下賜される王子

シオ

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◆ 第二章 異邦への旅路

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 腹を満たして、湯浴みをして。侍従たちの手で髪を丹念に拭いてもらっていた時から、私の体は我慢が利かなくなっていた。隣に座っていた清玖の手を握って、体の疼きに耐える。

 久しぶりに触れてもらえるのだという喜びが、体を狂わせていた。胸の先端は、服が擦れるだけでも感じてしまい、下半身にも熱が集中している。私の痴態に侍従たちも気付いているだろう。私のために、彼らも手早く済ませてくれている。

「宮様、全て終わりました。どうぞ、夫君殿とお過ごし下さいませ」

 最後に淡月がそう告げて、他の侍従たちを引き連れながら下がっていく。静かに戸が閉まる音を聞くその瞬間まで我慢することが出来た私を褒めて欲しい。

「清玖……っ」

 寝台のふちに腰を掛ける清玖に抱き着いて、彼の手を私の反り立つものに導いた。清玖の手に包まれ、優しく数度扱かれただけで、私のものは涎を垂らして喜びを表す。体を移動させ、寝台の上にあぐらをかいた清玖の逞しい太腿の上に私は乗った。

「どうしたんだ、吉乃。随分と積極的だな」
「だって……、ずっと、触って欲しかったから」
「俺だって、吉乃に触りたくてたまらなかったよ」

 襦袢の前を広げて、私の股に手を伸ばす清玖。私は邪魔な襦袢を脱ぎ去って、つんと立った胸の先端を清玖の口元に運ぶため、腰を上げる。両手は清玖の肩に乗せて、彼を引き寄せた。

「しんっ、胸……、胸、……して、ほしい」

 何を、とは言えなかった。舌先で舐めて欲しいなんて、胸の先端を甘噛みして苛めて欲しいなんて。恥ずかしくて、とても口に出来なかったのだ。でも、清玖は私の願いを分かっていた。

「あぁっ、あっ……、しんっ、しん、きもちぃ……っ」

 強く胸の先を吸って、舌先で乳首を押しつぶして、ぐりぐりと押し込む。その感覚全てが下半身に響き、反り立ったものからは先走りが垂れて出て行った。気持ち良過ぎて、頭の中が真っ白になる。足の指先には力がはいって、丸まっていた。

「しん、清玖の、触りたい」
「俺の、触ってくれるの?」
「うん……、さわっていい?」
「いいよ。好きなだけ触って」

 清玖が器用に、己の寝間着の間から清玖の陽物を取り出す。太くて、赤黒くて、立派なもの。これで、私の奥を擦って欲しい。そんな願いを抱きながら、両手でそれを扱いた。強く脈打っているのが掌を介して伝わってくる。

「しん、しん……っ」

 胸の先は、清玖の口によって交互に愛されていた。清玖の口が二つあれば、同時に舐めてもらえるのに、と愚かなことをぼんやりと考える。清玖のものを扱きながら、彼が出す先走りで両手が濡れていった。

「吉乃っ、……すまないっ」

 突然の清玖の謝罪。一体何なのだろうと思っていると、私の体は寝台に押し倒され、両足を広げられたかと思うと、腰を掴んで少しばかり持ち上げられる。それは、清玖が挿入しやすい高さだった。

「あっ、あっ、ああぁっ」

 硬くて太い物が、私の中に入ってくる。香油などなくても、私の体は容易く清玖を受け入れた。久々の交わりであったとしても、私の体は愛するひとの形を忘れていない。内側から勝手に濡れる姫宮の体であれば、易々と彼を己の中へ招き入れることが出来るのだ。

「しんっ、あっ、あんっ、しん、おくっ、おく、おくにっ、きて」
「吉乃っ、……っ、吉乃!」

 私の体の一番奥に、清玖が辿り着いた。充足感で、泣いてしまいそうだった。のけ反らせた喉からは、悲鳴が溢れる。強すぎる快感に翻弄される声だった。清玖の両肩を掴む手に力がこもる。彼の肩に爪を立てていないかが心配だった。

