それでも好きな人

なめめ

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痛みの慰め合い



結局年明け早々にある催事に向けてのミーティングがあり、日中は出勤になってしまった。

とはいえ、仕事になろうがならまいが、特に予定なんてない。むしろ、仕事をしていた方が余計なことを考える時間が減って好都合だった。

 そして、夜はいつものバーのクリスマスイベントに顔を出してどんちゃん騒ぎしている中、相手探しをしてその場限りの人肌の恋しさを慰め合う。


 何も無ければそのつもりでいたが、そこには栗山が自分を待っていると分かると、とてもじゃ無いが行く気にはなれなかった。 

奴は本当に待っているのだろうか……。

 何も思っていないのなら気にする必要などないのに栗山のことが気になってしまう。

 仕事を終えて帰宅したものの、家でじっとしていられず、着替えてから繁華街へと向かうと気づけばお馴染みのバーがあるビルに辿り着いていた。

 奴とやり直すか、やり直さないかは別としてアイツが居るか居ないか確かめるだけ。

 ビルの上階へ繋がる階段を上り、お店のある階層へと到着する。 
扉の前で立ち止まると深く深呼吸をした。

 緊張しながら扉を引くと見慣れた薄暗い店内のカウンターには奴の姿はなかった。

「まーくん。久しぶりじゃない。メリークリスマス」
 
 そのまま引き返すわけも行かず、カウンター席に黙って座ると、サンタ帽を被った和美が迎えてくれた。お洒落な刈り上げに流した前髪。筋肉を強調するかのような体のラインが出るⅤネックのシャツ。

 誰が見ても此方の界隈だと分かる店主に櫂自身、大分お世話になっていた。

 店主とは二十代前半の時から通っていたせいか、自然と名前を覚えられ、それなりに世間話をする仲にはなっていた。もちろん櫂が恋人を作らないことも知っている。

 若い頃は身体目的の相手を探すためだけに訪れていた櫂も、和美のおかげで御酒だけ嗜んで帰ることは多々あった。しかし、久しぶりと聞いて、栗山という相手を見つけてから他の奴を漁るために店に来ることは減っていたことに気づかされる。

「誰か本命でもできたのかしらって、騒いでたのよ」
「俺が本命なんて作らないこと知っているだろ」
「どうかしら?あのイケメンで若い子は?あの子と連絡とるようになってからじゃない?」

 両眼を細めて疑いの眼差しを向けてくる。やはり店主なだけあるのか勘はいいらしい。イケメンの若い子とは栗山のことだろう。

「さぁな。そういえばそいつ、今日来てなかった?」
「来てないわよ。ふーん。やっぱり、まーくん怪しい」

 栗山の事を訊いたことで更に怪しまれて、櫂は「うるさい。単なるセフレだよ。本命でもなんでもない」と突っぱねて追い払ったが、内心では落ち込んでいる自分がいた。

『理人さんが俺のこと、真剣に考えてくれるの……。信じています』なんて言ってきたくせに、来ていないということは、結局自分は栗山に茶化されただけだったということなのだろう。奴と真剣に向き合えば上手くいくのではないかとミリ単位でも信じてしまった自分が馬鹿だった。

 櫂は暫く店で待ってみたが、奴の来る気配は一向になく、グラスを一杯呑んだだけで店を出た。このまま帰る気なんてなれずに、やけくそで発展場で相手を探したが誰かに抱かれる気もなれずに、終電も逃したことから漫画喫茶で時間を潰すも、奴のことを考えて一睡もできなかった。

 この年になって裏切られるのはしんどい……。
 期待をしてしまう自分も情けない……。
 自分は何やっているんだろうか……。
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