26 / 64
第2話
2-9+
しおりを挟む「わたくしは臣下として当然の行動を取っただけで、名乗るほどのことでもありませんでしたから。……ですが、紗琰様がそれほどわたくしを探してくださっていたとは存じませんでした。もしや、なにか粗相をしてしまっていたのでしょうか」
「そんなことはない」
嫣寧の言葉を遮り、紗琰は必死に首を横に振る。
「ずっと、お礼を言いたかったんだ。……私を助けてくれて、ありがとう」
「紗琰様……」
手を伸ばして嫣寧の頬に触れれば、あたたかな色を宿した双眸と視線が絡んだ。
過去の、死んでしまった嫣寧に赦しを乞うことはできない。それでも魂が同じであるのなら、彼にも届いてほしいと思った。今度こそ、あなたの情を無下にはしないと。
「どうか、私をあなたの番にしてほしい」
頭をもたげて、そっとくちびるを重ねる。
表面が触れるだけの子供騙しのようなくちづけだったが、それが紗琰の精一杯だった。
触れて、離れてを数度くり返し、やわらかく吐息を食む。
気がつけば、紗琰は嫣寧にきつく抱きすくめられていた。
「っ――しぇんら、」
「あなたを慕う男に、そんなことをなさって……、っこんなにふるえていらっしゃるくせに」
「ん、っ……ぁ、あ、沈郎、っ」
嫣寧の手のひらが、薄い布越しに背を撫でていく。指先で背骨をたどられると、たまらず引き攣れた声が漏れた。
ひらいたくちびるはすぐに塞がれ、熱い舌がすべり込んでくる。
「っ、ぁ、う……っ、んく……ッ」
口内を貪るように舐められ、搦めとられた舌がこすれるたびに下腹部がふるえた。湿ったくちびるは容赦なく呼気を奪い、こぼれた唾液すら惜しむように舐めあげていく。
「ふぁ、あっ……沈郎、しぇんら、ぁ」
前世でも経験したことのない激しいくちづけに、紗琰は必死で嫣寧にしがみついた。
途端、抱きしめる腕にさらに力が籠り、互いの躰がわずかな隙間もないほどぴったりと重なる。どちらのものとも知れない鼓動が脈打つのを感じながら、紗琰は噎せ返るほど甘い木蓮の香りに溺れた。
無意識のうちに下肢を揺らせば、気づいた嫣寧がぐっと下腹部を押しつけてくる。寝衣を隔てていてもわかるほど硬いものがこすれあい、思わず紗琰の身が跳ねた。
「っ、っ……」
淫らな予感に、身の内で熱がふくらんでいく。
吐息すら赦されないほど執拗なまでのくちづけに酔いしれながら、紗琰はふと、おのれのあわいが濡れていくのを感じた。慾火で火照った白膚から香りがたって、嫣寧を誘おうと甘い匂いをあふれさせる。
「っ……沈郎、もっと、たべて……」
春情に染まった声音でねだれば、蛾眉を寄せた嫣寧が、再び嚙みつくような勢いでくちびるを重ねてくる。
途中、かつん、と音がして、嫣寧が牀榻の脇にある小卓へ玉佩を置いたのだとわかった。
けれど、逸れかけた意識はすぐにくちづけで引き戻され、熱い舌に痛いほど舌を搦めとられる。淫靡な痛みが与えてくる官能に思考を侵され、気がつけば、褥の上に仰向けに押し倒されていた。
32
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
最愛の番になる話
屑籠
BL
坂牧というアルファの名家に生まれたベータの咲也。
色々あって、坂牧の家から逃げ出そうとしたら、運命の番に捕まった話。
誤字脱字とうとう、あるとは思いますが脳内補完でお願いします。
久しぶりに書いてます。長い。
完結させるぞって意気込んで、書いた所まで。
断罪回避のために親友と仮婚約したはずが、想像以上に執着されていた。
鷲井戸リミカ
BL
ある日アーサーは、自分がネット小説の世界に転生していることに気が付いた。前世の記憶によれば親友のフェルディナンドは、悪役令息という役割らしい。最終的に婚約者から婚約破棄され、断罪後は国外追放されてしまうのだとか。
大事な親友が不幸になるのを見過ごすわけにはいかない。とにかく物語の主人公たちから距離をとらせようと、アーサーはフェルディナンドを自分の婚約者にしてしまった。
とりあえず仮婚約という形にしておいて、学園を卒業したら婚約を解消してしまえばいい。そう考えていたはずがアーサーのとある発言をきっかけに、フェルディナンドの執着が明らかになり……。
ハッピーエンドです。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
薄紅の檻、月下の契り
雪兎
BL
あらすじ
大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。
没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。
しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。
鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。
一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。
冷ややかな契約婚として始まった同居生活。
だが、伊織は次第に知ることになる。
鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。
発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。
伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。
月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。
大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる