20 / 33
複雑な幼なじみからの告白
複雑な幼なじみからの告白⑤
しおりを挟む自身の下駄箱からスリッパを取り出し、履く星杏ちゃんの後に続いて、旭も玄関に並べられていた来客用スリッパに履き替えて中へ入る。
先導する彼女の後ろ姿を眺めながら辿り着いたのは、施設内の図書室だった。
旭も此処に居た頃はよく利用していた場所。
そして、星杏ちゃんと仲良くなったのもこの場所だった。
星杏ちゃんは図書室に入るなり、真っ先に図鑑の棚へ向かうと星座の図鑑を取り出して旭に見せてくる。
「旭、懐かしくない?この本」
「うん、懐かしい。これ読んでるときに星杏ちゃんが声掛けてきてくれたんだよね」
「そうそう、あたしも丁度その本が読みたくて、私が図々しく旭の隣に座って見せてもらってた」
今では星杏ちゃんの方が詳しいが、当時の旭も夜空や星座の本が好きでよく図書室で読んでいた。
星杏ちゃんに図鑑を手渡されて、ページをめくると昔の懐かしい思い出が蘇る。
「それからだよね。旭が遼人とルームメイトで、三人で遊ぶようになったの」
「うん」
「旭は優しいからお兄ちゃんに合わせて悪戯に加担して園の先生に怒られてさ」
「うん。でも凄く楽しかったから、後悔はしてないよ」
遼人に出会わなければこんなにいい人にも楽しい時間も過ごせなかったと思う。そのおかげで今もこうして思い出として旭の心に残っている。
「旭……。あのね」
図鑑の表紙を眺めながら思い出に浸っていると星杏ちゃんに呼ばれて顔を上げる。髪の毛を耳に掻き上げる素振りをして、両手の指を組んで立っている彼女から緊張が伝わる。
「私、旭のこと昔から意識してたというか……。好きだったんだ。だから、この後の花火大会、旭と一緒に見たいなって……。ダメだかな?」
頬を染めてそう告白する星杏ちゃんに驚いた旭は思わず持っていた図鑑を落としてしまった。『好き』というのが単なる家族や幼馴染に対するものではないことは星杏ちゃんの言動から理解できた。
けれど今の今まで星杏ちゃんを恋愛対象として見てきていなかっただけに旭は戸惑いを隠せなかった。
遼人が言っていた星杏ちゃんが一緒に花火大会を見に行きたい相手は自分だったということなのだろう……。
「えっと……」
戸惑って何を返せばいいのか分からならず、言葉が出てこない。でも、ここで中途半端に返事をしてはいけないような気がした。
旭は慌てて床に落ちた図鑑を拾うと「ごめん……」と謝った。
「僕、星杏ちゃんをそう意識したことなくて……。勿論、星杏ちゃんのことは好きだけど、それは家族みたいな感覚で……」
彼女を傷つけないよう言葉を選んだつもりであるが自信はない。
けれど嘘なんか吐けないから本当の気持ちを話すしかない。
すると星杏ちゃんは天井に向かって大きく伸びをして、此方に微笑んできていた。
「分かってた。旭って超鈍感なんだもん。傍にいてもあたしのことあんまり意識してくれてないんだなーって。だから、はっきりさせたくて告白したの。でもありがとう、だから今まで通り仲良くしてね」
終始笑顔でいたけど、彼女が無理をしているように見えて良心が痛む。
「でね、図々しいけど一生に一度のお願いがあるの。花火大会付き合ってくれる?他意はないから、旭と思い出を作りたいだけ」
「う、うん。もちろん……」
人差し指を口元に当てて提案してきた彼女に圧倒されながらも、旭はただただ頷くことしかできなかった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜
紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉
学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。
ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──?
隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡
いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!
寡黙な剣道部の幼馴染
Gemini
BL
【完結】恩師の訃報に八年ぶりに帰郷した智(さとし)は幼馴染の有馬(ありま)と再会する。相変わらず寡黙て静かな有馬が智の勤める大学の学生だと知り、だんだんとその距離は縮まっていき……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる