕が感じられるラーフだったが、ラーフのものは随分と腫れ上がっていて血管が浮いているほどだった。俺の手首程もあるそれにそっと口をつけて、先端をちゅうと吸う。同じ所を舐めて、立ち上がったものの裏の筋にも舌を這わせる。
「……っ」
ラーフが小さく声を漏らした。それが嬉しくて、俺は一生懸命に舌で舐めていく。そして、俺の唾液とラーフの先走りでべたべたになったものを、口の中に入れる。大き過ぎて顎が痛い。けれど、歯を立てないように必死になって口を開き、顔を前後させた。
頬の奥にラーフのものの先端がぶつかる。その状態で見上げれば、ラーフは嬉しそうでもあり、苦しげでもある顔をしていた。
「セナ……っ、出すよ……っ!!」
宣言の直後、口の中に大量の精液が放たれた。喉に直接叩きつけられて少し咽てしまう。俺のものなど比にならないほどの量だった。飲み干せば、それらは魔力として俺の体に入ってくる。濃度の高い、良質な魔力が入ってきて、体に活力が満ちてきた。
「ラーフの、濃いな」
「ずっとしてなかったしね」
「一人でもしなかったのか?」
「愛しい奥さんじゃなきゃ、俺は達けないよ」
ラーフは、俺以外とは絶対に寝ない。若い日の過ちを二度と繰り返さないと誓ってくれているからだ。悪しき慣習ではあるが、魔法使いの貴族にとって、非魔法使いというのは古来から性欲処理の道具であった。魔法使いと非魔法使いが交わっても子供が出来ないから、丁度良いのだ。
今でこそそういった慣習は薄らいでいるが、魔法使いの貴族たちにはそういった考えが無意識下に染みついている。だからこそ、ラーフも、軽い気持ちで過ちを犯した。あの時は許せないと憤慨したが、それからは誓い通り、俺以外とは肌を重ねないラーフの姿を見続けているので彼を責める気はもうない。
「出産のときに向けて、もっとセナに魔力をあげないとね」
出産というのは、この子の目覚めの時のことを指した。どのようなことが起こるかは分からないが、俺が魔力を備蓄しているに越したことはない。ラーフの言はもっともだった。だが。
「……ただ、ラーフがやりたいだけだろ」
「そうとも言うかも」
培養球を乳母車に乗せて外出しようとしたところを、ロキに見つかってしまった。こっそり抜け出すつもりだったのに、失敗してしまったようだ。慌てて駆け寄ってきたロキが、扉の前に立ち塞がって俺の進行を妨げる。
「ちょっと散歩に行こうと思っただけだよ」
「散歩なら庭でしてください」
「外を歩きたいんだ」
「ラーフに知られたら怒られますよ」
「怒られるから、ラーフがいない時に外出するんだ」
「しかしですね」
「この子にだって、外の景色を見せてやりたいし。……少しだけ、お願い」
結局は、折れてくれたのはロキだった。乳母車を押すことは、ロキが譲らなかったが、それでも散歩に行くことが出来た。外は空気が冷たく、厚手のコートを羽織る。培養球の中は密閉されており、胎児をとりまく環境が温度に左右されることはないが、それでも赤ちゃんは培養球ごと毛布で包んで、温める魔法も展開しておいた。
「セナ様、お子さん、そんなに大きくなったの?」
事情を知る近所の人たちがそんな風に声をかけてくれた。ユギラとフィルリア家が古より縁があるため、この町の人は俺のことをセナ様と呼んでくれる。だが、そんな風に呼ばれると少し面映ゆい気持ちになるのだ。
「はい。来週くらいには生まれる予定で」
「それはめでたい!」
「赤ちゃん、そのボールの中で窮屈そうですね」
「そうなんです。そろそろ、狭いなぁって言いながら出てくると思うんですけど」
俺が冗談めかしてそう言うと、その場にいた人々が笑った。確かに、赤ちゃんは培養球の大きさと同じくらいまで成長しており、寝返りすらうてない状態になっていた。
頑張ってくださいね、と皆が声を掛けてくれる。こんな、異様な出産を目の当たりにしても動じないほどに、この街の非魔法使いたちは魔法使いというものに慣れていた。
彼らと別れ、散歩が続く。ふいに、背後から車がやって来た。荒々しい音を立ててこちらへやってくる。あまり丁寧な運転ではないようだった。
「セナ様」
ロキに声を掛けられて、車から遠ざかるように動く。ロキは乳母車を安全な場所へ、ゆっくりと運んでいた。俺を守るのではなく、赤ちゃんを守る。それは正しい選択だった。
「この街が好きだけど、子供を育てるには車が多いよね」
「そうですね。それに、魔法使いの子供が育つにしては、あまりにも非魔法使い的な物に満ちていますしね」
「やっぱり、エリアス城に移る方が良いのかなぁ」
あの城も、一部、電気やガスなどを通し始めているが、この街よりは古式ゆかしい魔法使いの生活が送れる状態になっている。新しいものに触れるのも良いが、先人たちが守ってきた文化も引き継いでほしいと思うのだ。
「ラーフの仕事の迷惑になるかな」
「ラーフは、セナ様や若様に関わることを迷惑などとは思いませんよ」
ロキの言葉は、正しいと思う。ラーフは、きっとそんなことは思わない。俺や、この子のことをきっと第一に考えてくれる。数年前まではそれを申し訳なく思うこともあったが、今はそうは思わない。有難いと、素直に受け取ることが出来るようになった。
開けた場所に出て、車が来ていない事を確認し、乳母車に置いた培養球をそっと抱き上げる。培養球自体に、そこまでの質量はない。今俺が感じているのは、正真正銘この子の重さだった。ずっしりとしていて、もう一人前の赤ん坊だ。
「本当に、大きく重たくなったなぁ。こんなに大変なことを、女性はひとりでやってのけてしまうんだから、凄いよ」
「セナ様もご立派ですよ。誰も為し得なかったことを達成された」
「俺が一人で達成したわけじゃないよ。ずっとラーフに魔力を貰っていたし、培養球だって俺が作ったものでもない。色んな人の、色んな努力の集合体がこの子なんだよ」
ぎゅっと抱きしめる。培養球越しではなく、この子を抱きしめたかった。赤ちゃんというのは、どんな匂いがするのだろう。どんな肌触りなのだろう。この子の瞳の色は、何色なのだろう。どんな声で泣くのだろう。知りたいことが山ほどあった。心の底から、愛おしさが込み上げてくる。
「無事に生まれておいで。皆待ってるよ」
この目が見開かれ、この口が泣き声を上げるその瞬間を、今か今かと待っている。
帰宅したラーフのために夕食を作り、共に食器を洗う。その間、ずっと培養球には触れていないが、赤ちゃんは勝手に俺から魔力を吸収していた。触れなくとも魔力の受け渡しが出来るほどに、強く結ばれているということだった。そんな様子を見ていたラーフが、生命の神秘に感銘を受けて深く頷いた。
「本当に触れていなくても平気なんだね」
二人でベッドに向かい、抱きしめた培養球をベッド傍の一人掛けソファにそっと下ろした。そうしてやっと、一日が終わる。ラーフと共にベッドに入った。
「うん。欲しい時に自分で持って行くから、敢えて俺が培養球に触れて魔力を送る必要がないくらいだよ」
「そっか、なら……久しぶりに、俺がセナに触れても良い?」
そう言って、ラーフが俺に覆いかぶさってきた。唇が触れそうなほどに近い。一度、赤ちゃんに視線をやるといつも通り穏やかに目を瞑っている。目の前のラーフは、少し苦しそうに俺を見ていた。
「……いいよ」
赤ちゃんのことが大切だ。それと同じくらいにラーフのことだって大切だ。赤ちゃんの状態が落ち着いて、俺から離れていたとしても勝手に魔力を持って行くなら、ラーフと触れ合えない理由はない。
「魔力、たっぷりあげるからね」
そうやって耳元で囁かれ、体がびくりと跳ね上がる。低く心地よく響く声に、体が反応したのだ。そして、唇が重ねられる。酸素を奪うような、激しいキスだった。徐々にシャツのボタンが外されて、上体の前を全て晒す。
ラーフは、俺の胸に舌を這わせる。舌先で乳首をぐりぐりと押しつぶし、もう片方の乳首も指で摘まんでは手を離し、親指でそれをくりくりと回す。胸なんて、触られても何も感じなかったのに、今ではとても敏感な場所になってしまった。
