最愛はすぐ側に

なめめ

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スキャンダル王子

スキャンダル王子⑨

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案の定、律仁さんの顔から笑顔が消え、手元のボールペンを握った彼の手からパキッと折れる音がし、渉太は一瞬にして冷や汗をかく。

「おい、那月。俺のことはいいけど、渉太のこと悪く言うのは許さな……」
「律仁さん、ごめんさいっっ」

 律仁さんが感情的になってしまえば埒が明かないような気がして、渉太は慌てて通話を切った。普段は誰に対しても冷静で落ち着いた返しのできる彼だが、唯一の欠点は渉太のこととなると感情的になってしまうところであった。愛されていることは嬉しいことではあるが困ることも多々ある。

 律仁さんとの通話が切れても、後味の悪さから静まり返る。ここは自分が取り仕切って三人にも公言しないよう頼み込むしかないような気がした。三人を見据えて大きく喉元を揺らす。

「あの……。星杏さんとはお付き合いしてないことと彼女とは有名人同士の身内を持つものとして友達であるということは事実だよ。それと、俺が律仁さん……。浅倉律さんと交際関係にあるのも事実なんだ。マネージャーの吉澤さんも容認してくれている。君らに俺から頼むのも図々しいかもしれないけど……今後の活動のためにも、俺達のことはそっとしておいてくれたらって思う。那月くんは気に食わないかも知れないけど……。お願いします」

 渉太は深々と頭を下げて三人に懇願した。
律仁さんの事務所の後輩だから……とかではなくこの三人ならちゃんと話せば理解してくれるような気がしたからだ。

正直、吉澤さんが容認していても以前祝賀会で社長に別れを仄めかされた手前、自信はなかったが彼とは一生一緒に居たいと思う覚悟は持っている。

「俺としては大切な人がいようとも憧れの律先輩には変わりないし、誰かに話すつもりはないよ。なぁ、洸一」
「ええ、正直。いつも優しいのであんな怒っていた姿には驚きましたけど、律さんには沢山お世話になっているので……。僕たちも同じ立場ですし……交際相手くらいで騒ぐのは世間の人くらいかと」

嘘偽りのない真っ直ぐな瞳の岩崎と顎を抑えて深く頷く鳴海。両端の二人は理解してくれたようで渉太は少しだけ胸を撫で下ろした。問題は那月くんが納得してくれるかだけど……。

真ん中で頬杖をついて、不貞腐れている那月くんに渉太は「那月くんは……どうかな?」と恐る恐る問うてみる。

「いいよな。世間の目を気にしてでも一緒にいたいやつと傍にいるって。この世にいるだけマシだよ」

そう独りごちる那月の横顔は心做しか寂しそうだった。


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