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第4話 『キラキラスライムの果物ゼリー』
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ダンジョンの最深層。 ボスであるファラオは消え去った。
残されたセリカとシロウは・・・・・・
(・・・・・・これは、少しばかり気まずいのではないでしょうか?)
セリカがシロウ・ムラサメを探していた理由は、モンスターの調理方法を学ぶため。
自分が手に入れたスキル『魔物食い』を────食べたモンスターの力を魔法で再現する能力を把握するためだった。
(強引にも訪ねてしまいましたが、押しかけ弟子は嫌がられてしまうのでは?)
シロウの顔を覗き込むと・・・・・・複雑そうな顔をしていた。
悩んでいるようでもあり、嫌がっているようでも見えた。
「う~ん」と唸ると
「お前、本当に俺の弟子になりたいのか? なんのために?」
「なんのために・・・・・・ですか? それは私が会得したスキル『魔物食い』がモンスターを食す事で力を得られるいう縛りが・・・・・・」
「つまり、料理人として弟子になりたいわけではなく、俺からモンスター料理の知識を学びたいって事か」
「はい、気を悪くしましたか?」
「いや」とシロウは首を横に振った。 それから、
「つまり、お前・・・・・・名前はセリカだったか? セリカは強くなりたいから、そのスキルを使いこなしたいから、弟子になりたいのだな?」
「え?」とセリカは迷った。
自分は、純粋に力を求めるほど戦闘狂なわけでもない。
強い力を得て、追放した勇者たちを見返してやりたいって気持ちもまるでないわけでもないが・・・・・・ それが目的かと言われたら、首を横に振るだろう。
(それじゃ、どうして? どうして私は強い力を求めているのでしょうか?)
彼女は足を止めると、「う~ん」と目を強く閉じて、頭を捻り始めた。
「そんなに難しい質問をしたか? いや、ゆっくり考えて良い」
「いえ、答えが出ました」
「そんなに早くか?」とシロウは驚いた。 彼女が真理を求める修行僧のように考えていたので、答えが出るのは数年後になるくらいは覚悟していたからだ。
「実は、私は騎士なんですよ」
「むっ? それは見ればわかるが・・・・・・」
「だから、人の手本となるべき生きなさい。弱きを助け、悪を討ちなさい。そう教えられて騎士になること目指しました」
「ほう? では、お前が出した答えは?」
「はい、正しい事をするためにも強い力が必要です。間違えた者を正しい道に引き戻すための力を────私は欲します」
「────ならばよし! ただ、純粋に力が欲しいって答えていたら、ぶん殴って送り返しているところだったぞ」
「え? 私、殴られる所だったのですか!」
「危ない、危ない」と呟きながら、セリカはシロウの後をついて行った。
「あの、師匠?」
「・・・・・・シロウで構わない」
「では、シロウは今どこに向かっているのですか?」
2人はまだ『王家の墓ダンジョン』の最深層にいた。
シロウは、壁をコツコツと叩いて回ったり、地面を強く踏み鳴らしていたりしていた。
「このダンジョンの最深層には秘密があってな。俺は、ある材料を調達するためにファラオと戦っていた」
「材料・・・・・・材料ですか! こんな砂漠のダンジョンに料理の材料があるのですか?」
「あぁ、ここだな」とシロウは、目前の壁を強く押した。すると────
「あっ! 壁が倒れて・・・・・・」とセリカが言い終わる前に壁の一面が倒れて、隠し通路が現れた。
「眩しい! こんな地下なのに光が?」
「あぁ、どういう仕掛けかはわからないが・・・・・・ついてこい」とシロウは先に進む。
後を追って、隠し通路を通り抜けると────
「え? こんな場所に草木が、それに水? これって・・・・・・オアシスですか?」
「あぁ、ダンジョンの構造状、地下に綺麗な水が貯まってオアシスできてるんだ。おそらく、偶然ではなくオアシスができるように計算されて作ったんだろうな」
「誰が作ったのですか?」とセリカは聞かなかった。 もしも、このオアシスが作れる者がいるとしたら、神様。あるいは、この最深層の主だけだろう。
「おっ!いたいた」とシロウがなにかを発見する。
大きく繁った木の影、何かが隠れていた。 シロウが接近すると慌てて逃げ出そうと
ぽよ~ん! ぽよ~ん!
