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苦い恋心の記憶(楷said)
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中学のときの部活の後輩。
当時から自身の性自認が同性であることを自覚していた櫂は部活の同級生と密かに交際し、静まり返った部室で度々情事に及んでいた。
もちろん遊びのつもりで。
そんなある日、慎文に行為を見られたのをきっかけに奴との関係が始まった。
慎文は部の中でもイケメンの類であったが、見た目に反して輪の中心にいる人間というよりかは、大人しく周りに混ざっているタイプだった。
元々、真面目だけど押しに弱そうなタイプだと踏んでいたが、案の定櫂と同級生の行為を見ていたことを揺すって脅しては、口止めとして強引にコトに及んでやれば、直ぐに折れてくれた。
何も知らない慎文との相性は想像以上に良くて、櫂自身が慎文の身体にはまっていくのは時間がかからなかった。
回数を重ねる度にただ単純に欲を満たすだけではなく、慎文自身の恋愛事情の相談も受けるようになっていた。
それは事後の慎文が毎回浮かない表情をしているのが気になったからであった。
奴には好きな人が居て、それも同性の幼馴染だと話していた。向こうは唯のノンケで慎文は半ば諦めている恋だと話してくれていた。
「なんで好きなのに告白しねーんだよ」
いつものように誰もいない部室で行為を終えた後、衣類を直しながら慎文に問いかける。
慎文は早々に制服のズボンを直しては背もたれの無い青いベンチに足を乗せて体育座りをしていた。
身長は櫂より高くて図体も大きいくせにベンチに収まろうと身を縮こませている姿が妙に面白くもあり、可愛さもあった。
「カズくんに嫌われるのが嫌だから……。でも、俺がこんなことしてるって知ったら余計に嫌われるよね……」
膝に顔を埋めてこの世の終わりのような声で呟く。
カズくんとは慎文の想い人の呼び名であった。
「じゃあ止めるか?止めたらお前としていること赤裸々にカズくんに話してもいいんだけど?」
「嫌だ。先輩はずるいよ……」
目隠しをしながらではあるが、櫂の促すままに行為に乗ってくれるものの、奴自身の本心では後ろめたさを感じていることが胸糞悪い。
それが面白くなくて櫂はわざと意地悪くそう提案すると、慎文は青ざめた表情で首を大きく左右に振っていた。
「分かった。お前がカズくんとやらと成就したらやめてやるよ」
あまりにも意気消沈している姿を見て、気に病まれても後々面倒なことになりかねないと悟った櫂は、僅かな親切心で助言してやったが慎文は「それはないよ……」と浮かない表情のままであった。
「全くないわけじゃないだろ。お前、正直キスも上手くなってきたし、寝返る可能性だってあるだろ」
ノンケが寝返ることなんて奇跡でも起こらない限り無いに等しいことは分かっていたが、奴の一途さに惹かれつつあった櫂は慰めるつもりで頭を軽く撫でてやった。
すると慎文は「あるかな……。だといいな……。櫂先輩。俺、カズくんと付き合えたら、丘公園でデートしたいんだ……。海見ながらキスとかもしたい」と頬を僅かに赤らめながら呟く。櫂はそんな慎文の純真さに胸がギュッと締め付けられていた。
海辺でキスなんて自分の経験でしたことあっただろうか。
あったかもしれないが慎文の考えているようなロマンチックなものではなかった気がする。どうでもいい相手とノリでキスをしてそのままコトに及んだ。
自分にはそんな思いでしかないし、傍から好きな相手と心を通じ合わせられるなんて思ってなんかいない。
櫂は希望を持つような関係ではないと分かっていても、慎文がカズくんの話をするたびに息が苦しくなる感覚を覚えていた。
いつの間にか割り切った関係から揺らいでしまった自分の心が決定的になってしまったのは、慎文がカズくんにキスを迫り避けられた話を聞いた時だった。
