最新の侍『異世界日本』でダンジョン配信者になる 「この明智光秀もおりますぞ~!」

チョーカ-

文字の大きさ
35 / 42

第35話 有村家当主 有村正宗(兄)

しおりを挟む
 目を覚ますと地下牢。目前に現れた男に

 「兄上……」

 景虎はそう呼んだ。 
 
 なるほど、両者を並べてみたらよく似ている。確かに兄弟なのだろう。
 
 牢の前に立って男は、有村景虎に数年ほどの年齢を重ねた容姿。

 まだ、20代ほどだろう。ただ髪の色が白く染まっている。

 有村景虎の兄、つまり有村家の長男――――

 名前は有村正宗《ありむらまさむね》。 

「兄上が、ここにいるという事は――――通りで懐かしさと感じるはずでござった。ここは、拙者の家にある地下牢でござったか。しかし、なぜ拙者がここに? 父上の判断でござるか?」

「いや、俺の判断だ。父上は引退した。今は俺が家を継いで当主になっている」

「なるほど、合点がいった。父上ならば、拙者を地下に閉じ込める程度で許さなかったでござるな」

「……まだやっているのか、景虎?」

「? 何の事でござる?」

「その話し方だ。 跡継ぎになれずとも、それでも侍らしくあろうとする喋り方だ」

「……拙者は、いや、俺は――――」

「頭を冷やすには良い場所だろう。暫く、ここで身を隠せ」

「――――兄上は俺をどうするつもりですか? 『尾張将軍』からも俺を匿うつもりで?」

「我が家に、幕府から何も連絡はない。ならば自由にさせてもらう」

 正宗は、小刀を取り出した。 思わず構える景虎だったが――――

「これを使え。最近、この地下にも小型の魔物がでるようになった。ダンジョン化が進んでいるのかもしれない」

「ダンジョン化が? 確かに、幼少期の記憶よりも奥行が広がっている。ひょっとして、ここがダンジョンの入り口になっている?」

 景虎は地下牢の奥を見る。暗くてわからなかったが、確かに通路らしきものがぼんやりと見える気がする。

「さて、俺は入った事がないのでな。生き延びてみろ」

 それから、正宗はこう続けた。

「いざとなれば、当主とした景虎を島送りの代わりにダンジョンに閉じ込めた。そう幕府に言えば、言い訳はできる。ダンジョン大名の家柄ならば……な?」


 そう言うと、牢越しに小刀を景虎に手渡して来た。

「これで責任を取って自害せよと言われるのかと思った」

「俺にだって家族のへの慈悲くらい持ち合わせているさ。もしも――――その先で相応しい刀を見つけたることができたなら」

「牢を斬り、ここから出ろと?」

「みなまで言わすな」とだけ正宗を言って地下牢から去って行った。

 1人残された景虎は――――

「さて、兄上も未知の道具に気づかなかったのか、見逃されったのか?」

 自身の背後に浮かぶ、小型ドローンのカメラに触れた。

「さて、配信の前にサムネを――――」

(兄上……兄上は勘違いしている。俺はサムライであろうとしているのではない。拙者は――――サムライになったのでござるよ!)

『サムライの国!? 特別ダンジョン攻略配信』

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 配信予定と共にサムネが写る。 

 余程、急いでいたのだろう。そのサムネは黒一色の上に白文字で書かれた簡素なものだったが……彼の熱狂的な視聴者《リスナー》たちは湧き上がった!

『行方不明だった景虎の配信予定が更新されたぞ!』

『やっぱ、俺たちの景虎は死んでなかった!』

『サムライの国だって? じゃ、やっぱり織田信長に連れ去られたって……コト!?』

『サムライの国とかマジで信じてる奴おりゅ? ヤラセに決まってるだろ? SFじゃあるまいし……』

『あれを見てヤラセって、ニワカかよ』

『私、女だけど景虎さんの配信をヤラセって言うような男子は、ちょっと……』

『うっせぇわ!』

 そして、その時間は来た。 配信が始まると――――

「さて、配信を始めるでござるよ! みんな、これをご覧あれ!」

『牢屋だ』

『地下牢……』

『閉じ込められていたのか』

『やっぱり、逮捕されていたのか』

 ずいぶんと久々のコメントのような気がして、景虎は気が高ぶる感覚がした。

「実は、ここ……拙者の実家なのでござるよ」

『実家! 岩穴で暮らしていたのか、通りで……』

「いやいや、実家の当主が配信活動に怒って、閉じ込められたのでござるよ!」

 それから、彼はこの配信の趣旨を簡単に説明した。

「そこで拙者は、牢屋から脱出するためにこの奥にあるダンジョンに潜って必要なアイテムを手に入れていく予定でござる!」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...