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第19話 迷惑系YouTuberと黒幕の正体
しおりを挟む「お前ら、覚悟をしておけよ。今から、全員に痛みを味わって貰う事になる」
殺意が抑えられない。 たとえ挑発だとしても、聞き捨てられない。
俺の仲間たちに手を出すと言いやがった。
今の俺は獅堂ライガではない。黒瀬大河……精神が全盛期に戻っている。
だが───
「おい、凄い勢いでブチ切れるぞ。お前等、早くデバフ攻撃をしろ!」
ゴンゾーは焦りながら、仲間たちに指示を出す。 そして、武器を構え直して、俺に駆け出してくる。
「お前みたいな格闘家タイプは、肉体強化による俊敏性《アジリティ》が武器。あるいは拳に魔力を流して特殊攻撃が武器だろがぁ! スピードがなければ、俺みたいな武器を操る戦士タイプには勝ち目がないだろうよぉぉ!」
ゴンゾーの体が、さらに巨大化。 全身が薄っすらと緑色に染まり、オーク化していく。
どうやら、単純な肉体強化スキルではなく、モンスターの能力を再現するスキルだったらしい。
「オラぁあ!」と金棒を俺に向けて振り落とした。
だが、俺には当たらない。 空振った金棒は地面に亀裂を生み出す。
俺は、それを上から足で踏んで、引き抜けなくする。
「おい! お前等、何をしてやがる! 急いで、コイツにデバフをかけろよぉ!」
「す、既に俺たちはやってます! 重力異常だけではなく、攻撃力も、防御力も、速度も減少させて、毒も付与させている……はずです!」
「ざけんな! どう見ても効いてないだろが!」
悪態をつきながら、ゴンゾーは金棒を手放す。 それと同時に収納空間スキルで大剣を取り出した。
「どうやら、大味な武器が好みらしいな」
「だ、黙れよ! そんで、死ね!」
ゴンゾーの大剣は俺に届かなかった。 その直前で、俺がへし折ったからだ。
「1つだけ修正しておいてやる。一体、いつから俺が格闘家タイプだと思い込んでいた?」
「なにを……お前、どう見ても……」
「素手で戦っているのは、格闘技が好きなだけ……ただの趣味だ」
「ふ、ふざけんなよ! そんな、格闘家タイプじゃないだと!? そんなはずは…… それじゃお前は一体……」
「俺は、普通の魔法使いタイプだよ」
「お、お前みたいな魔法使いがいてたまるか!」
「うむ、それじゃ……」
俺は、魔法使いである事を証明するため、詠唱を開始した。
詠唱。
魔法使いが使う本来の詠唱とは───詩に魔力を乗せて歌。
歌う事で強烈な魔法が使えるようになる。
……俺が魔法使いタイプなのに、極端に魔法を使わない理由。それは歌、詠唱に問題があった。
『この身は火種 この声が火薬 戦場に立てば 一瞬で火薬』
『灰になるまで魂に音を刻む 燃えろよ ! 俺の魔力!』
残念ながら、俺の詠唱は何故かラップ調だから、使いたくなかったが、その威力は────
『炎獄崩壊《エクスプロージョン》』
けたたましい轟音。周囲は炎が生み出した光で赤く染まった。
赤い閃光。その軌道が空間に残っている。
『え? 何この威力?』
『こんなの俺の知ってる魔法じゃない……』
『え? 人に向けて撃ったの? 今のを?』
『殺したのか? 本当に』
だが俺は、天井に向けて指を上げた。
『あっ!』
『天井に大穴!?!?』
『直前で上に反らしたのか……それじゃゴンゾーは?』
『あっ生きてるけど……髪が白くなってる!』
当然ながら、ゴンゾーは生きている。 コメントの通り、魔法を捻じ曲げて天井を穿ったのだ。
ゴンゾーは、許容以上の恐怖を感じたのだろう。彼の髪は一瞬で白く染まっていた。
腰を抜かし、涙とヨダレを流しながら……ズボンも濡れていた。
いや、腰を抜かしたどころか、魂まで抜けたかのように「アヘアヘ……」と意味不明な事を呟いてる。
「どうだ? お前等は、まだやるかい?」
残っているゴンゾーたちの仲間を見た。
「じょ、冗談じゃない。俺たちはソイツに命令されて……」
「それじゃ、二度とダンジョンに近づかないと誓うなら、見逃してやる。コイツを連れていけ」
「は、はい!」と彼等はゴンゾーの両肩を支えて、逃げて行った。
けど────
「魔法使いの男が1人だけ、仲間を見捨てて逃げたな。俺の結界を破った奴……おそらくアイツが黒幕だな」
まぁ、逃がさないけどな。 俺は逃げた男の追跡を開始する。
約10秒後…… 気配と姿を消す魔法を使って、逃げてる男に追いついた。
「お前が、今回の件を企んだのか? 誰なんだ?」
他人から恨まれる覚えは……いや、無い事もないか。
俺は、謎の魔法使いを後ろから掴まえて、腕を捻り上げる。
「痛っ! 痛たたたたた、は、離せ!」
「いや、離すわけないだろ。 それで、お前は誰なんだ?」
「……」と男は黙秘権ってのを行使するつもりらしい。 ならば、腕を強く捻ってみる。
「や、止めてくれ。お、俺は何も悪くない。悪いのはお前等だろうが」
俺は、男の顔を凝視する。やっぱり、見覚えがない。
なぜ、俺が悪いのだ?
「お、俺はただ、VTuber界隈を盛り上げるためにやってただけだ! お前等だって、俺のおかげでエンタメで食っていけるようになっただけだろうが!」
「?」
な、なんだコイツ? 言っている事が支離滅裂で、意味がわからない。
だが、コメント欄で男の正体に気づく者が現れ始めた。
『この声、この言い方……もしかし、炎斉士じゃ?』
『物申す系VTuberの炎斉士? まだ生きていたのか!?』
『あっ! ニコ生時代に素顔を見た事あるぞ!』
おいおい、VTuberの素顔の話をVTuberの配信で言うなよ。 それは、まぁ……置いといて……
「お前、炎斉士なのか?」
「そうだよ! 俺は許さない! お前みたいに運が良かっただけで、俺が作った土壌で楽々と───」
「わかったわかった……他責思考がヤバイなぁ。少し寝ておけ」
俺は、優しく首の血管を押して、炎斉士を失神させた。
「ここで捕まえれて良かった。何か放置してたら巨悪みたいになってた気がする」
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