ぐりぐり、くりくりと弄ばれて、胸の先端がぴんと立ち上がる。それにラーフは思い切り吸い付いて、強烈な快感を俺に与える。
「ア……ッ!! あっ、あ、やぁ、ぁん……っ」
胸の周りには、ラーフが思い切り吸い付いたことによって出来る赤い痕が無数に出来ていた。
「ラーフ……っ、そこばっかりっ、やだ」
「でも、セナ。お母さんになったら、赤ちゃんにおっぱいあげないと」
「俺は、おっぱいでないから……っ」
「そんなことないよ。ずっとここ舐めてると、すごい甘い味がしてくる」
「そんなのっ、ラーフだけ……っ、あぁっ!」
ラーフに胸の先端を甘噛みされて、背中を駆け抜ける強烈な快感に体が弓なりになる。俺のものはもうすでに立ち上がって、ラーフの手の中にあった。ラーフは緩く俺のものを掴んで上下するくせに、果てさせてはくれない。寸前で根本を強く握るのだ。
「ラーフ……っ、いきたいっ」
「俺よりもセナの方が溜まってたかもね」
胸がラーフの唾液でべたべただ。少しの風でも冷たく感じて、それすら刺激になってしまう。もう果てたい。そう願うと、ラーフは小さく笑って俺から離れた。俺の足の間に移動して、俺のものを口に含んだのだ。
「……ラーフ……っ!」
ラーフが俺のものを咥えることはしばしばあるのだが、俺は恥ずかしいのであまり好きではなかった。ラーフが俺のものを口に入れているという事実に、背徳感と羞恥心を抱くのだ。だが、こうなったラーフが途中でやめてくれた試しはない。力強く吸われ、腰が浮く。あまりの快楽に、大きな声で叫びながら絶頂を迎えた。
「たくさん出たね」
俺が出したものを飲み干しながら、ラーフがそんなことを言うものだから、恥ずかしくて堪らなくなる。身を起こして、今度は俺がラーフの股に向かった。
「今度は俺の番」
「え、セナもしてくれるの? 珍しい、嬉しいなぁ」
余裕が感じられるラーフだったが、ラーフのものは随分と腫れ上がっていて血管が浮いているほどだった。俺の手首程もあるそれにそっと口をつけて、先端をちゅうと吸う。同じ所を舐めて、立ち上がったものの裏の筋にも舌を這わせる。
「……っ」
ラーフが小さく声を漏らした。それが嬉しくて、俺は一生懸命に舌で舐めていく。そして、俺の唾液とラーフの先走りでべたべたになったものを、口の中に入れる。大き過ぎて顎が痛い。けれど、歯を立てないように必死になって口を開き、顔を前後させた。
頬の奥にラーフのものの先端がぶつかる。その状態で見上げれば、ラーフは嬉しそうでもあり、苦しげでもある顔をしていた。
「セナ……っ、出すよ……っ!!」
宣言の直後、口の中に大量の精液が放たれた。喉に直接叩きつけられて少し咽てしまう。俺のものなど比にならないほどの量だった。飲み干せば、それらは魔力として俺の体に入ってくる。濃度の高い、良質な魔力が入ってきて、体に活力が満ちてきた。
「ラーフの、濃いな」
「ずっとしてなかったしね」
「一人でもしなかったのか?」
「愛しい奥さんじゃなきゃ、俺は達けないよ」
ラーフは、俺以外とは絶対に寝ない。若い日の過ちを二度と繰り返さないと誓ってくれているからだ。悪しき慣習ではあるが、魔法使いの貴族にとって、非魔法使いというのは古来から性欲処理の道具であった。魔法使いと非魔法使いが交わっても子供が出来ないから、丁度良いのだ。
今でこそそういった慣習は薄らいでいるが、魔法使いの貴族たちにはそういった考えが無意識下に染みついている。だからこそ、ラーフも、軽い気持ちで過ちを犯した。あの時は許せないと憤慨したが、それからは誓い通り、俺以外とは肌を重ねないラーフの姿を見続けているので彼を責める気はもうない。
「出産のときに向けて、もっとセナに魔力をあげないとね」
出産というのは、この子の目覚めの時のことを指した。どのようなことが起こるかは分からないが、俺が魔力を備蓄しているに越したことはない。ラーフの言はもっともだった。だが。
「……ただ、ラーフがやりたいだけだろ」
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