と音を出して、跳ねながら逃げようとしていたが、シロウは簡単に捕まえてみせた。
「えっと、なんですか? その生物は? モンスターでしょうか?」
「ん? わからないのか? 普通のスライムだよ」
「粘獣《スライム》!?」とセリカは声を上げて驚いた。
なぜなら、彼女の知っているスライムとは別物。全く知らないモンスターのようにしか見えなかったからだ。
「あの、私の知ってるスライムと言うと、半透明の緑色の体で、食べた生物の骨とかが、うっすらと見えてるような不気味なモンスターなのですが?」
「そのスライムだよ。全く同じ種類の生物だ。違うのは、空気と食べ物だけだ」
「食べ物だけ・・・・・・」とセリカは周囲を見渡した。そこで初めて気づいたのだ。
「果物が、こんなにもたくさん!?」
砂漠の地でも果実は育つ。 まして、これほどまでに綺麗なオアシスの周辺ならば、上質な果実が手に入るだろう。
葡萄やメロン、スイカにパイナップルなどなど・・・・・・
「もしかして、求めていた材料って、この果物ですか?」
「あぁ、そうだな。それに、コイツも材料の1つだ」
そう言うとシロウは手にしたスライムを見せた。
「え? 食べるのですか、そのスライム?」
セリカとて、ダンジョンで出会うスライムには容赦はしない。
スライムとは弱きモンスターなどではない。油断をすると痛い目に会う。
そういう認識の強敵ではあるが・・・・・・ 目前のスライムは、プルプルと震えて怖がっているのが、わかる。
なんなら、ないはずの目から涙が流れているではないか。
「流石に罪悪感と言いますか・・・・・・これは、かわいそうじゃないですか?」
「ん? そうか?」とシロウは返すと、
スッーとスライムの体に手刀を差し込み、その身を切り取って見せた。
(あれは、魔法で斬撃を出した!? 無詠唱で、あんなにも簡単に!)
それは勇者パーティに属していたセリカでも、滅多に見ることのない魔法の高等技術であった。
「・・・・・・いえ、そうではなく! そんなにあっさり、スライムを殺して・・・・・・ない? え? 普通に生きている?」
「あぁ、この地のスライムの体には不純物が極端に少ない。それに良質な魔力を受けている。この量だけなら、身を分けて貰っても問題がないのさ」
シロウはスライムを地面に置いた。 それだけで、スライムは何事もなかったように
ぽよ~ん! ぽよ~ん!
と跳ねて離れていった。 いや、一度振り返って、手を振っているように見えるから不思議なもんだ。
なんなら「ばいばい! また遊んでね!」と幻聴すら聞こえてくるほどだった。
「────シロウ、一応の確認なのですが、あのスライムって、喋っていませんでしたか?」
人の言葉を理解するモンスターはいないわけではない。 しかし、人語を理解するほどに高い知能を有するモンスターとなれば・・・・・・
「さぁね? 気のせいじゃないか」とシロウは意味ありげに笑っていた。
それから────
「目的の材料も手に入った。それじゃ、最初の弟子に食べさせる料理を作ろうとするか!」
「え? この場で作るのですか? 何も調理道具がないように見えるのですが?」
「問題ない。それに最低限の調理道具はあるさ」と背負っていた荷物を下ろす。
先ほど、手に入れたスライムの身を鍋に入れて、さらに水を加えてふやかす。
さらに鍋をもう一個出した。
「その荷物にどうやって鍋を2つも入るのですか!」
「なぁに、ちょっとしたコツがあるんだよ」
鍋に水と砂糖を入れると────
「火魔法《ファイア》」と鍋底に火をつけて、沸騰させた。
それに、ふやかしたスライムの身を中に入れる。それを混ぜるながら、オレンジの汁を加える。
「これに────氷魔法《アイス》!」
鍋の周囲を魔法で冷やし始めた。
「これで1時間ほど・・・・・・暫く待つ」
急に時間が空いた。 このタイミングでセリカは質問をする。
「あの、どうしてそんなに魔法の威力を精密にコントロールできるのですか?」