彼の想いは結局、届かずに終わった。慎文がカズくんに振られたことで安堵した櫂は、期待が芽生え始める。
次第に、想い合えない相手を想うより目の前の自分を見て欲しいなんて思うようになっていた。
しかし、櫂が想ったところで慎文が想っているのはカズくんだけ。どんなにカズくんに冷たくあしらわれて嫌われて、辛い思いをしたとしても慎文の気持ちは自分に向いてくれることはなかった。
それでも体の関係を止めてしまえば慎文は自分には決して興味を向けることはないと分かっていた櫂は、関係を繋ぎ止めるためにも幼馴染の事で寂しい思いをしている奴を利用して誘うことを続けた。
しかし、行為中に呼ばれる名前と事後に相談される話は全て「カズくん」のことばかりで、慎文はいい意味でも悪い意味でも一途だということを思い知らされた。
だから自分から「お前のことが好きだ」なんて言い出すことなどできなかった。玉砕して自分が傷つくのが怖かったからだ。
中学校卒業間近、そんな好きになった人に想われていない辛さを抱きながら抱かれる関係を自分は続けられなかった。だから卒業と同時に自然消滅させようと連絡も取らなかったし、向こうも予想通り音沙汰無しになった。
その時に一人のやつに深入りするもんじゃないと思い知らされた。
忘れようと心の奥底に封印していた想い。心の奥底に閉まって一生開かずにいる筈だったのに今頃再会なんて、皮肉だ。月日が経った今、幼馴染と想い合えたかもしれないし、そうじゃなくても別とやつと付き合っているかもしれない。
そんなアイツを見て自分は耐えられるだろうか。
だけど可能性はまだあって、もしフリーだったら·····。そんなことを考えちゃいけない·····。
櫂はシャワーのお湯を顔に当てては両手で覆い、水滴を拭うように顔を擦った。
バスローブを着てシャワールームから出ると栗山は下着一枚でベッドに寝転がっていた。
腹這いになって熱心に何かを眺めている。気になって身体を傾けて覗いてみると、テーブルに置きっぱなしにしていた櫂のタブレットを弄っているようだった。
当時から自身の性自認が同性であることを自覚していた櫂は部活の同級生と密かに交際し、静まり返った部室で度々情事に及んでいた。
もちろん遊びのつもりで。
そんなある日、慎文に行為を見られたのをきっかけに奴との関係が始まった。
慎文は部の中でもイケメンの類であったが、見た目に反して輪の中心にいる人間というよりかは、大人しく周りに混ざっているタイプだった。
元々、真面目だけど押しに弱そうなタイプだと踏んでいたが、案の定櫂と同級生の行為を見ていたことを揺すって脅しては、口止めとして強引にコトに及んでやれば、直ぐに折れてくれた。
何も知らない慎文との相性は想像以上に良くて、櫂自身が慎文の身体にはまっていくのは時間がかからなかった。
回数を重ねる度にただ単純に欲を満たすだけではなく、慎文自身の恋愛事情の相談も受けるようになっていた。
それは事後の慎文が毎回浮かない表情をしているのが気になったからであった。
奴には好きな人が居て、それも同性の幼馴染だと話していた。向こうは唯のノンケで慎文は半ば諦めている恋だと話してくれていた。
「なんで好きなのに告白しねーんだよ」
いつものように誰もいない部室で行為を終えた後、衣類を直しながら慎文に問いかける。
慎文は早々に制服のズボンを直しては背もたれの無い青いベンチに足を乗せて体育座りをしていた。
身長は櫂より高くて図体も大きいくせにベンチに収まろうと身を縮こませている姿が妙に面白くもあり、可愛さもあった。
「カズくんに嫌われるのが嫌だから……。でも、俺がこんなことしてるって知ったら余計に嫌われるよね……」
膝に顔を埋めてこの世の終わりのような声で呟く。
カズくんとは慎文の想い人の呼び名であった。
「じゃあ止めるか?止めたらお前としていること赤裸々にカズくんに話してもいいんだけど?」
「嫌だ。先輩はずるいよ……」
目隠しをしながらではあるが、櫂の促すままに行為に乗ってくれるものの、奴自身の本心では後ろめたさを感じていることが胸糞悪い。
それが面白くなくて櫂はわざと意地悪くそう提案すると、慎文は青ざめた表情で首を大きく左右に振っていた。
「分かった。お前がカズくんとやらと成就したらやめてやるよ」
あまりにも意気消沈している姿を見て、気に病まれても後々面倒なことになりかねないと悟った櫂は、僅かな親切心で助言してやったが慎文は「それはないよ……」と浮かない表情のままであった。
「全くないわけじゃないだろ。お前、正直キスも上手くなってきたし、寝返る可能性だってあるだろ」
ノンケが寝返ることなんて奇跡でも起こらない限り無いに等しいことは分かっていたが、奴の一途さに惹かれつつあった櫂は慰めるつもりで頭を軽く撫でてやった。
すると慎文は「あるかな……。だといいな……。櫂先輩。俺、カズくんと付き合えたら、丘公園でデートしたいんだ……。海見ながらキスとかもしたい」と頬を僅かに赤らめながら呟く。櫂はそんな慎文の純真さに胸がギュッと締め付けられていた。
海辺でキスなんて自分の経験でしたことあっただろうか。
あったかもしれないが慎文の考えているようなロマンチックなものではなかった気がする。どうでもいい相手とノリでキスをしてそのままコトに及んだ。
自分にはそんな思いでしかないし、傍から好きな相手と心を通じ合わせられるなんて思ってなんかいない。
櫂は希望を持つような関係ではないと分かっていても、慎文がカズくんの話をするたびに息が苦しくなる感覚を覚えていた。
いつの間にか割り切った関係から揺らいでしまった自分の心が決定的になってしまったのは、慎文がカズくんにキスを迫り避けられた話を聞いた時だった。
彼の想いは結局、届かずに終わった。慎文がカズくんに振られたことで安堵した櫂は、期待が芽生え始める。
次第に、想い合えない相手を想うより目の前の自分を見て欲しいなんて思うようになっていた。
しかし、櫂が想ったところで慎文が想っているのはカズくんだけ。どんなにカズくんに冷たくあしらわれて嫌われて、辛い思いをしたとしても慎文の気持ちは自分に向いてくれることはなかった。
それでも体の関係を止めてしまえば慎文は自分には決して興味を向けることはないと分かっていた櫂は、関係を繋ぎ止めるためにも幼馴染の事で寂しい思いをしている奴を利用して誘うことを続けた。
しかし、行為中に呼ばれる名前と事後に相談される話は全て「カズくん」のことばかりで、慎文はいい意味でも悪い意味でも一途だということを思い知らされた。
だから自分から「お前のことが好きだ」なんて言い出すことなどできなかった。玉砕して自分が傷つくのが怖かったからだ。
中学校卒業間近、そんな好きになった人に想われていない辛さを抱きながら抱かれる関係を自分は続けられなかった。だから卒業と同時に自然消滅させようと連絡も取らなかったし、向こうも予想通り音沙汰無しになった。
その時に一人のやつに深入りするもんじゃないと思い知らされた。
忘れようと心の奥底に封印していた想い。心の奥底に閉まって一生開かずにいる筈だったのに今頃再会なんて、皮肉だ。月日が経った今、幼馴染と想い合えたかもしれないし、そうじゃなくても別とやつと付き合っているかもしれない。
そんなアイツを見て自分は耐えられるだろうか。
だけど可能性はまだあって、もしフリーだったら·····。そんなことを考えちゃいけない·····。
櫂はシャワーのお湯を顔に当てては両手で覆い、水滴を拭うように顔を擦った。
バスローブを着てシャワールームから出ると栗山は下着一枚でベッドに寝転がっていた。
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