「もうだめっ、いく、しんっ、いっちゃう……っ」
「あぁ、吉乃っ、一緒に」

 最奥で、もっとも敏感な部分を清玖が突いた。瞬間、私のものからは精が飛び散る。清玖のものも、私の中に放たれた。二人の体が痙攣している。私は両腕を寝台の上に投げだしていた。指一本動かすことすら、億劫に感じる。

 清玖も私の上で荒い呼吸を繰り返す。両腕を寝台の上に立てて、その腕の間に私の体がある。見上げると、額に汗を浮かべた清玖が、獰猛な瞳で私を見ていた。欲しがられている。清玖に、求められている。それだけで、私の体は疼いてしまった。

 腰を動かし、清玖は私の中から出て行こうとする。私は慌てて、清玖の腕を掴んで引き留めた。清玖は私の求めに応じて、動きを止める。

「ぬかないで」

 清玖が私の中にいてくれるということが、とても嬉しい。お腹は苦しくて、呼吸もしづらいけれど、それでもこの充足感は清玖が私を抱いている時にしか味わえない。このままで、と願う私に清玖は少しだけ困ったように笑った。

「このままでも、いいのか?」
「いいよ」

 二つの体が一つになっている。幸せで嬉しくて、ついつい後ろの孔がきゅう、と清玖のものを抱きしめてしまった。その瞬間に、清玖が眉を顰める。少しばかり苦しそうな顔をしていた。

「吉乃、抜かないから……、体勢を変えても良いか?」

 ゆっくりと頷く。すると清玖の両手が私の頭と腰の下に入り、勢いよく清玖が寝台に座り込んだ。私の体も、寝台の上に寝そべっていた状態から、あぐらをかいた清玖の上に座り込む形になる。

「あぁっ」

 体勢を変えた衝撃で、ずくん、と深いところに清玖のものが当たった。頭の中がちかちかと光る。大きな声を上げながら、清玖に倒れ込む私を、逞しい両腕が抱き留めてくれた。

「すまない。大丈夫か、吉乃」
「……だいじょうぶ」

 この姿勢でいると、清玖の陽物が奥の奥まで届く。息苦しさは増すけれど、それ以上に気持ち良くて、幸せだった。強すぎる快楽に当てられて、頭が働かない私に追い打ちをかけるように、清玖は私の胸に舌と指で触れた。

 口で触れられていない方を、清玖の指先が弄ぶ。親指の腹で押しつぶしたり、弾いたり、摘まんだり。そうされるために、体中がびくびくと震えるのだ。精を吐き出したばかりではあるが、再び熱が集まっているのを感じる。

「あっ、やぁ、しん、まって」
「どうして? 胸、好きだろ?」
「すき、だけど……あっ」

 清玖は腰を上下に動かして、私の中に埋まったもので、さらに私を追い立てる。その上、胸まで翻弄されたのでは、もう訳が分からなくなるのだ。体の全てで清玖を感じている。多くの男に愛されてきたが、私をこれほどまでに翻弄するのは清玖だけだった。

「吉乃、これ、嫌?」
「わ、わかんな……っ、あっ」
「どうして分からないの?」
「だってっ、も、もう……っ、きもちぃ、しか、わかんないっ」

 そう叫んだ直後に、私の中の清玖が大きくなったような気がした。そして、両頬に手を添えられ、僅かに引き寄せられる。清玖が、私の唇を荒々しく貪った。まるで大型の獣に襲われているようだ。だが、それでも幸福を感じていた。

「……んっ、ぁ、はぁっ、……し、ん……っ」

 呼吸をする間すら与えられない。少し身を引けば、追いかけるように彼が間合いを詰める。そして、何度も角度を変えながら、彼は私の唇に噛みつくのだ。私も両腕を伸ばして、清玖の首元に抱き着く。そして引き寄せた。

「……しん、だいすき」
「う……っ」

 清玖の耳元でそう伝えると、清玖の体がびくりと震え私の中に埋まったままの彼の陽物から精が吐き出される。触れてもいないし、擦ってもいない。ただ私が告げた言葉だけで、清玖は果てたのだ。驚いてしまった私の前で、恥ずかしそうに清玖が俯く。

「……すまない」
「どうして謝るんだ。私の言葉が清玖を喜ばせたんだろう?」
「……あぁ、そうだ」
「それなら私も喜ばしく思う」

 俯いてしまった清玖の額に口付けを落として、そのおもてをあげさせる。触れることなく達してしまったことを恥じているようで、清玖の顔は羞恥で赤く染まっていた。そんなことを気にする必要はないのに。

 姫宮としての務めの中で、私が軽く触れただけで達してしまった者もいる。人それぞれだ。そう言って慰めようとも思ったが、夫婦が愛し合う寝台の上で、他の男の話題を出すのが野暮であることを私は分かっていた。口を閉ざす。

「一度抜こう」

 私の体を持ち上げて、ずっと埋まっていた清玖のものが私の体から出ていく。直後、栓を抜かれたことによって、私の中に注ぎ込まれた清玖の精が垂れ落ちてきた。それは寝台の上に池を作るほどだった。

「すごい量だ」
「……すまない」
「責めているわけじゃない。単純に驚いていたんだよ。私の中にたくさん放ってくれてありがとう」

 清玖は先ほどから謝ってばかりだ。そんな言葉を聞きたいわけではないという気持ちを込めて、感謝を伝えると、清玖は切羽詰まったような顔をして私から視線を逸らす。寝台の上に下ろされた私は、清玖によって横向きに寝かせられ、後ろの孔を彼の方に向ける姿勢となった。

「掻きだしても良いか?」

 任せる、と言えば清玖の指が私の中に入ってきた。中指だろうか。太くて、長い指だ。奥へと進んで、外へ出ていく。その繰り返し。途中、気持ちのいいところを指が掠めるので、私は嬌声をあげてしまった。

「……んっ、あっ、しん、そこばっかり……っ」

 孔の入り口にほど近い場所にあるしこりを、清玖が指で軽く叩くのだ。とん、とん、と刺激を与えられ頭が真っ白になっていく。奥を突かれるのも気持ちがいいけれど、そこを撫でられるのも思考が溶けてしまうほどに気持ちがいい。

「あっ、あぁ、し、しん……っ、あ、だめぇ」

 もはや、掻きだす行為もせずに、清玖は私のそこばかりを触れている。私のものも再び硬さを増して、それを清玖の手が包み込んだ。優しく、時に強く、上下に扱かれて快楽の奔流に飲み込まれていく。

「あぁっ、だめ、だめっ、あ、あっ、しん、そこばっかりっ、や、やぁっ、あぁっ」

 後ろと前。両方から追い立てられて、あっけなく私は果てた。後ろに入ったままの清玖の指を、指吸いをする赤子のようにきゅうきゅうとしめつけている。前のものを包む清玖の手は、私の吐き出した精で汚れていた。

「疲れた?」

 整わない呼吸のまま、寝台の上でぐったりとする私の顔を覗き込みながら、清玖が問いかけてくる。筋肉質で、無尽蔵の体力を有する清玖の陽物は、再び顔を擡げ始めていた。彼はまだ、私を求めてくれている。

「……まだ、足りない」

 私から強請った。もっと清玖が欲しいと、縋る。体を反転させ、清玖の方を見る。私の後ろの孔に入っていた清玖の指を掴んで舐めた。そこには、清玖の吐き出した精が付着していたのだ。

「清玖は? もう満足したのか?」

 その精を舐めとりながら、指を吸う。その行動が、清玖を煽るということは分かっていた。分かって、そうしたのだ。もっともっと求めて欲しい。貪欲に、獰猛に。二つの姿が一つに溶け入ってしまうまで、愛し合いたかったのだ。

 私の作戦は功を奏す。清玖はごくりと音を立てて唾を嚥下した。私の体を掴んで、仰向けにし、手首を掴んで寝台に縫い付けた。清玖に優しく求められるのも好きだけれど、荒々しく抱き潰されるのも好きなのだ。私の上で、清玖が野生に満ちた笑みを見せる。

「まさか。もっともっと、吉乃を味わいたい」


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