87 / 190
最愛だから……
最愛だから……②
しおりを挟む
「退院したら、渉太の両親にちゃんと挨拶しに行きたいなー……。お母さんには話せたけど、ちゃんと改めて挨拶はできてないから、彼氏としてちゃんとね?」
自分は表情を崩さずに、彼の言葉に返事ができているか自信はなかった。右手を絡ませて握られる手にドキドキするのに比例して、辛辣さが増す。
律仁さんがベッドの真横にあった丸椅子に腰を掛けても尚、離されない右手。傍から見たら唯のカップルのイチャイチャに過ぎない
のに、渉太の心はこの幸せに浸れるような、余裕はなかった。
「その前に、渉太に大事な話があるんだ。怒らないで聞いてくれる?」
「何ですか……?」
更に右手に力が込められると手の甲が律仁さんの左手に包まれた。祈るように彼の額に近づけられて、瞳を揺らしながら此方を見てくる。
これから彼が話そうとしていることが、粗方予想がついている渉太にとって、彼の行動は狡く思えた。
まるで渉太に自分の決断を肯定してほしいと訴えているようで……。
「渉太……。渉太が退院して大学卒業したらさ、一緒に海外に住まない?」
「どうしてですか……?その話は、記念日の時にしたじゃないですか?俺は律仁さんと海外には行けないって……」
彼が言おうとしていることは分かっていたが、彼から理由を話してくれるまで知らないフリをする。
じゃないと自分が冷静で居られないような気がしたからだ。
「そうなんだけどさ……。俺……、芸能界辞めようと思うんだ」
いつか律仁さんの口から聞かなければならなかったこと。社長さんが来てから、何度も頭の中でシュミレーションした。彼の情に流されてしまわないように。
渉太は小さく呼吸を整えると律仁さんを見据える。
「それは律仁さんに他にやりたいことができたからですか?それとも俺のせいですか?俺がこんな目にあったからですか?」
「そうじゃなくて……。渉太、もしかして全部知ってる?」
至って冷静に返答したことで、全てを悟っていることを気づかれたのか、律仁さんが瞠目しながら問うてくる。
「はい。数日前、社長さんが直接来て話してくれました。今、世間で起こっていることも、律仁さんが辞めようとしている理由も全部です」
律仁さんは額に当てた手を下ろすと、「そっか……。ごめん」と呟いた。
自分は表情を崩さずに、彼の言葉に返事ができているか自信はなかった。右手を絡ませて握られる手にドキドキするのに比例して、辛辣さが増す。
律仁さんがベッドの真横にあった丸椅子に腰を掛けても尚、離されない右手。傍から見たら唯のカップルのイチャイチャに過ぎない
のに、渉太の心はこの幸せに浸れるような、余裕はなかった。
「その前に、渉太に大事な話があるんだ。怒らないで聞いてくれる?」
「何ですか……?」
更に右手に力が込められると手の甲が律仁さんの左手に包まれた。祈るように彼の額に近づけられて、瞳を揺らしながら此方を見てくる。
これから彼が話そうとしていることが、粗方予想がついている渉太にとって、彼の行動は狡く思えた。
まるで渉太に自分の決断を肯定してほしいと訴えているようで……。
「渉太……。渉太が退院して大学卒業したらさ、一緒に海外に住まない?」
「どうしてですか……?その話は、記念日の時にしたじゃないですか?俺は律仁さんと海外には行けないって……」
彼が言おうとしていることは分かっていたが、彼から理由を話してくれるまで知らないフリをする。
じゃないと自分が冷静で居られないような気がしたからだ。
「そうなんだけどさ……。俺……、芸能界辞めようと思うんだ」
いつか律仁さんの口から聞かなければならなかったこと。社長さんが来てから、何度も頭の中でシュミレーションした。彼の情に流されてしまわないように。
渉太は小さく呼吸を整えると律仁さんを見据える。
「それは律仁さんに他にやりたいことができたからですか?それとも俺のせいですか?俺がこんな目にあったからですか?」
「そうじゃなくて……。渉太、もしかして全部知ってる?」
至って冷静に返答したことで、全てを悟っていることを気づかれたのか、律仁さんが瞠目しながら問うてくる。
「はい。数日前、社長さんが直接来て話してくれました。今、世間で起こっていることも、律仁さんが辞めようとしている理由も全部です」
律仁さんは額に当てた手を下ろすと、「そっか……。ごめん」と呟いた。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】君の手が、入道雲を彫る
江夏みどり
BL
【完結】
彫刻をやめた高校生の天才彫刻家・時原夏樹(ときはらなつき)は転校先の同級生・須縄霜矢(すのそうや)に片想いしてしまう。
北海道雪まつりに出展することを夢見る霜矢は、夏樹を強引に「美術部・雪像班」に入部させ、雪像づくりに巻き込んでいく。
過去のトラウマから人の手に触れることが苦手な夏樹。ある日霜矢が「人の手に触れる練習」と称して夏樹の手に触れてきて……?
天才肌のトラウマ持ち彫刻家×天真爛漫な夢見る男子高校生の、じれきゅんBL!
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
無口な愛情
結衣可
BL
『兄の親友』のスピンオフ。
葛城律は、部下からも信頼される責任感の強い兄貴肌の存在。ただ、人に甘えることが苦手。
そんな律の前に現れたのが、同年代の部下・桐生隼人。
大柄で無口、感情をあまり表に出さないが、実は誰よりも誠実で優しい男だった。
最初はただの同僚として接していた二人。
しかし、律が「寂しくて眠れない」と漏らした夜、隼人が迷わず会いに来たことで関係は大きく動き出す。
無口で不器用ながらも行動で示してくれる隼人に、律は次第に素直な弱さを見せるようになり、
日常の中に溶け込むささやかな出来事が、二人の絆を少しずつ深めていく。
今日は少し、遠回りして帰ろう【完】
新羽梅衣
BL
「どうしようもない」
そんな言葉がお似合いの、この感情。
捨ててしまいたいと何度も思って、
結局それができずに、
大事にだいじにしまいこんでいる。
だからどうかせめて、バレないで。
君さえも、気づかないでいてほしい。
・
・
真面目で先生からも頼りにされている枢木一織は、学校一の問題児・三枝頼と同じクラスになる。正反対すぎて関わることなんてないと思っていた一織だったが、何かにつけて頼は一織のことを構ってきて……。
愛が重たい美形×少しひねくれ者のクラス委員長、青春ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる