17 / 20
第17話 ダンジョンの裏側
しおりを挟む
「妹さん……緋炎アオイさんは私の知ってる姿とは違うわ」
そう言われたアオイは、ピクッと両肩を上げた。
「妹は病気で……その……」
「黒髪は金髪に、黒目は碧眼に、そして髪で隠してある耳」
「――――ッ!」と俺は何も言えなくなる。彼女は、ムラサキさんは事前に調べてきているのだろう。
「ダンジョン病……それもエルフ化が進んでいる」
「はい、半年前から……」
「うん、知っているわ」とムラサキさんは続けた。
「緋炎アオイ……登録名は、火川アカイ。誰もが知るトップ配信者の1人ね」
その通りだった。俺の妹 緋炎アオイはダンジョン配信者として才能があった。
いや、俺とは違って……眩しくなるほどの才能の持ち主であり、12才の頃……中学生に入る前には、既にトップ配信者と言える人気と実力を兼ねそろえていた。
しかし、15才になる前————今から半年ほど前か? 彼女の、アオイの体に変化が現れた。
黒髪は金髪に、
黒い瞳は碧眼に、
なにより、耳が大きく尖り始めた。
ダンジョン病だ。
ダンジョン内に流れる膨大な魔力。それを浴び続けると、膨大な力と引き換えに風貌が変化してしまう病気。
ほら、ゲームでは転職したり、レベルアップを繰り返すと見た目が変わる事があるだろ? それと同じさ。それと同じことが現実でも起きるようになった……それだけ。
けれども、彼女は――――アオイは、それを酷く怖がった。
彼女曰く――――
『毎日、鏡を見るのが怖いの。自分が自分じゃなくなっていく』
だから、だから俺は――――
「ダンジョンの深層にある薬草……あらゆる病気に効果を発揮すると言われる。それを手に入れるためにヒカリくんは冒険者になった。そうよね?」
「はい、そのお通りです、ムラサキさん」と頷いた。
「他の人には理解できないと思います。ダンジョン病は力を手に入れた証明。それなのに治療しようとしてる感覚……」
「いえ、わかります。 私たちダンジョン安心保全委員会でも多くの相談は来ています」
「え?」と俺は驚いた。 ダンジョンの影響……それによる肉体の変化の悩み。そんな話を他では――――
「驚いたと思います。けれども、情報規制……ダンジョンにネガティブなイメージを感じる情報は世間に広まらないようになっている。そういう仕組みがあるのです」
「そんな……」と俺は次の言葉が出てこなかった。
「それじゃ行ってみない?」
「え? どこにですか?」
「どこって……そりゃ当然、ダンジョンの深部だよ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
俺は言われるまま車に乗る。 ムラサキさんが運転する彼女の車のようだ。
そうして、ダンジョンの前に到着した。
普段、そこには検問がある。
ダンジョンへ入る事は誰にでも可能だ。 しかし、行方不明者あるいは死者の把握のために、入り口では個人情報の記入を求められる。
そして、出る時にはドロップアイテム……貴重である採取品を確認させられる。
そんな厳しい監視の目がある場所————ダンジョン配信者にとっては、そんな場所であったはずだ。しかし――――
「お疲れ様です」と検問の監視員は最敬礼を持って、俺とムラサキさんを通した。
「はい、お疲れちゃん」とムラサキさんは慣れたように入るが、俺にとっては初めての経験にドギマギする。
「さあ、乗って」と用意されたのはセグウェイだった。
重心移動に反応して動く乗り物。初めて乗るけど、何とか……
「あっ、これ市販の物より速度出るように改造されているから気をつけてね。最高速度は100キロよ」
「は、早く! もっと早く言ってくださいよ!」
時速100キロで転倒したらシャレにならない。普通に大怪我だ。
そんなやり取りも交えながら、目的地が見えてきた。
「この先は――――ダンジョンの裏側ですか?」
ダンジョンの入り口は正面から1つのみ。
それ以外はない。 無理やり入り込む輩が出ないようにダンジョンは高い壁に囲まれている。
だから、ダンジョンの周囲を歩く意味はない。そのはずだった。
「これは? 入口ですか?」
「えぇ」とムラサキさんはいたずらっ子のように悪い笑みを浮かべた。
「ダンジョンの裏側には非公開の入り口がある。興奮してこない?」
そう言われたアオイは、ピクッと両肩を上げた。
「妹は病気で……その……」
「黒髪は金髪に、黒目は碧眼に、そして髪で隠してある耳」
「――――ッ!」と俺は何も言えなくなる。彼女は、ムラサキさんは事前に調べてきているのだろう。
「ダンジョン病……それもエルフ化が進んでいる」
「はい、半年前から……」
「うん、知っているわ」とムラサキさんは続けた。
「緋炎アオイ……登録名は、火川アカイ。誰もが知るトップ配信者の1人ね」
その通りだった。俺の妹 緋炎アオイはダンジョン配信者として才能があった。
いや、俺とは違って……眩しくなるほどの才能の持ち主であり、12才の頃……中学生に入る前には、既にトップ配信者と言える人気と実力を兼ねそろえていた。
しかし、15才になる前————今から半年ほど前か? 彼女の、アオイの体に変化が現れた。
黒髪は金髪に、
黒い瞳は碧眼に、
なにより、耳が大きく尖り始めた。
ダンジョン病だ。
ダンジョン内に流れる膨大な魔力。それを浴び続けると、膨大な力と引き換えに風貌が変化してしまう病気。
ほら、ゲームでは転職したり、レベルアップを繰り返すと見た目が変わる事があるだろ? それと同じさ。それと同じことが現実でも起きるようになった……それだけ。
けれども、彼女は――――アオイは、それを酷く怖がった。
彼女曰く――――
『毎日、鏡を見るのが怖いの。自分が自分じゃなくなっていく』
だから、だから俺は――――
「ダンジョンの深層にある薬草……あらゆる病気に効果を発揮すると言われる。それを手に入れるためにヒカリくんは冒険者になった。そうよね?」
「はい、そのお通りです、ムラサキさん」と頷いた。
「他の人には理解できないと思います。ダンジョン病は力を手に入れた証明。それなのに治療しようとしてる感覚……」
「いえ、わかります。 私たちダンジョン安心保全委員会でも多くの相談は来ています」
「え?」と俺は驚いた。 ダンジョンの影響……それによる肉体の変化の悩み。そんな話を他では――――
「驚いたと思います。けれども、情報規制……ダンジョンにネガティブなイメージを感じる情報は世間に広まらないようになっている。そういう仕組みがあるのです」
「そんな……」と俺は次の言葉が出てこなかった。
「それじゃ行ってみない?」
「え? どこにですか?」
「どこって……そりゃ当然、ダンジョンの深部だよ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
俺は言われるまま車に乗る。 ムラサキさんが運転する彼女の車のようだ。
そうして、ダンジョンの前に到着した。
普段、そこには検問がある。
ダンジョンへ入る事は誰にでも可能だ。 しかし、行方不明者あるいは死者の把握のために、入り口では個人情報の記入を求められる。
そして、出る時にはドロップアイテム……貴重である採取品を確認させられる。
そんな厳しい監視の目がある場所————ダンジョン配信者にとっては、そんな場所であったはずだ。しかし――――
「お疲れ様です」と検問の監視員は最敬礼を持って、俺とムラサキさんを通した。
「はい、お疲れちゃん」とムラサキさんは慣れたように入るが、俺にとっては初めての経験にドギマギする。
「さあ、乗って」と用意されたのはセグウェイだった。
重心移動に反応して動く乗り物。初めて乗るけど、何とか……
「あっ、これ市販の物より速度出るように改造されているから気をつけてね。最高速度は100キロよ」
「は、早く! もっと早く言ってくださいよ!」
時速100キロで転倒したらシャレにならない。普通に大怪我だ。
そんなやり取りも交えながら、目的地が見えてきた。
「この先は――――ダンジョンの裏側ですか?」
ダンジョンの入り口は正面から1つのみ。
それ以外はない。 無理やり入り込む輩が出ないようにダンジョンは高い壁に囲まれている。
だから、ダンジョンの周囲を歩く意味はない。そのはずだった。
「これは? 入口ですか?」
「えぇ」とムラサキさんはいたずらっ子のように悪い笑みを浮かべた。
「ダンジョンの裏側には非公開の入り口がある。興奮してこない?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編
きみゆぅ
ファンタジー
かつて世界を滅ぼしかけたセイシュとイシュの争い。
その痕跡は今もなお、荒野の奥深くに眠り続けていた。
少年が掘り起こした“結晶”――それは国を揺るがすほどの力を秘めた禁断の秘宝「火の原石」。
平穏だった村に突如訪れる陰謀と争奪戦。
白竜と少年は未来を掴むのか、それとも再び戦乱の炎を呼び覚ますのか?
本作は、本編と並行して紡がれるもう一つの物語を描く番外編。
それぞれに選ばれし者たちの運命は別々の道を進みながらも、やがて大いなる流れの中で交わり、
世界を再び揺るがす壮大な物語へと収束していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる