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Going
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ウィリウスとたくさん話をして、結局、手錠を外すのは調整が完了してからにした。不完全な魔法は怖い、と言われてなるほどとなったから。あとまあついでに、きちんと所有物にされた方が、ウィリウスも安心できるだろうと思ったのもある。
そして、ウィリウスに「お前は攻略が分かろうと世間知らずだって分かった」なんて言われたので、しばらくは常識を学ぶためにも彼と一緒に行動することになった。1日で物資が枯渇することはなさそうなので、早めに認識を改めろと言われている。
「おい、着替え済んだか?」
「……これどうやって留めるんだ」
「貸してみ。こっちに通すんだよ」
さて、調整完了後、外出にあたって外見を整えウィリウスに服を借りることになった。のだが、いかんせん貴族っぽい服というものは構造が複雑で着方が分からない。結局ウィリウスにボタンと紐を留めてもらって、服に着られた若人の完成だ。彼の方が体格が良いぶん、若干丈が余るしウエストもだぶついている。鏡越しに見えるウィリウスはしゃんとした令息に見えるので、これが生まれの差というやつだろうか。
「まーこのくらいやっとけば俺の知人に見えるだろ。なかなかイケメンじゃねぇかご主人様?」
調整が終わるまであんだけイかされてふにゃっふにゃだったのに、ウィリウスは上機嫌で笑っている。体力回復の早さが半端ない。さすがこの世界の前線職。満足げに笑って、セットした髪を撫でる彼の破壊力が凄い。ありがとう顔面偏差値。
「ウィリウスもかっこいいよ」
「そりゃよかった」
肩越しに手をやって頬を撫でる。嬉しそうに擦り寄ってきた。大型犬を連想させる懐き方だ。ラフな部屋着や冒険者用の味気ない装備と違って、シンプルながら各所にさりげなく趣向が凝らされた衣装を纏うウィリウスは、そのまま舞踏会に出ていても違和感を覚えないくらいにかっこいい。
「まず市場に素材売りに行って、それからお前の装備揃えに行こう。食料とアイテムは最後だな」
「ん。俺は基本黙ってるけど、なんか面白いもんあったらこっそり言うわ」
なお、口調をそのままにして欲しいと頼んだのは自分だ。ウィリウスと言えばこの勝気な口調のイメージがあるし、いきなり他人行儀に敬語で話されると寂しくなるから。
「荷物持ちの従者くらいいれば様になるんだけどな……まぁいいか、行こうぜ」
「ん」
するり。骨張った指が腕を撫で、滑るように指を絡ませてくる。調教が進んだ頃から顕著だったけれど、ウィリウスの好意は直球だ。ゲームでもちょっとツンデレな直情タイプだったし、嘘を吐くのは下手なのかも。
結局、抵抗する気もなく手を引かれて屋敷を出た。この世界で自意識を得て、初めての外。少し冷たい空気が髪をなぶって、遠くの方から賑やかな人の声が聞こえていた。
「こっちだ。はぐれるなよ」
「うん」
お互い荷物を持っていない手を繋いで、あまり手入れされていないように見える庭を歩いて行く。振り返って屋敷を見れば内側に見合った粗末……質素な物。それにしては庭がでかいなぁ、と、ウィリウスの方を見る。
「なーウィリウス、ここ庭でかくない?」
「ん? そりゃ、屋敷が拡張される予定だからな。その辺の知識はねぇのか? 最終的にはそうだな、庭の設備にもよるけど、あの辺までは建物になるんじゃねぇか。屋敷の裏は畑とか訓練場とかにしたい」
「ほへー……施設拡張の知識はあるけどこういうシステムだったの」
「この魔法結構複雑だから、基礎造りに金かかるんだぞ。増築の時は好きに設計できるから便利だし。大事に使えよ」
結構な面積を指差す彼。付け足し建築とかじゃなくて魔法か。思ったより力技なのか。……ウィリウスが貴族の三男であることをちょっと過小評価していたかもしれない。しっかり広大な敷地と凄い屋敷受け取ってるじゃん。資金が無くてもこの土地を貸し出すなりすれば食っていくには困らなそうだ。
にしても土地は事前に用意されてるのか……知らなかった。
「なんかあの……舐めててごめんね?」
「おう、敬え」
からからと笑うウィリウスに手を引かれ、散歩気分で小道を歩く。今は手入れが間に合わなくて雑草がはびこっているけれど、いずれはきちんと整えて綺麗な庭にしたい。屋外に建設するお役立ち設備にもいくつか心当たりがある。そのあたりは暫定家主のウィリウスと相談だな。
「俺、金貯まったら露天風呂欲しいなー」
「風呂なんざ調整部屋ので充分だろ……。それよりコック雇わねぇか? 通いで良いからさ」
「え、俺の料理そんなに不味い?」
「不味かねぇが、シシ―の料理が美味かった」
「そっかぁ……あ、アップルパイ食べたい」
あそこに畑が欲しいだの、あそこにリンゴの木があるだの、そんなこれからの展望を話しながら庭を進む。ほどなくして石造りの塀にたどり着き、ようやく2人で敷地の外へ。立派な塀が道沿いにずらっと続くのを見て、改めて貴族ってすごいんだなぁと思った。
「この大きさに2人かぁ……」
「塀に侵入防止のための魔法もかかってるから安心しろ」
「万能かよぉ……」
そういえばゲームでも拠点に侵入されたことはなかったし、誰かが訪ねてくるのは必ず玄関から、先触れを伴っていた。こういう内訳だったらしい。魔法ってやべぇな。自分もスキル的にはいくつか使えるはずだし、きちんと鍛えておきたい。
ウィリウスに早く、と手を引かれ、門扉を離れて歩き出す。街の賑わいはもうすぐ近くに聞こえていた。
そして、ウィリウスに「お前は攻略が分かろうと世間知らずだって分かった」なんて言われたので、しばらくは常識を学ぶためにも彼と一緒に行動することになった。1日で物資が枯渇することはなさそうなので、早めに認識を改めろと言われている。
「おい、着替え済んだか?」
「……これどうやって留めるんだ」
「貸してみ。こっちに通すんだよ」
さて、調整完了後、外出にあたって外見を整えウィリウスに服を借りることになった。のだが、いかんせん貴族っぽい服というものは構造が複雑で着方が分からない。結局ウィリウスにボタンと紐を留めてもらって、服に着られた若人の完成だ。彼の方が体格が良いぶん、若干丈が余るしウエストもだぶついている。鏡越しに見えるウィリウスはしゃんとした令息に見えるので、これが生まれの差というやつだろうか。
「まーこのくらいやっとけば俺の知人に見えるだろ。なかなかイケメンじゃねぇかご主人様?」
調整が終わるまであんだけイかされてふにゃっふにゃだったのに、ウィリウスは上機嫌で笑っている。体力回復の早さが半端ない。さすがこの世界の前線職。満足げに笑って、セットした髪を撫でる彼の破壊力が凄い。ありがとう顔面偏差値。
「ウィリウスもかっこいいよ」
「そりゃよかった」
肩越しに手をやって頬を撫でる。嬉しそうに擦り寄ってきた。大型犬を連想させる懐き方だ。ラフな部屋着や冒険者用の味気ない装備と違って、シンプルながら各所にさりげなく趣向が凝らされた衣装を纏うウィリウスは、そのまま舞踏会に出ていても違和感を覚えないくらいにかっこいい。
「まず市場に素材売りに行って、それからお前の装備揃えに行こう。食料とアイテムは最後だな」
「ん。俺は基本黙ってるけど、なんか面白いもんあったらこっそり言うわ」
なお、口調をそのままにして欲しいと頼んだのは自分だ。ウィリウスと言えばこの勝気な口調のイメージがあるし、いきなり他人行儀に敬語で話されると寂しくなるから。
「荷物持ちの従者くらいいれば様になるんだけどな……まぁいいか、行こうぜ」
「ん」
するり。骨張った指が腕を撫で、滑るように指を絡ませてくる。調教が進んだ頃から顕著だったけれど、ウィリウスの好意は直球だ。ゲームでもちょっとツンデレな直情タイプだったし、嘘を吐くのは下手なのかも。
結局、抵抗する気もなく手を引かれて屋敷を出た。この世界で自意識を得て、初めての外。少し冷たい空気が髪をなぶって、遠くの方から賑やかな人の声が聞こえていた。
「こっちだ。はぐれるなよ」
「うん」
お互い荷物を持っていない手を繋いで、あまり手入れされていないように見える庭を歩いて行く。振り返って屋敷を見れば内側に見合った粗末……質素な物。それにしては庭がでかいなぁ、と、ウィリウスの方を見る。
「なーウィリウス、ここ庭でかくない?」
「ん? そりゃ、屋敷が拡張される予定だからな。その辺の知識はねぇのか? 最終的にはそうだな、庭の設備にもよるけど、あの辺までは建物になるんじゃねぇか。屋敷の裏は畑とか訓練場とかにしたい」
「ほへー……施設拡張の知識はあるけどこういうシステムだったの」
「この魔法結構複雑だから、基礎造りに金かかるんだぞ。増築の時は好きに設計できるから便利だし。大事に使えよ」
結構な面積を指差す彼。付け足し建築とかじゃなくて魔法か。思ったより力技なのか。……ウィリウスが貴族の三男であることをちょっと過小評価していたかもしれない。しっかり広大な敷地と凄い屋敷受け取ってるじゃん。資金が無くてもこの土地を貸し出すなりすれば食っていくには困らなそうだ。
にしても土地は事前に用意されてるのか……知らなかった。
「なんかあの……舐めててごめんね?」
「おう、敬え」
からからと笑うウィリウスに手を引かれ、散歩気分で小道を歩く。今は手入れが間に合わなくて雑草がはびこっているけれど、いずれはきちんと整えて綺麗な庭にしたい。屋外に建設するお役立ち設備にもいくつか心当たりがある。そのあたりは暫定家主のウィリウスと相談だな。
「俺、金貯まったら露天風呂欲しいなー」
「風呂なんざ調整部屋ので充分だろ……。それよりコック雇わねぇか? 通いで良いからさ」
「え、俺の料理そんなに不味い?」
「不味かねぇが、シシ―の料理が美味かった」
「そっかぁ……あ、アップルパイ食べたい」
あそこに畑が欲しいだの、あそこにリンゴの木があるだの、そんなこれからの展望を話しながら庭を進む。ほどなくして石造りの塀にたどり着き、ようやく2人で敷地の外へ。立派な塀が道沿いにずらっと続くのを見て、改めて貴族ってすごいんだなぁと思った。
「この大きさに2人かぁ……」
「塀に侵入防止のための魔法もかかってるから安心しろ」
「万能かよぉ……」
そういえばゲームでも拠点に侵入されたことはなかったし、誰かが訪ねてくるのは必ず玄関から、先触れを伴っていた。こういう内訳だったらしい。魔法ってやべぇな。自分もスキル的にはいくつか使えるはずだし、きちんと鍛えておきたい。
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