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第7話
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しおりを挟む開門の時間に合わせて皇城へ向かったが、すぐに永宵と会えるわけではない。朝議が終わり、廷臣らが帰ってからやっと御書房へ案内された。
奏上に目を通していた永宵は、清玄に連れられてきた翠玲を一瞥し「なんだ」と問うてくる。
翠玲は拝礼したまま答えた。
「仁瑶様のことです。寧安への派遣を赦されたのはなぜですか」
「それが兄上のご希望だったからだ」
にべもなく返し、永宵は手振りで礼を解くよう促してくる。
翠玲は清玄が運んできた円凳に腰を下ろすと、永宵をじっと見つめた。
「どうしてそのようなご希望をなさったのでしょう」
「夫婦のくせに、そんなことも知らないのか? まあ、うなじを咬んでいないのだから夫婦とも言えぬか」
「なん、っ……」
「余はとっくにおまえと兄上が番になったものと思っていたのだが。考えてみれば、発情した兄上の対処に余を呼んだ時点で気づくべきだったな」
鼻で笑われ、翠玲は思わず永宵を睨む。
「わたしがどうして仁瑶様のうなじを咬まなかったか、帝君にはお察しいただけるはず」
「兄上に嫌われたくなかったのだろう? 気持ちはわかるが、結果的に逃げられていてはどうしようもない」
言いながら、永宵がなにかを取り出す。
清玄経由で手渡されたそれを見て、翠玲は押し黙った。
薄墨の水茎は仁瑶のもので間違いない。離縁状と記され、仁瑶の名の部分には拇印も捺してあった。
「これは……」
おのれが名を書き加えるだけですむようになっている書面。
胸中に苦いものがこみあげてくると同時に、なんとなく、これは仁瑶のやさしさゆえの行動なのだろうと微苦笑が漏れる。
「帝君は、これが仁瑶様の真意だと仰せになりたいのですか」
「まさか。だが、兄上からそれを渡されたのも事実だ。おまえはどうする?」
問われるや否や、翠玲は離縁状を破いた。そうして、文字がわからなくなるほど細かになったそれを、床に放る。
花びらのように散り落ちた離縁状を一瞥し、永宵は笑った。
「残念だ。おまえがそれに名を書いたら、斬ってやろうと思っていたのに」
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