それでも好きな人

なめめ

文字の大きさ
7 / 30
触れられない心

2

ジャケットをハンガーに掛けてソファに座る彼。煙草を咥える厚みのある唇に吸い付くことができるのであれば……と考えれば考えるほど、全身の血が巡って体中が熱くなる。

「まぁいいや、先にシャワー浴びていいよ。俺は時間かかるから」

 そんな彼に見惚れて欲情していると、彼からシャワーを促されたので、徹史は我に返り、慌ててその場でお辞儀をしては、部屋の右手にあるシャワー室へと逃げ込んだ。

 同性同士は異性相手と手順が同じなのだろうか。 

千坂曰く、お尻の穴がどうのとか言っていたけど具体的なところまでは分からない。

でも、理人さんは全て知っていて慣れているのだろう。

だからと言って相手に任せきりのままではいかないだろうし、漸く彼に近づくことができたのに下手だからと幻滅されたくなかった。

 浴室を出てからのことを考えながらシャワーを浴びては、ホテルの備え付けのバスローブを羽織る。深呼吸をしてから扉を開けて、部屋に戻ると入れ違いで理人さんが浴室へと入って行った。

 理人さんがシャワーを浴びている間、徹史は落ち着いていられるはずもなく、ソファとベッドを行き来する。

ソファに居て出迎えるべきか、直ぐに始められるようにベッドで待機しているべきか。

後者だと明らかにやる気満々のような気がして彼に引かれてしまわないか心配だった。

悩んだ末に、露骨にベッドの上に乗って待つのではなく、ベッドの縁に腰を掛けて待っていることにした。

 暫くして理人さんがバスローブ姿で出てくると、此方へ近づいてきたかと思えば、躊躇なく徹史の膝の上に跨ってきたので狼狽える。

「まっ……。理人さん⁉」
「回りくどいのとか嫌いだから、さっさとヤろうぜ」

 咄嗟に彼が落ちないように腰を支えた右手が震える。

上から見下ろして悪戯に笑みを浮かべてくる彼に胸を弾ませながら、これから誘われるのであろう快感に興奮が止まらない。

「んっ……」

 徹史の性的スイッチを目覚めさせるような彼からのキス。

初めての彼の唇の感触。何度か触れるようなキスを繰り返したことによって、緊張が欲望へと変わるまで時間がかからなかった。

 もっとこの人の奥に触れたい……。

「んっっ……」

 徹史は無我夢中で理人さんの唇を割ると、中で舌先が触れ合った。

お互いの舌先をすり合わせるようなキスは心地よかったが、やはり理人さんはキス一つにおいても自分よりも何枚も上手で、次第に彼のペースにのまれていく。

 リードすると言うより、彼に追いつくのに必死で、どうにか主導を得ようと舌先で葛藤を繰り広げていると、唇が離された。

「君さ、もしかして初めて?」

 眉間に皺を寄せた表情に自分は理人さんの嫌なやり方をしていたのではないかと不安になる。

「えっと……。同性は初めてです……」

 理人さんと出会ったお店は同性が恋愛対象である人が集う場所。

そんな場所に、異性愛の自分が行くこと自体が場違いだし、冷やかしに来ていたと思われかねない。

しかし、他に誤魔化しようもなく、正直に話すしかなかった。 
 
 今までは異性しか恋愛対象ではなかった自分でも、目の前の人を抱きたいと思っていることには変りないのだから……。

「へぇー?あんたノンケか。あんなところにノンケが来ることもあるんだな」

 理人さんは眉間に皺を寄せるのを止めると、したり顔で徹史の左頬に右手を添えてきた。理人さんが触れてきた指先から体中に熱が帯びていく。

「どういう経由でこっちに来たか知らないけど、女より俺の方が百倍気持ちいって思わせてやるよ」

 頬から顎先へと指先で撫でられて、背中からゾクゾクっと欲が競り上がってきた。

高揚する気持ちも抑えながら、彼のバスローブの紐を解いてやると、布地を脱ぎ去った体はとても綺麗だった。

 女体のような柔らかさは感じないが、胸元の丸くて小さい突起が可愛らしく見えて、吸い寄せられるように口をつけて啄む。

「んっ……。あっ、あっ」

 理人さんの色っぽい声に興奮して徹史の悪戯な手は彼の体中に触れていた。

突起を吸って、甘噛みをして、舌でころがしている間、感じながらも徹史のバスローブの紐を解く余裕を見せてきていることに驚かされていると、彼に肩を軽く押されてベッドへと押し倒されてしまった。

「う、理人さん⁉」

 馬乗りになった理人さんの身体は徐々に下肢の方へと下りていくと、下着を脱がされ、既に滾っていた芯が彼の口内へと沈みこんでいった。

 驚きのあまり腰を浮かせたが、直ぐに腿を押さえつけられてしまう。

彼女がいたときは口淫なんてさせていなかった。女性に男のモノを咥えさせるのは気が引けたし、彼女が気持ちよくなれればそれで良かった。

茂みに隠れた根元から舌が這う感覚に、一気に熱が先端の方へと集中する。

 理人さんの唾液と自身の先走った雫が合わさって、徹史の脳内が目と感覚で刺激された。

 しばらく咥えながら流し目で見てくる妖艶な瞳にうっとりしていると、彼が上体を起こして腰に跨ってきた。

潤滑剤を掌に取ると、自らの後孔に塗り付け、指先を入れて軽く解した後、そのまま滾った徹史のモノに目がけて腰を下ろそうとしてくる。

「まっ……。まって⁉ご、ゴム……」

 徹史は慌てて腰を引かせては、挿入を阻止すると慌ててヘッドボードにあったコンドームの袋を取り出した。

「あ?病気は持ってないから安心しろよ」

 別に理人さんを疑っているわけじゃない。ひとめ惚れをした男と言葉を交わして数時間しか経っていないのに、肌を重ねられたことは喜ばしいことではあったが、行為の所作はちゃんと心得ておきたかった。

どんなに無知だったとしても、同性間で挿入がある場合は、つけなければいけないことぐらいは知識としてある。

これから恋人になる人なのだから大事にする意味を込めてちゃんとしておきたい。

「そういうことじゃなくて、初めてはちゃんとしたくて……」

 決心する思いで打ち明けたが、理人さんは明らかに不機嫌そうに顔を歪めると舌打ちをした。

「どこの童貞が言ってんだよ。まぁ、いいや。それでトラウマになられても面倒だし。貸せよ、俺がつけてやるよ」
「ありがとうございます……」

 深く溜息を吐きながらも、理人さんは徹史が手にしていたゴムを奪い取ってくると、慣れた手つきで袋を開けて、腹部を沿うほどに反り立たせたソレに装着してきた。

あっという間に熱く刺激を求める先端を襞がのみこんでいく。

彼の身体の上下運動に合わせて喘ぐ声と昂った先端から零れる雫が美しい。

 やっぱりこの人のことが好きだ……。
 この人と恋人として一生一緒にいたい……。
 今度は失敗したくない……。

 理人さんが腰を揺らす度に中が締め付けられて、徹史は直ぐに射精感が押し寄せてくると彼の中で果ててしまった。


感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

没落令息はクラスメイトの執着に救われる

夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのユリシーズが引き留める。 「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。 ユリシーズの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。 ※FANBOXからの転載です。 ※他サイトにも投稿しています。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。