「どうして? そう言われてもなぁ。長い間、過酷な環境で料理を作ってきたからな。 最小限の道具で調理ができるように工夫をしてきたんだ」
「工夫って・・・・・・それに、斬撃を飛ばす魔法。あれがあったら、その武器って必要ですか?」
彼女は斧槍《ハルバード》を指した。
斬撃を飛ばす魔法。 確かにそれがあれば、長物の武器は必要ないだろう。
「あぁ、俺は元々は槍を武器にして戦っていたから、戦いに関しては、こっちの方が本職なんだ。それに・・・・・・」
「それに? なんですか?」
「コイツは、昔の仲間たちが使っていた武器を合わせて作った形見なんだよ」
「それは・・・・・・」とセリカは言葉を失った。
「槍先は、剣聖が使っていた剣。斧は前衛の戦士だった男の物。鎌は魔法使いの杖についていた物だったなぁ」
シロウは1つ1つを思い出すように語り始めた。
「────って剣聖!? 初代勇者の仲間につけられた名誉称号ですよ? それに ファラオとの最後の会話でも・・・・・・何か私のスキルについて何か知ってるのではないですか?」
「うむ、それは────」
「────それは!」
「おっと、そろそろ固まってきたな。話は、また後で」とシロウは話を切り上げた。
「えっ! そんな!」とセリカの抗議を背で受けながら・・・・・・
「固まったスライムのゼリーを器に入れ直して、上にカットした果実。層になるように、またゼリーを入れて・・・・・・最後に果物の盛り付けをして完成だ」
『キラキラスライムの果物ゼリー』
「おぉ、どこか神々しい感じに光っていますね。材料はスライムなのに」
「そのスライムだったり、モンスターの調理法や食べ方を学びに来たんだろ?」
「それは確かに・・・・・・でも、緊張しますね、モンスターを食べるって」
「あぁ、それほどにモンスターは未知の食材だ。だから、時には想像を越えた劇的な味と効果を与えてくれる」
「味と・・・・・・効果? ですか?」
セリカは、その言葉にどこか違和感のような物を感じた。
自分のようにモンスターを食べることで特殊な力を得られるスキルを持っているならわかる。
(・・・・・・では、シロウにも恩賞が? モンスターを食べる事で〝効果〟と言える何があると言うことでしょうか?)
だが、シロウは気にした様子もなく、
「どうした、食べろよ。冷えてる間に食べないと味が落ちるぞ?」
「あっ、はい。それではいただきます」と覚悟を決めたセリカはゼリーを────キラキラしたスライムの身を口へと運んだ。
「────え?」
セリカは絶句する。なぜなら、最初に感じた味は────
「無味? これって味がしない・・・・・・え?」
だが、本当の驚きは次の瞬間に訪れた。
豊潤な果実のみを食してきたスライムの体。それは極限まで凝縮された濃厚な果実の味だ。
その衝撃を味覚と脳が正しく伝える事ができずに、味の衝撃は遅れてやってきた。
「これって、みかんの酸味!? 強烈なインパクトに全身が叩かれたような感覚……その驚きも一瞬だけです。優しげな果実の糖分がゆっくりと癒してくれる」
メロンやスイカ、瑞々しく爽やかな味合い。
甘酸っぱさで言えば、みかんだけではなくパイナップルやブドウの味が入れ替わりでやって来る。
「~~~! ふぅぅ! 凄い美味しいですね」
パシャ、パシャと甘味を含んだ果実の水分が弾けるような音がする。
それに、上に乗せられているミントが、強い清涼感と少し刺激的な辛さが通り抜けて、甘みに対して、ちょうど良いアクセントになっている。
「あぁ、凄いです。口の中で蕩けるような柔らかさが駆け抜けていきます」
モンスター料理。 どうしてもモンスターを食べるという事に抵抗があった。
しかし、それを払拭するほどに、美味しかった。
「っ、っ、っ! あぁ~ もう、美味しくて~~~最高です!」
全てを食べ終えたセリカは、空になった器を膝に置いて、少しだけ体を休めようと、全身から力を抜いて、脱力をした。
すると────
(ん!? この感覚、来ました。スキルが、『魔物食い』が発動しています!)
過去の経験でわかる。体に魔力が走り回り、モンスターの力を再現しようとしている。
だから、セリカは―――― その場で跳ねた。
ぽよ~ん! ぽよ~ん!
あのスライムのように大きくジャンプする事ができるようになった。垂直飛びで言えば3メートルを越える大ジャンプだ。
「これが、スライムの能力を再現した力。なんと言うか……凄いジャンプできます!」
「お、おう。凄い……のか?」と下からシロウが微妙な顔で見ていた。
「取り合えず、この能力をスキルとして保存して起きましょう」
「……ん? お前のスキル、時間経過で消えるとかじゃなくて、ずっと保存《ストック》しておく事が可能なのか?」
「えぇ、どうやら私のスキルは、食べたモンスターの能力再現を20個保存できるようです」
「20個だと!」とシロウは驚いた。
それもそのはずだ。
スキルと呼ばれる特殊能力を習得できるのかは、運と才能に左右される。
優れた人間は3つものスキルを持つ。 勇者や聖女と言われる人間でも6つほどが限界だろう。
「セリカの場合はスキルが20個あるようなもんだ。しかも、任意でスキルを保存できるという事は――――」
(複数の能力を自分で吟味して使用を選択する事ができる。まるで連続技《コンボ》のように相乗効果を狙える……という事か)
例えば、天気を操るスキル、水を操るスキル、雷撃を放つスキル……これ3つを保存できるだけでも、どれだけ恐ろしい効果になるか?
想像するだけでも、足元から震えがせり上がっていく感覚をシロウは体感した。
残されたセリカとシロウは・・・・・・
(・・・・・・これは、少しばかり気まずいのではないでしょうか?)
セリカがシロウ・ムラサメを探していた理由は、モンスターの調理方法を学ぶため。
自分が手に入れたスキル『魔物食い』を────食べたモンスターの力を魔法で再現する能力を把握するためだった。
(強引にも訪ねてしまいましたが、押しかけ弟子は嫌がられてしまうのでは?)
シロウの顔を覗き込むと・・・・・・複雑そうな顔をしていた。
悩んでいるようでもあり、嫌がっているようでも見えた。
「う~ん」と唸ると
「お前、本当に俺の弟子になりたいのか? なんのために?」
「なんのために・・・・・・ですか? それは私が会得したスキル『魔物食い』がモンスターを食す事で力を得られるいう縛りが・・・・・・」
「つまり、料理人として弟子になりたいわけではなく、俺からモンスター料理の知識を学びたいって事か」
「はい、気を悪くしましたか?」
「いや」とシロウは首を横に振った。 それから、
「つまり、お前・・・・・・名前はセリカだったか? セリカは強くなりたいから、そのスキルを使いこなしたいから、弟子になりたいのだな?」
「え?」とセリカは迷った。
自分は、純粋に力を求めるほど戦闘狂なわけでもない。
強い力を得て、追放した勇者たちを見返してやりたいって気持ちもまるでないわけでもないが・・・・・・ それが目的かと言われたら、首を横に振るだろう。
(それじゃ、どうして? どうして私は強い力を求めているのでしょうか?)
彼女は足を止めると、「う~ん」と目を強く閉じて、頭を捻り始めた。
「そんなに難しい質問をしたか? いや、ゆっくり考えて良い」
「いえ、答えが出ました」
「そんなに早くか?」とシロウは驚いた。 彼女が真理を求める修行僧のように考えていたので、答えが出るのは数年後になるくらいは覚悟していたからだ。
「実は、私は騎士なんですよ」
「むっ? それは見ればわかるが・・・・・・」
「だから、人の手本となるべき生きなさい。弱きを助け、悪を討ちなさい。そう教えられて騎士になること目指しました」
「ほう? では、お前が出した答えは?」
「はい、正しい事をするためにも強い力が必要です。間違えた者を正しい道に引き戻すための力を────私は欲します」
「────ならばよし! ただ、純粋に力が欲しいって答えていたら、ぶん殴って送り返しているところだったぞ」
「え? 私、殴られる所だったのですか!」
「危ない、危ない」と呟きながら、セリカはシロウの後をついて行った。
「あの、師匠?」
「・・・・・・シロウで構わない」
「では、シロウは今どこに向かっているのですか?」
2人はまだ『王家の墓ダンジョン』の最深層にいた。
シロウは、壁をコツコツと叩いて回ったり、地面を強く踏み鳴らしていたりしていた。
「このダンジョンの最深層には秘密があってな。俺は、ある材料を調達するためにファラオと戦っていた」
「材料・・・・・・材料ですか! こんな砂漠のダンジョンに料理の材料があるのですか?」
「あぁ、ここだな」とシロウは、目前の壁を強く押した。すると────
「あっ! 壁が倒れて・・・・・・」とセリカが言い終わる前に壁の一面が倒れて、隠し通路が現れた。
「眩しい! こんな地下なのに光が?」
「あぁ、どういう仕掛けかはわからないが・・・・・・ついてこい」とシロウは先に進む。
後を追って、隠し通路を通り抜けると────
「え? こんな場所に草木が、それに水? これって・・・・・・オアシスですか?」
「あぁ、ダンジョンの構造状、地下に綺麗な水が貯まってオアシスできてるんだ。おそらく、偶然ではなくオアシスができるように計算されて作ったんだろうな」
「誰が作ったのですか?」とセリカは聞かなかった。 もしも、このオアシスが作れる者がいるとしたら、神様。あるいは、この最深層の主だけだろう。
「おっ!いたいた」とシロウがなにかを発見する。
大きく繁った木の影、何かが隠れていた。 シロウが接近すると慌てて逃げ出そうと
ぽよ~ん! ぽよ~ん!
と音を出して、跳ねながら逃げようとしていたが、シロウは簡単に捕まえてみせた。
「えっと、なんですか? その生物は? モンスターでしょうか?」
「ん? わからないのか? 普通のスライムだよ」
「粘獣《スライム》!?」とセリカは声を上げて驚いた。
なぜなら、彼女の知っているスライムとは別物。全く知らないモンスターのようにしか見えなかったからだ。
「あの、私の知ってるスライムと言うと、半透明の緑色の体で、食べた生物の骨とかが、うっすらと見えてるような不気味なモンスターなのですが?」
「そのスライムだよ。全く同じ種類の生物だ。違うのは、空気と食べ物だけだ」
「食べ物だけ・・・・・・」とセリカは周囲を見渡した。そこで初めて気づいたのだ。
「果物が、こんなにもたくさん!?」
砂漠の地でも果実は育つ。 まして、これほどまでに綺麗なオアシスの周辺ならば、上質な果実が手に入るだろう。
葡萄やメロン、スイカにパイナップルなどなど・・・・・・
「もしかして、求めていた材料って、この果物ですか?」
「あぁ、そうだな。それに、コイツも材料の1つだ」
そう言うとシロウは手にしたスライムを見せた。
「え? 食べるのですか、そのスライム?」
セリカとて、ダンジョンで出会うスライムには容赦はしない。
スライムとは弱きモンスターなどではない。油断をすると痛い目に会う。
そういう認識の強敵ではあるが・・・・・・ 目前のスライムは、プルプルと震えて怖がっているのが、わかる。
なんなら、ないはずの目から涙が流れているではないか。
「流石に罪悪感と言いますか・・・・・・これは、かわいそうじゃないですか?」
「ん? そうか?」とシロウは返すと、
スッーとスライムの体に手刀を差し込み、その身を切り取って見せた。
(あれは、魔法で斬撃を出した!? 無詠唱で、あんなにも簡単に!)
それは勇者パーティに属していたセリカでも、滅多に見ることのない魔法の高等技術であった。
「・・・・・・いえ、そうではなく! そんなにあっさり、スライムを殺して・・・・・・ない? え? 普通に生きている?」
「あぁ、この地のスライムの体には不純物が極端に少ない。それに良質な魔力を受けている。この量だけなら、身を分けて貰っても問題がないのさ」
シロウはスライムを地面に置いた。 それだけで、スライムは何事もなかったように
ぽよ~ん! ぽよ~ん!
と跳ねて離れていった。 いや、一度振り返って、手を振っているように見えるから不思議なもんだ。
なんなら「ばいばい! また遊んでね!」と幻聴すら聞こえてくるほどだった。
「────シロウ、一応の確認なのですが、あのスライムって、喋っていませんでしたか?」
人の言葉を理解するモンスターはいないわけではない。 しかし、人語を理解するほどに高い知能を有するモンスターとなれば・・・・・・
「さぁね? 気のせいじゃないか」とシロウは意味ありげに笑っていた。
それから────
「目的の材料も手に入った。それじゃ、最初の弟子に食べさせる料理を作ろうとするか!」
「え? この場で作るのですか? 何も調理道具がないように見えるのですが?」
「問題ない。それに最低限の調理道具はあるさ」と背負っていた荷物を下ろす。
先ほど、手に入れたスライムの身を鍋に入れて、さらに水を加えてふやかす。
さらに鍋をもう一個出した。
「その荷物にどうやって鍋を2つも入るのですか!」
「なぁに、ちょっとしたコツがあるんだよ」
鍋に水と砂糖を入れると────
「火魔法《ファイア》」と鍋底に火をつけて、沸騰させた。
それに、ふやかしたスライムの身を中に入れる。それを混ぜるながら、オレンジの汁を加える。
「これに────氷魔法《アイス》!」
鍋の周囲を魔法で冷やし始めた。
「これで1時間ほど・・・・・・暫く待つ」
急に時間が空いた。 このタイミングでセリカは質問をする。
「あの、どうしてそんなに魔法の威力を精密にコントロールできるのですか?」
「どうして? そう言われてもなぁ。長い間、過酷な環境で料理を作ってきたからな。 最小限の道具で調理ができるように工夫をしてきたんだ」
「工夫って・・・・・・それに、斬撃を飛ばす魔法。あれがあったら、その武器って必要ですか?」
彼女は斧槍《ハルバード》を指した。
斬撃を飛ばす魔法。 確かにそれがあれば、長物の武器は必要ないだろう。
「あぁ、俺は元々は槍を武器にして戦っていたから、戦いに関しては、こっちの方が本職なんだ。それに・・・・・・」
「それに? なんですか?」
「コイツは、昔の仲間たちが使っていた武器を合わせて作った形見なんだよ」
「それは・・・・・・」とセリカは言葉を失った。
「槍先は、剣聖が使っていた剣。斧は前衛の戦士だった男の物。鎌は魔法使いの杖についていた物だったなぁ」
シロウは1つ1つを思い出すように語り始めた。
「────って剣聖!? 初代勇者の仲間につけられた名誉称号ですよ? それに ファラオとの最後の会話でも・・・・・・何か私のスキルについて何か知ってるのではないですか?」
「うむ、それは────」
「────それは!」
「おっと、そろそろ固まってきたな。話は、また後で」とシロウは話を切り上げた。
「えっ! そんな!」とセリカの抗議を背で受けながら・・・・・・
「固まったスライムのゼリーを器に入れ直して、上にカットした果実。層になるように、またゼリーを入れて・・・・・・最後に果物の盛り付けをして完成だ」
『キラキラスライムの果物ゼリー』
「おぉ、どこか神々しい感じに光っていますね。材料はスライムなのに」
「そのスライムだったり、モンスターの調理法や食べ方を学びに来たんだろ?」
「それは確かに・・・・・・でも、緊張しますね、モンスターを食べるって」
「あぁ、それほどにモンスターは未知の食材だ。だから、時には想像を越えた劇的な味と効果を与えてくれる」
「味と・・・・・・効果? ですか?」
セリカは、その言葉にどこか違和感のような物を感じた。
自分のようにモンスターを食べることで特殊な力を得られるスキルを持っているならわかる。
(・・・・・・では、シロウにも恩賞が? モンスターを食べる事で〝効果〟と言える何があると言うことでしょうか?)
だが、シロウは気にした様子もなく、
「どうした、食べろよ。冷えてる間に食べないと味が落ちるぞ?」
「あっ、はい。それではいただきます」と覚悟を決めたセリカはゼリーを────キラキラしたスライムの身を口へと運んだ。
「────え?」
セリカは絶句する。なぜなら、最初に感じた味は────
「無味? これって味がしない・・・・・・え?」
だが、本当の驚きは次の瞬間に訪れた。
豊潤な果実のみを食してきたスライムの体。それは極限まで凝縮された濃厚な果実の味だ。
その衝撃を味覚と脳が正しく伝える事ができずに、味の衝撃は遅れてやってきた。
「これって、みかんの酸味!? 強烈なインパクトに全身が叩かれたような感覚……その驚きも一瞬だけです。優しげな果実の糖分がゆっくりと癒してくれる」
メロンやスイカ、瑞々しく爽やかな味合い。
甘酸っぱさで言えば、みかんだけではなくパイナップルやブドウの味が入れ替わりでやって来る。
「~~~! ふぅぅ! 凄い美味しいですね」
パシャ、パシャと甘味を含んだ果実の水分が弾けるような音がする。
それに、上に乗せられているミントが、強い清涼感と少し刺激的な辛さが通り抜けて、甘みに対して、ちょうど良いアクセントになっている。
「あぁ、凄いです。口の中で蕩けるような柔らかさが駆け抜けていきます」
モンスター料理。 どうしてもモンスターを食べるという事に抵抗があった。
しかし、それを払拭するほどに、美味しかった。
「っ、っ、っ! あぁ~ もう、美味しくて~~~最高です!」
全てを食べ終えたセリカは、空になった器を膝に置いて、少しだけ体を休めようと、全身から力を抜いて、脱力をした。
すると────
(ん!? この感覚、来ました。スキルが、『魔物食い』が発動しています!)
過去の経験でわかる。体に魔力が走り回り、モンスターの力を再現しようとしている。
だから、セリカは―――― その場で跳ねた。
ぽよ~ん! ぽよ~ん!
あのスライムのように大きくジャンプする事ができるようになった。垂直飛びで言えば3メートルを越える大ジャンプだ。
「これが、スライムの能力を再現した力。なんと言うか……凄いジャンプできます!」
「お、おう。凄い……のか?」と下からシロウが微妙な顔で見ていた。
「取り合えず、この能力をスキルとして保存して起きましょう」
「……ん? お前のスキル、時間経過で消えるとかじゃなくて、ずっと保存《ストック》しておく事が可能なのか?」
「えぇ、どうやら私のスキルは、食べたモンスターの能力再現を20個保存できるようです」
「20個だと!」とシロウは驚いた。
それもそのはずだ。
スキルと呼ばれる特殊能力を習得できるのかは、運と才能に左右される。
優れた人間は3つものスキルを持つ。 勇者や聖女と言われる人間でも6つほどが限界だろう。
「セリカの場合はスキルが20個あるようなもんだ。しかも、任意でスキルを保存できるという事は――――」
(複数の能力を自分で吟味して使用を選択する事ができる。まるで連続技《コンボ》のように相乗効果を狙える……という事か)
例えば、天気を操るスキル、水を操るスキル、雷撃を放つスキル……これ3つを保存できるだけでも、どれだけ恐ろしい効果になるか?
想像するだけでも、足元から震えがせり上がっていく感覚をシロウは体感した。
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異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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