憧れはすぐ側に

なめめ

文字の大きさ
203 / 286
弾けない理由

26-7

先輩の身体が微かに震えてる。
先程、藤咲との関わりを諦めたような雰囲気を漂わせていた先輩が、今こうやって頭を下げていることに危惧しているようにさせ見える。

「藤咲、申し訳ない。律仁から事情を聞いたよ。俺たち家族も兄の所在は知らなかったんだ。まさか、調律師としてお前とこんな形で再会させてしまって、本当にすまないと思ってる」

恨めしいような、だけど何処か悲しさを滲ませているような、酷く顔を歪ませる藤咲。

「あいつの触ったピアノなんて嫌だと思うけど、律仁の友人として今回だけは出てやってほしい……律の大切なライブなんだ。お願いします」

今自分が目にしてるのは大樹先輩と藤咲とマネージャーさんとの内輪の問題。事情を知らない渉太はただ見ているだけしかできなかった。
見ているだけでも、息を呑むような緊迫した空気に飲み込まれそうで、手に汗が握る。

「君がアイドルしてたことは知ってたけど、まさか律と仲良いとは思わなかったよ。律が律がってよく言えるよね。友達思い?笑える。僕があんたの兄のせいで苦しんでた時、なんも助けてくれなかった癖に」

「それは……藤咲、ごめん」

一向に顔を上げずに頭を下げたまま藤咲に必死にお願いをする先輩に対して、冷たい視線を向けている藤咲。

「いいわ。大樹くん、悪いけど。尚弥、行きましょう」

そんな二人の間に割って入るようにして、恭子さんが先輩のことを避けるように藤咲の肩を抱いて連れていこうとした時、藤咲はマネージャーさんの肩を力いっぱい押しては引き剥がした。眉を釣りあげ、酷く激怒している様が藤咲から伝わる。

「あんたもっ、俺は許してないっ。あんたも知っててなんで隠してた?あんた、知ってた筈だろ?こっち来てからの調律は全部奴がやってたって?アイツから全部聴いた」

「ごめんなさい。でも古林ふるばやしさん体調崩してしまって……お弟子さんがたまたまあの人だったの」

「あの人だったから何?あんたは親父とあいつの不倫が嫌で離婚したんじゃないの?普通弟子でも頼む?あんな奴に」

母親のマネージャーさんに対して貶むような藤咲の瞳。そして、先輩のお兄さんを罵倒するような言葉。

渉太はあの日の自分と交差して逃げ出したいくらい震え上がりそうになった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。