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エピローグ
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太郎が目覚めたのは、ブッドレアがゼウスを倒してから暫くしてからだった。
「あれ?ゼウスは?」
太郎が現状を把握するのに時間を要したのは仕方のないことだろう。それだけ一度に色んなことが起こったのだから。
「勇者…済まぬ…」
ブッドレアが頭を下げた。
しかしその謝罪の意味が太郎には分からなかった。
「あのー…?」
太郎が周りを見渡すが、仲間たちは誰1人として太郎の顔を見ようとしない。
そんなにひどい顔をしているのだろうか?
太郎が訝しげに考えていると、ダリアが口を開いた。
「タローあのな。タローはあと1週間で死ぬらしいのだ…敵がタローに刺した剣は呪いの力が込められていて、パパやダリアなら打ち勝てた力なんだけど、タローでは打ち勝てないらしいのだ。」
「本来ならすぐに効果が出る呪いですが、勇者様の力でその効果が1週間延長されたらしいのです。」
「タロー…タローはいつもダリアを見守っててくれたのだ。ダリアは本当に…本当に心の底からタローのことを愛しているのだ…」
最後の方は言葉にならなかった。泣きながらダリアは太郎に抱き着き、おんおん泣いた。
ブッドレアは、すまぬ。と頭を下げるばかりで、他の者もダリア同様に太郎の身を案じていた。
「勇者。残り短くてなんて言ったらいいのか分からないけど、アタイもダリアと一緒で勇者のことが好きだったよ。」
チラコンチネは太郎にキスをし、タイニーはその胸に顔をうずめた。
一方の太郎はみんなが悲観的だからなのか、逆に冷静だった。
『そっかー。俺死ぬのか。ま、元々死んだ命だしな。』
「あのさ。出来れば残りの時間はダリアと過ごしたいんだけど。」
太郎の提案に誰も異を唱える者はいなかった。
「ダリア…ごめんな?」
「何を謝るのだ?」
ダリアはずっと太郎にくっついていた。
「約束守れなくて。」
「タローは立派に約束を守ったのだ。ダリアは幸せだったのだ。」
「ダリア。今でも俺のこと好きか?」
「当然なのだ。ダリアはタローが死んでも死ななくても今もこれからもずっと、タロー一筋なのだ。」
「それならさ…」
この日、ダリアとタローは長い間ずっと一緒にいて、初めて一夜を共にした。
「ブッドレアさん。」
翌朝、全てを終えたと考えた太郎は魔王を尋ねた。
「もうよいのか?」
太郎は、自分が呪いによって助からないと知らされてからずっと考えていた。
「ダリアとは永遠の愛を誓いました。これからのことはチラコンチネやパラナが何とかしてくれます。それに、もうこの世界に敵はいません。」
「君がそう言うならそうだろうな…」
一息置いてからブッドレアが太郎に言った。
「これは、この世界に語り継がれる伝承だ。我ら魔族に伝わる言葉だから、信用できるかは分からんが…勇者現れる時、真なる敵を撃ち滅ぼし、勇者は元の世界に還るであろう…」
「つまり、俺が元の世界に還る方法があるんですね?」
太郎の言葉にブッドレアは頷いて答えた。
「あぁある。しかし、片道切符だ。向こうの世界に行ってしまえばこちらには戻れない。だが、そちらの世界に行けばこの呪いが無効になるかもしれない。」
しかし太郎は知っていた。
自分が居た世界では山田太郎は死んでいる。
この世界でも元の世界でも太郎は生きることは出来ない。
それでも…
『俺は自分が弱っていく姿や死ぬ姿をダリアに見せたくない!』
太郎の強い信念は揺るがない。
「タロー…」
ダリアは言いたいことを飲み込む。
太郎が決意したことがどれ程大きいのかを知っているから。
「ダリア…苦労をかける。カトレアをよろしく頼む。」
そう言い残して太郎は、ブッドレアによって元いた世界に送られる。
ダリアにはカトレアが誰のことなのかさっぱりだったが、後にダリアのお腹に命が宿っていることが判明する。
「タロー!カトレアはダリアがタローみたいに立派に育ててみせるのだ!」
多種多様の種族がはびこった世界は、魔族と異種族だけの元の平穏な世界に戻った。
「ま。これからはアタイらも助けるしね!」
ポンポンとダリアのお腹を優しく撫でながらチラコンチネが微笑む。
「ダリア様。妊娠中はストレスが一番いけないと聞きましたわ。」
パラナは謎の知識を見せびらかし、それに対抗するようにタイニーも子育ての豆知識をダリアに聞かせていた。
1とヘリックスは子供には機械を装着すべきと聞かないし、ワチワヌイは
「勇者様のお子様でしたら、私たち犬人族はカトレア様に一生お仕えしますわ!」
と言って聞かなかった。
それを見てブッドレアは少し昔を思い出した。
――カスミソウよ。見ておるか?お主が育んだ命が今こうして育ってワシの想像もつかなかったような成長を遂げ、そして今新たな命を育てようとしている。お主の意思が、思考が、理想が脈々と受け継がれておるのじゃ――
「ありがとう。勇者山田太郎。」
ブッドレアの呟きは、風に運ばれて誰の耳にも聞こえなかった。
異世界で、ドタバタな人生を歩み、へなちょこでヘンテコなパーティーを結成し、魔王の娘に好かれた勇者山田太郎は、現世の病室でありふれた最期を迎えた。
「あれ?ゼウスは?」
太郎が現状を把握するのに時間を要したのは仕方のないことだろう。それだけ一度に色んなことが起こったのだから。
「勇者…済まぬ…」
ブッドレアが頭を下げた。
しかしその謝罪の意味が太郎には分からなかった。
「あのー…?」
太郎が周りを見渡すが、仲間たちは誰1人として太郎の顔を見ようとしない。
そんなにひどい顔をしているのだろうか?
太郎が訝しげに考えていると、ダリアが口を開いた。
「タローあのな。タローはあと1週間で死ぬらしいのだ…敵がタローに刺した剣は呪いの力が込められていて、パパやダリアなら打ち勝てた力なんだけど、タローでは打ち勝てないらしいのだ。」
「本来ならすぐに効果が出る呪いですが、勇者様の力でその効果が1週間延長されたらしいのです。」
「タロー…タローはいつもダリアを見守っててくれたのだ。ダリアは本当に…本当に心の底からタローのことを愛しているのだ…」
最後の方は言葉にならなかった。泣きながらダリアは太郎に抱き着き、おんおん泣いた。
ブッドレアは、すまぬ。と頭を下げるばかりで、他の者もダリア同様に太郎の身を案じていた。
「勇者。残り短くてなんて言ったらいいのか分からないけど、アタイもダリアと一緒で勇者のことが好きだったよ。」
チラコンチネは太郎にキスをし、タイニーはその胸に顔をうずめた。
一方の太郎はみんなが悲観的だからなのか、逆に冷静だった。
『そっかー。俺死ぬのか。ま、元々死んだ命だしな。』
「あのさ。出来れば残りの時間はダリアと過ごしたいんだけど。」
太郎の提案に誰も異を唱える者はいなかった。
「ダリア…ごめんな?」
「何を謝るのだ?」
ダリアはずっと太郎にくっついていた。
「約束守れなくて。」
「タローは立派に約束を守ったのだ。ダリアは幸せだったのだ。」
「ダリア。今でも俺のこと好きか?」
「当然なのだ。ダリアはタローが死んでも死ななくても今もこれからもずっと、タロー一筋なのだ。」
「それならさ…」
この日、ダリアとタローは長い間ずっと一緒にいて、初めて一夜を共にした。
「ブッドレアさん。」
翌朝、全てを終えたと考えた太郎は魔王を尋ねた。
「もうよいのか?」
太郎は、自分が呪いによって助からないと知らされてからずっと考えていた。
「ダリアとは永遠の愛を誓いました。これからのことはチラコンチネやパラナが何とかしてくれます。それに、もうこの世界に敵はいません。」
「君がそう言うならそうだろうな…」
一息置いてからブッドレアが太郎に言った。
「これは、この世界に語り継がれる伝承だ。我ら魔族に伝わる言葉だから、信用できるかは分からんが…勇者現れる時、真なる敵を撃ち滅ぼし、勇者は元の世界に還るであろう…」
「つまり、俺が元の世界に還る方法があるんですね?」
太郎の言葉にブッドレアは頷いて答えた。
「あぁある。しかし、片道切符だ。向こうの世界に行ってしまえばこちらには戻れない。だが、そちらの世界に行けばこの呪いが無効になるかもしれない。」
しかし太郎は知っていた。
自分が居た世界では山田太郎は死んでいる。
この世界でも元の世界でも太郎は生きることは出来ない。
それでも…
『俺は自分が弱っていく姿や死ぬ姿をダリアに見せたくない!』
太郎の強い信念は揺るがない。
「タロー…」
ダリアは言いたいことを飲み込む。
太郎が決意したことがどれ程大きいのかを知っているから。
「ダリア…苦労をかける。カトレアをよろしく頼む。」
そう言い残して太郎は、ブッドレアによって元いた世界に送られる。
ダリアにはカトレアが誰のことなのかさっぱりだったが、後にダリアのお腹に命が宿っていることが判明する。
「タロー!カトレアはダリアがタローみたいに立派に育ててみせるのだ!」
多種多様の種族がはびこった世界は、魔族と異種族だけの元の平穏な世界に戻った。
「ま。これからはアタイらも助けるしね!」
ポンポンとダリアのお腹を優しく撫でながらチラコンチネが微笑む。
「ダリア様。妊娠中はストレスが一番いけないと聞きましたわ。」
パラナは謎の知識を見せびらかし、それに対抗するようにタイニーも子育ての豆知識をダリアに聞かせていた。
1とヘリックスは子供には機械を装着すべきと聞かないし、ワチワヌイは
「勇者様のお子様でしたら、私たち犬人族はカトレア様に一生お仕えしますわ!」
と言って聞かなかった。
それを見てブッドレアは少し昔を思い出した。
――カスミソウよ。見ておるか?お主が育んだ命が今こうして育ってワシの想像もつかなかったような成長を遂げ、そして今新たな命を育てようとしている。お主の意思が、思考が、理想が脈々と受け継がれておるのじゃ――
「ありがとう。勇者山田太郎。」
ブッドレアの呟きは、風に運ばれて誰の耳にも聞こえなかった。
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