勇者は発情中

shiyushiyu

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第十九エロ 小さな助態の大冒険

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小さくなった助態はティーパンの肩の上に乗っていた。

『危ねー危ねー。あやうくみんなが俺をいないものと考えるところだったぜ。』

そんなことを思いながら、助態は小さくなってから起きた出来事を振り返った。

………

……



大きな蛇に睨まれた助態は、その魔法だか呪いだか分からない効果で小さくなってしまった。

「こんな魔法だか呪いも初めて見た…」

ティーパンが絶句とも取れる呟きを零す。

「あー…助態は…?」

キョロキョロと見回すのはもふともだ。

「これは夢っす。これは夢っす。」

ぱいおは現実逃避を始めた。

「私の力じゃ生き物を大きくはできないし…」

手のひらに乗せてアンアンが心配そうに言う。

「助態さん、私よりも小さくなってしまったのですね…」

あへも心配そうだ。

「こんな姿を純純が見たらなんて言うのかしら?」

くびちは別の意味で心配していた。

「おい!俺を心配しろよ!」

全員を見上げながら助態が叫ぶ。

「あ、あぁ。君のことはもちろん心配しているさ。ただね、今の状況にちょっとついていけないだけさ。」

手をひらひらさせてティーパンが言うが、一切助態の方を見ていない。

「こっちを見ろぉー!」

「助態さんちょっとウザいっす。こっちは状況についていけてないんすよ?空気読んで欲しいっす。」

なぜか助態がぱいおに怒られた。

「とりあえず勇者がいないことには出来なかったし、現実逃避も出来なかったし、勇者は私の肩にでも乗ってな。」

トントンとティーパンが自分の肩を叩く。

「役立たずだなー。」

ツンと助態の背中を指で押しながらもふともが言う。

「しょうがないだろ!俺だって小さくなりたくてなったわけじゃないんだよ!」

このこの!ともふともを殴るが当然ながら無意味だった。

「せっかく修行したのになー。」

はぁとティーパンがあからさまなため息をついた。

「とりあえず助態を元に戻す方法を探しつつ人攫いのもとへ行くしかないわね。」

くびちもやれやれという感じで言う。

「お、俺が悪いのかー?」

助態の悲痛うの叫びが洞窟内にこだましたが、答える者は誰もいなかった。

助態は心の底から思った、ここに純純かルブマがいてくれれば絶対に心配してくれるだろうと。



蛇に襲われた部屋からは一本の道が出ている。

その道を進むと、前方が大きな岩に塞がれていた。

岩はベルトコンベアに載せられているので、コンベアを動かせば先に進めることが分かる。

「この小さな道から進むしかないってことなんじゃないのかい?」

横にあからさまな小さな道があるのを見てもふともが言う。

通れるのは助態しかいないので、仕方なしに助態が1人で進むことになった。

『小さくなって小さな道からスイッチを押してベルトコンベアを動かすなんて、まるでゲームみたいだな。』

そんなことを考えながら助態が歩いていると、吸血ねずみがいた。

今の助態よりも吸血ねずみはでかい。

更に助態には戦える武器がない。

『下手したら食われるんじゃないのか?』

そう考えた助態は、ひとまず物陰に隠れることにした。

ねずみは全部で3匹。

その内の1匹が助態が隠れている近くまでやって来た。

ねずみのくせに今の助態にはその大きさが巨人なみに大きく見えた。

『こっちに来るなよ来るなよ来るなよ…』

心の中で呪文のように唱えながら冷や汗をかく。

心臓が早鐘のように鳴る。

自分の心臓の音で気づかれてしまうのではないかと、助態は気が気ではなかった。

しかしねずみは途中で何か探し物を見つけたらしく、助態の隠れている場所へ来る前に仲間の元へと引き返して行った。

ほっと助態は安堵の息を漏らす。

安心感からか高ぶっていた感情が急に引いていき、同時に注意力が散漫になってしまった。

――カタン。

助態が隠れていた場所に立てかけてあった木の棒が倒れて音が鳴る。

『やべっ!』

3匹のねずみが助態の方を向く気配を感じる。

ねずみが警戒しながら助態の方へと近づく。

助態の心臓が再び強く鳴り出した。

もうあと2、3歩もねずみが歩けば助態が隠れている物陰の真横だろう。

『こうなったらゲームオーバー覚悟で飛び出して不意打ちくらわすしかないか…』

そう助態は覚悟を決めてねずみがやって来るであろうタイミングをカウントし始めた。

『あと10秒…9…8…』

しかしカウントダウンが終わる前にまた別のことが起こった。

小さな助態の大冒険はまだ始まったばかりだったのだ。



「にゃ~」

残り3秒で飛び出そうとした助態の耳に、猫の鳴き声が聞こえてきた。

『ね!猫?』

助態は大の猫好きだ。

しかし今の助態が猫に見つかったらいい餌になってしまう。

『そうか、猫はねずみの天敵だ。だから吸血ねずみはこっちに来なかったのか。』

今度は助態が猫に見つからないように隠れる番だ。

助態の新し試練が始まった。

まずは物音を立てずにやり過ごすことが大事だ。

そして、先ほどチラッと見た感じだと、この先に何本かの分かれ道がある。猫ともねずみとも違う道を上手に選択できれば助態の安全は確保される。

猫は想像以上に嗅覚がいい。

助態が隠れていることに気づく可能性がある。

猫が近づいてくる気配がする。

『こうなったら一か八かだ…』

さっき倒した木の棒をそっと拾う。

これを投げて猫の気を反らしたすきに逃げ込む作戦だが、果たして上手くいくかどうか…

『今だ!』

助態が木の枝を投げる。

――コツン。

木を投げると猫がそれに反応する。

猫が助態が潜んでいる場所にお尻を向けて木に飛びつく。

助態はそのすきに音を立てずに一本道を少し進み、先ほどねずみがたむろしていた少し広い小部屋へ向かう。

小部屋からは5本の道が出ている。

猫と助態が居た道から一直線上の道が1本。

部屋から直角に左右にそれぞれ1本ずつ。

猫と助態が居た道を背にして右斜め前方とそれの対角線上にそれぞれ1本ずつ。

猫に気づかれる前に助態は、斜め左手前へと鋭角にカーブをした。

つまり、猫と助態が居た道を背にして右斜め前方の対角線上の道を選択した。

ちょうど猫の視線からは外れる形となった。

「ほう。」

ほっと一息つく。

助態の目の前には広い花畑が広がっていた。



「なんだこりゃ!」

思わず助態は1人しかいないのに口に出していた。

普段なら見向きもしないであろう花たち。

花壇に植わっているわけではなく雑草として生えている花たちだった。

小さくなった助態には、雑草として生えている花たちも花畑に見える。

改めて自分がどれだけ小さくなったのかを実感させられた。

『こりゃあ小さな虫とかにも注意した方が良さそうだな。』

気を引き締めて歩き出した助態だったが、早速今注意した虫に引っかかることになった。

「な!なんだこりゃあ?蜘蛛の巣?」

自分の体に引っかかる蜘蛛の巣を剥がそうとすればするほどに絡みつく。

「くそ!これがよく見る虫が蜘蛛の巣に捕らえられた時にどんどん絡むやつか!」

悪態をつく助態に向かって、黒と黄色の縞模様の蜘蛛が物凄い速さで近づく。

「うわ!気持ち悪っ!」

背筋が凍るような気持ち悪さに、助態は恐怖よりも嫌悪感を覚えた。

迫ってくる蜘蛛は猫やねずみよりは小さいものの、助態よりは大きい。

本来ならば焦るべきなのだろうが、助態にとっては気持ち悪さが勝ったようだ。

「こんな…」

そして時として人は、思わぬ力を発揮することがある。

「気持ち悪いやつに食われてたまるかぁー!」

それは火事場のバカ力と呼ばれる。

今の助態が正にそれだった。

本来ならひっくり返らないであろう力の差を、思わぬ力ではね返してしまったのだ。

『これが勇者の力…』

蜘蛛を殴り飛ばし、蜘蛛の巣からも脱出した助態は、自分の両手を見つめて火事場のバカ力を勇者の力だと勘違いしているが、もちろん勇者の力のおかげではない。

『格上の敵とも戦って勝った。もはや俺に敵はいない!』

助態は意気揚々と花畑を闊歩する。

しかしこの花畑エリアには、どうやらベルトコンベアを動かすスイッチのようなものはないようだ。

意気揚々としていた助態は、意気消沈して先ほど猫やねずみと遭遇した部屋の近くまで戻った。

『さてと…残る道は4つ。そして問題はねずみと猫だな。どうしたものか…』

そう考えながら、道が分かれている先ほどの小部屋をそっと覗く。

部屋には猫もねずみもいない。

延長線上にある道にもその姿はない。

残るは4方向。その内の1つは最初に助態と猫がいた道だ。

小部屋へは、その道が通る縦の道と垂直に横の道、そして今助態が覗いている斜めの道が通っている。

つまり残りの確認は、縦と横の道だ。

そっと忍び足で部屋へと入る。

壁にぴったりと張り付いて、他の道から助態の姿が見えないようにする。

心臓の音だけが鳴り響く。

壁つたいに歩き、右側へと少しずつ移動する。

その先には、最初に助態と猫がいた道がある。

つまり縦の道だ。

道の角にたどり着くと、身をかがめて更に見つかりにくくした上で縦に通る道を部屋から左右に見る。

猫もねずみの姿もない。

ほっと一安心し、助態はひとまず元居た道へと戻り、頼りないが木の枝を拾った。

残りの道は左右に通る横の道だ。

しかし、この左右の道には猫とねずみがいる可能性もある。

縦の道と斜めの道に猫とねずみを目視出来ないので、あくまでも確率の話しではあるが、可能性が高いということだ。

『道を覗いた瞬間に見つかる可能性もあるよな…』

再び身を低くして左右に通る道を覗く。

すると、左側の道に猫がいた。

たまたま後ろを向いてはいるが、これでは横の道はどこも使えない。

そして猫がねずみの天敵であることを考えると、ねずみも横の道にはいないだろう。

『より安全を取るなら、危険を冒しても右へ行くべきか…』

猫が視認できる距離よりも離れてしまえば、ねずみがいる可能性はほぼないので、この先の安全性は保障されていることになる。

『見つからなければだな…』

そっと身を低くして右の道を助態は進む。

猫の視力がどれほどなのかは助態には不明だが、助態から見えない距離まで行けば安全だろうと助態は考えた。

しかし助態の読みは外れることになった。

身を低くして進んでいた助態の前方には、ねずみは確かにいなかった。しかし別の猫がいた。

「くそ!別の動物の存在を忘れてた!」

追ってくる猫相手に低い姿勢のままいるわけにはいかない。

猫やねずみに見つかるの覚悟で助態は走って逆戻りした。

しかし既にその先にはもう一匹の猫がいた。

「やばい!まじで死ぬ!」

小さな助態は猫に挟み撃ちにされ、絶体絶命のピンチを迎えた。
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