52 / 190
スキャンダル王子
スキャンダル王子⑨
しおりを挟む
案の定、律仁さんの顔から笑顔が消え、手元のボールペンを握った彼の手からパキッと折れる音がし、渉太は一瞬にして冷や汗をかく。
「おい、那月。俺のことはいいけど、渉太のこと悪く言うのは許さな……」
「律仁さん、ごめんさいっっ」
律仁さんが感情的になってしまえば埒が明かないような気がして、渉太は慌てて通話を切った。普段は誰に対しても冷静で落ち着いた返しのできる彼だが、唯一の欠点は渉太のこととなると感情的になってしまうところであった。愛されていることは嬉しいことではあるが困ることも多々ある。
律仁さんとの通話が切れても、後味の悪さから静まり返る。ここは自分が取り仕切って三人にも公言しないよう頼み込むしかないような気がした。三人を見据えて大きく喉元を揺らす。
「あの……。星杏さんとはお付き合いしてないことと彼女とは有名人同士の身内を持つものとして友達であるということは事実だよ。それと、俺が律仁さん……。浅倉律さんと交際関係にあるのも事実なんだ。マネージャーの吉澤さんも容認してくれている。君らに俺から頼むのも図々しいかもしれないけど……今後の活動のためにも、俺達のことはそっとしておいてくれたらって思う。那月くんは気に食わないかも知れないけど……。お願いします」
渉太は深々と頭を下げて三人に懇願した。
律仁さんの事務所の後輩だから……とかではなくこの三人ならちゃんと話せば理解してくれるような気がしたからだ。
正直、吉澤さんが容認していても以前祝賀会で社長に別れを仄めかされた手前、自信はなかったが彼とは一生一緒に居たいと思う覚悟は持っている。
「俺としては大切な人がいようとも憧れの律先輩には変わりないし、誰かに話すつもりはないよ。なぁ、洸一」
「ええ、正直。いつも優しいのであんな怒っていた姿には驚きましたけど、律さんには沢山お世話になっているので……。僕たちも同じ立場ですし……交際相手くらいで騒ぐのは世間の人くらいかと」
嘘偽りのない真っ直ぐな瞳の岩崎と顎を抑えて深く頷く鳴海。両端の二人は理解してくれたようで渉太は少しだけ胸を撫で下ろした。問題は那月くんが納得してくれるかだけど……。
真ん中で頬杖をついて、不貞腐れている那月くんに渉太は「那月くんは……どうかな?」と恐る恐る問うてみる。
「いいよな。世間の目を気にしてでも一緒にいたいやつと傍にいるって。この世にいるだけマシだよ」
そう独りごちる那月の横顔は心做しか寂しそうだった。
「おい、那月。俺のことはいいけど、渉太のこと悪く言うのは許さな……」
「律仁さん、ごめんさいっっ」
律仁さんが感情的になってしまえば埒が明かないような気がして、渉太は慌てて通話を切った。普段は誰に対しても冷静で落ち着いた返しのできる彼だが、唯一の欠点は渉太のこととなると感情的になってしまうところであった。愛されていることは嬉しいことではあるが困ることも多々ある。
律仁さんとの通話が切れても、後味の悪さから静まり返る。ここは自分が取り仕切って三人にも公言しないよう頼み込むしかないような気がした。三人を見据えて大きく喉元を揺らす。
「あの……。星杏さんとはお付き合いしてないことと彼女とは有名人同士の身内を持つものとして友達であるということは事実だよ。それと、俺が律仁さん……。浅倉律さんと交際関係にあるのも事実なんだ。マネージャーの吉澤さんも容認してくれている。君らに俺から頼むのも図々しいかもしれないけど……今後の活動のためにも、俺達のことはそっとしておいてくれたらって思う。那月くんは気に食わないかも知れないけど……。お願いします」
渉太は深々と頭を下げて三人に懇願した。
律仁さんの事務所の後輩だから……とかではなくこの三人ならちゃんと話せば理解してくれるような気がしたからだ。
正直、吉澤さんが容認していても以前祝賀会で社長に別れを仄めかされた手前、自信はなかったが彼とは一生一緒に居たいと思う覚悟は持っている。
「俺としては大切な人がいようとも憧れの律先輩には変わりないし、誰かに話すつもりはないよ。なぁ、洸一」
「ええ、正直。いつも優しいのであんな怒っていた姿には驚きましたけど、律さんには沢山お世話になっているので……。僕たちも同じ立場ですし……交際相手くらいで騒ぐのは世間の人くらいかと」
嘘偽りのない真っ直ぐな瞳の岩崎と顎を抑えて深く頷く鳴海。両端の二人は理解してくれたようで渉太は少しだけ胸を撫で下ろした。問題は那月くんが納得してくれるかだけど……。
真ん中で頬杖をついて、不貞腐れている那月くんに渉太は「那月くんは……どうかな?」と恐る恐る問うてみる。
「いいよな。世間の目を気にしてでも一緒にいたいやつと傍にいるって。この世にいるだけマシだよ」
そう独りごちる那月の横顔は心做しか寂しそうだった。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
【完結】君の手が、入道雲を彫る
江夏みどり
BL
【完結】
彫刻をやめた高校生の天才彫刻家・時原夏樹(ときはらなつき)は転校先の同級生・須縄霜矢(すのそうや)に片想いしてしまう。
北海道雪まつりに出展することを夢見る霜矢は、夏樹を強引に「美術部・雪像班」に入部させ、雪像づくりに巻き込んでいく。
過去のトラウマから人の手に触れることが苦手な夏樹。ある日霜矢が「人の手に触れる練習」と称して夏樹の手に触れてきて……?
天才肌のトラウマ持ち彫刻家×天真爛漫な夢見る男子高校生の、じれきゅんBL!
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
和を以て貴しと為す
雨宿り
BL
"山奥に閉ざされた男子校"に入学した平凡な高校生の蓮水和は、周囲の異質さと距離を保ちながらもそれなりの日々を送っていた。
しかし、ひとつの事件に巻き込まれたことを境にその環境は一変する。
問題児の"転校生"と同室になり、クラスの"学級委員"に世話を焼かれ、"生徒会役員"と関わりができ、挙句"風紀委員"に目をつけられてしまう。
乗り越えたい過去と、目まぐるしい今に向き合いながら、和は様々な愛情を向けられるようになり...?
・
非王道学園を目指しながらも、数多の美形たちに振り回されたり振り回したりするひとりの平凡によってお送りするぐちゃぐちゃとした群像劇をお楽しみいただけたらな、という感じのお話。
長くなる予定ですがのんびり更新して行きますので、気に入って頂けたら嬉しいです。
初投稿の為、なにか不備がありましたら申し訳ございません。
2026.01.15▶9話を更新。気がついたら3ヶ月も止まっていて大反省。寒中お見舞い申し上げます。続きもまだプロット未満みたいな状態ですが、2章までは駆け抜けたいです。
リンドグレーン大佐の提案
高菜あやめ
BL
軍事国家ロイシュベルタの下級士官テオドアは、軍司令部のカリスマ軍師リンドグレーン大佐から持ちかけられた『ある提案』に応じ、一晩その身をゆだねる。
一夜限りの関係かと思いきや、大佐はそれ以降も執拗に彼に構い続け、次第に独占欲をあらわにしていく。
叩き上げの下士官と、支配欲を隠さない上官。上下関係から始まる、甘くて苛烈な攻防戦。
【支配系美形攻×出世欲強めな流され系受】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる