33 / 60
第三十エロ 対決!人食い
しおりを挟む
その異様な光景を彼は外から見ていた。
一見するとそれは洞窟のような見た目をしているが、地面から這い出したその体は洞窟というよりもミミズに近かった。
長く巨大なミミズだ。
そのサイズは洞窟サイズ。
彼はそれが人食いだとすぐに分かった。
人食いは、ガイラの町付近にしか生息していないので、ここらに住んでいない人には馴染みのないモンスターだ。
その名の通り、人を食うモンスターだが、自ら人間を襲うのではなく洞窟に擬態して人が口の中に入るのをじっと待っているタイプだ。
つまり、助態たちが洞窟の入り口だと思って入った場所は、人食いの口だったのだ。
彼が異様な光景だと思ったのは、その人食いが何やら苦しんでいるように見えたからだ。
それはつまり、人食いが人間を食べたのにどういう理由か体内で暴れていることを指す。
通常ならば中に迷い込んだ人間を人食いは、すぐに消化すべく動くのだが今回は迷い込んだ人数が多すぎたのだ。
人間で言うところの、一度に多くの食べ物を呑み込んでしまった状況だ。
更に偶然にも助態が何度もリバースをした。
想像してみよう。自分の体内で生物が食べ物を吐くことを。
つまりはそういうことを人食いはされたわけだ。
「何だか分からないけれど、苦しんでいるようね~。」
おかま声で話す彼の声は、助態たちが洞窟内で聞いた声と同じ声だった。
●
洞窟内にいる助態たちには、それが人食いだと知る術もなければ、外で彼が人食いと今から戦おうとしていることすら分からずにいた。
しかし、目の前の池が恐らくは胃酸であることが分かり、ひとまずはその地から離れることにした。
「ここが生き物の体内だとすると、俺たちが入ったあの入り口が口だったってことですかね?」
助態が隣のティーパンに聞く。
あぐらをかいた膝の上ではちあがすやすやと眠っている。
洞窟内、いやモンスターの体内だと分からないが、ちあが眠っているところを見ると外は夜なのだろう。
「多分ね。まさか人間を捕食するモンスターがいるなんて思ってもみなかったけど…」
助態の質問に頷きながらティーパンが言う。
ティーパンが冒険をして出会ったモンスターの中には、襲ってくる個体はいても捕食する個体はいなかったようだ。
もっとも、ぷーれいに欲情するようなモンスターもいるのだから、ティーパンが知っているモンスターが全てではないのだろうが。
それでも、熟練だと思っていたティーパンですら知らないモンスターがいたことは、助態にとっては驚きだった。
魚名人が見たことも聞いたこともない魚を見たと言っているのと同じ感じだ。
「これからどうしますか?」
純純が聞く。
どうする。とは、ここからどうやって抜け出すのかという意味だ。
今助態たちは、胃酸だと思われる池から少し離れた場所で座っている。
むやみやたらに動くとまた、洞窟(モンスター)が蠢くため、迂闊に動かない方がいいだろうという結論には至っている。
「思うんすけど。」
片手を挙げて発言の許可を求めるかのようにぱいおが口を開く。
「外に人がいるんすよね?その人ってウチらのこと助けてくれたりしないんすかね?」
「どうだろ?俺たちの声が聞こえてるわけじゃないだろ?」
少し考えてから助態が言うと、隣のもふともも頷く。
「そうだねぇ。アタイたちが食べられてるんだとしたら、この洞窟に見えたモンスターを倒そうとしてるだけなんじゃないのかい?」
「ねぇ。それってまずいんじゃないの?」
もふともの考えを聞いたアンアンが言う。
「外にいる人が私たちを食べたモンスターを倒そうとしているんだとしたら、私たちが食べられていることを知らない可能性もあるんじゃないの?」
「・・・あり得るね。すると中にいる私たちごと倒すような攻撃をされる可能性もあるね…」
アンアンの考えを聞いたティーパンも、少し考えてから口を開いた。
最後に、急いで出ないと。と付け加えた。
●
人食いに食べられた助態たちは、一刻を争う状況に陥っていた。
人食いを外から攻撃するおかま、いーげには知る由もないが、人食いは助態たちを食べている。
とにかく目の前にいる人食いを倒して、被害に遭う人間を減らそうとする考えしか頭にはない。
そんないーげの考えを何となく気が付いている助態たちは、一刻も早く人食いの体内から脱出しなければという焦燥感に駆られる。
「外にいる人がこの洞窟モンスターを倒す前に脱出しないと、私たちもモンスターと同じ運命になっちゃいます!」
慌てるようにルブマがティーパンがさっき言ったことを繰り返し言う。
それもう聞いた。ともふともが走りながら呆れる。もう3度目の繰り返しだ。
今、助態たちは洞窟の入り口であるモンスターの口に向かっている。
外の人物がモンスターに攻撃を加えているため、中で食べられている助態が走ろうとどうしようと、くねくね動くのは変わらない。
「正に蠢く洞窟だね。」
走りながらティーパンが呟く。
横の壁がモンスターの肉ならばと、大刀で先ほど攻撃してみたが、びくともしなかった。
ティーパンの予想では、体内からの攻撃にはほぼ効果がないのだろうということだ。
「オロロロロ~。」
助態のリバースも二桁に突入した。
「うぎゃー!また汚されたっすー!」
叫びながらぱいおが助態の汚物を純純の服で拭き取る。
「ちょっ、やめてください。」
本当に嫌そうな言い方を純純がしたので、助態はすごく傷ついた顔をした。
「俺、勇者だよ?」
「常に発情して他人に色んな体液をぶっかける勇者っすけどね!」
「いっ、色んな体液ってなんだよ!」
「そりゃー唾液とか、セー」
「見えた!」
助態とぱいおの言い合いを遮るようにティーパンの鋭い声がした。
おかげでぱいおの、し。という言葉は誰にも聞こえなかった。
ティーパンが指さす先には月明かりが見える。
モンスターが口を上に向けて開けているからだ。
その口の外に向かって助態たちは脱出した。
●
「あんらぁ~?アナタ達人食いに食べられていたのね~?」
喋り方は女だが、その声質は低く渋い。
助態たちは洞窟に擬態していたモンスター、人食いの口から何とか脱出したところだった。
人食いの口は想像以上に高い場所にあったようで、身軽さが売りのもふともと熟練のティーパン以外のメンバーは地面にべちゃっと着地をしたり、しりもちをつく形となった。
助態は地面とキスをしていた。
ちあはどういうわけか助態の背中の上に着地していたが、その衝撃で目を覚ましたようだ。
「なっ…」
見事な着地を見せたもふともが絶句する。
「なんじゃこいつは?」
そのもふともの絶句をものの見事にちあが言葉に言い表した。
助態もその妙に違和感のある話し方に目を上げると、話し方だけでなく姿恰好までもがとんちんかんな大男がそこには立っていた。
「あんらぁ~?いい男じゃな~い?あちきのタイプよ~ん。あちきはいーげ。よろしくね~ん。」
いーげと名乗った筋肉ムキムキのブリーフ一丁の大男は、そう言って助態にウインクした。
よく見れば、ゴツゴツした顔に剃り残しなのか青髭が目立ち、すね毛も胸毛も腕毛ももじゃもじゃだった。
正にちあが言った、なんじゃこいつは。がぴったし当てはまる。
そのままムキムキのおかま大男は人食いに向かって走り出した。
素早くティーパンがそれに並走する。
一拍遅れてもふともも後に続く。
「あれは何?」
得体の知れないモンスターを見ながらティーパンは、得体の知れない大男に問う。
同じ得体の知れないものでも、モンスターよりは人間の方が信用があるようだ。
「あれは人食い。普段は洞窟に擬態してて迷い込んだ人間を食べるモンスターよぅ。」
両手を上に上げ、しゅたたた!と走りながら簡単にいーげが説明する。
「あれに食べられるとねぇ、外の声は聞こえるのに中からの声は全く聞こえないのよ~ぅ。まさかアナタ達が食べられてるなんて思ってもみなかったわぁ~ん。」
「どういうことだい?洞窟に擬態して人間を食べるモンスターなら、食われてるやつがいるかもって思うのが普通じゃないのかい?」
やや後方で話を聞いていたもふともが今度は訊ねる。
「違うのよ~ぅ。人食いってこの辺りにしか生息してないんだけどねぇ~。この辺に住んでいる人の中では常識なのよ~ぅ。だからみんな、まさか人食いに食べられる人がいるとは思わないわけ。」
振り上げた両方の手を組んで拳を作り、そのまま人食いに振り下ろす。
「どういうこと?確かにガイラ付近の人たちにとっては常識のことかもしれないけれど、ここを通る旅の人や商人だっているはずでしょ?」
今度はティーパンが大刀を人食いに振り下ろしながら言う。
「残念だけど、ここの近くには船の墓場があるからねぇん。旅人も商人もいないのよねぇ。」
さっきとは打って変わって、暗い声をいーげが出す。
「だからアナタ達も船の墓場を避けるようにこのルートを使ったわけでしょう?残念だけどこの先は行き止まりだけどねん。」
「ってことは!」
話を聞いていた助態が起き上がりながら声をかける。
「そうよ~ん。ガイラには船の墓場を通るルートか森を抜けるルートしかないのよぉ~。」
つまり、助態たちが人食いに食べられたのは、そういった土地勘を全く知らなかったから起きた悲劇だった。
「ガイラできちんと聞き込みをしなかったのも痛かったわけか…」
ちっ、と舌打ちをして八つ当たりをするようにもう一度大刀を叩きつける。
「あちきがお花を摘みに来てなかったらアナタ達は全滅だったわねぇ~ん。」
再びいーげが拳を叩き込む。
それに、といーげが付け加えた。
「この人食いはなかなか倒れないのよぅ。」
●
いーげが言うように、確かに人食いは全然倒れなかった。
少なくともティーパンの大刀攻撃を2度はくらい、いーげのパンチを何度もくらっている。
にもかかわらずダメージがあるようには見えない。
洞窟に擬態していた時は、洞窟にしか見えなかった人食いも、洞窟に擬態していない状態ではただの巨大なミミズだった。
「ちあに任せるのじゃ!」
いーげの説明を聞いていたちあが前に出る。
「大海の君臨者よ、反逆者を縛れ!水途束縛(アクアリストレイント)!」
ちあが構える杖から水で出来た輪っかが複数飛んで人食いの行動を制限した。
「魔導レベル8の魔導?おチビちゃん一体何者なの?でも人食いの行動を制限しても意味ないわよ?」
驚きながら言ういーげの言う通り、人食いは元々動きが速くない。
動きを制限する必要はあまりない。
しかし、水途束縛(アクアリストレイント)の効果は敵の動きを縛るだけではなかった。
「天候の支配者が怒れる嵐を呼ぶ!氷之雨(アイスレイン)」
ちあが杖を上に上げると、人食いの上空から氷が降り注いだ。
「あの魔導の効果には、属性攻撃が効きやすくなる効果もあるのよね。」
いーげの隣でティーパンが説明をする。
いーげは、口をぱくぱくさせながら、魔導レベル9…と呆気に取られていた。
無理もない。魔導レベル8を1回使用するだけでも莫大な魔力を消費する。
それどころか、きちんと扱える者も少ない。
それがまだ子供のちあが平気で扱えているのだから。
「ま。あの子は特別だから。」
そう言い置いてとどめと言わんばかりにティーパンが大刀で人食いを叩き切る。
「なかなか強いメンバーが揃っているパーティーなのねん。」
いーげもティーパンに合わせてパンチを叩き込み、ようやく人食いを倒した。
一見するとそれは洞窟のような見た目をしているが、地面から這い出したその体は洞窟というよりもミミズに近かった。
長く巨大なミミズだ。
そのサイズは洞窟サイズ。
彼はそれが人食いだとすぐに分かった。
人食いは、ガイラの町付近にしか生息していないので、ここらに住んでいない人には馴染みのないモンスターだ。
その名の通り、人を食うモンスターだが、自ら人間を襲うのではなく洞窟に擬態して人が口の中に入るのをじっと待っているタイプだ。
つまり、助態たちが洞窟の入り口だと思って入った場所は、人食いの口だったのだ。
彼が異様な光景だと思ったのは、その人食いが何やら苦しんでいるように見えたからだ。
それはつまり、人食いが人間を食べたのにどういう理由か体内で暴れていることを指す。
通常ならば中に迷い込んだ人間を人食いは、すぐに消化すべく動くのだが今回は迷い込んだ人数が多すぎたのだ。
人間で言うところの、一度に多くの食べ物を呑み込んでしまった状況だ。
更に偶然にも助態が何度もリバースをした。
想像してみよう。自分の体内で生物が食べ物を吐くことを。
つまりはそういうことを人食いはされたわけだ。
「何だか分からないけれど、苦しんでいるようね~。」
おかま声で話す彼の声は、助態たちが洞窟内で聞いた声と同じ声だった。
●
洞窟内にいる助態たちには、それが人食いだと知る術もなければ、外で彼が人食いと今から戦おうとしていることすら分からずにいた。
しかし、目の前の池が恐らくは胃酸であることが分かり、ひとまずはその地から離れることにした。
「ここが生き物の体内だとすると、俺たちが入ったあの入り口が口だったってことですかね?」
助態が隣のティーパンに聞く。
あぐらをかいた膝の上ではちあがすやすやと眠っている。
洞窟内、いやモンスターの体内だと分からないが、ちあが眠っているところを見ると外は夜なのだろう。
「多分ね。まさか人間を捕食するモンスターがいるなんて思ってもみなかったけど…」
助態の質問に頷きながらティーパンが言う。
ティーパンが冒険をして出会ったモンスターの中には、襲ってくる個体はいても捕食する個体はいなかったようだ。
もっとも、ぷーれいに欲情するようなモンスターもいるのだから、ティーパンが知っているモンスターが全てではないのだろうが。
それでも、熟練だと思っていたティーパンですら知らないモンスターがいたことは、助態にとっては驚きだった。
魚名人が見たことも聞いたこともない魚を見たと言っているのと同じ感じだ。
「これからどうしますか?」
純純が聞く。
どうする。とは、ここからどうやって抜け出すのかという意味だ。
今助態たちは、胃酸だと思われる池から少し離れた場所で座っている。
むやみやたらに動くとまた、洞窟(モンスター)が蠢くため、迂闊に動かない方がいいだろうという結論には至っている。
「思うんすけど。」
片手を挙げて発言の許可を求めるかのようにぱいおが口を開く。
「外に人がいるんすよね?その人ってウチらのこと助けてくれたりしないんすかね?」
「どうだろ?俺たちの声が聞こえてるわけじゃないだろ?」
少し考えてから助態が言うと、隣のもふともも頷く。
「そうだねぇ。アタイたちが食べられてるんだとしたら、この洞窟に見えたモンスターを倒そうとしてるだけなんじゃないのかい?」
「ねぇ。それってまずいんじゃないの?」
もふともの考えを聞いたアンアンが言う。
「外にいる人が私たちを食べたモンスターを倒そうとしているんだとしたら、私たちが食べられていることを知らない可能性もあるんじゃないの?」
「・・・あり得るね。すると中にいる私たちごと倒すような攻撃をされる可能性もあるね…」
アンアンの考えを聞いたティーパンも、少し考えてから口を開いた。
最後に、急いで出ないと。と付け加えた。
●
人食いに食べられた助態たちは、一刻を争う状況に陥っていた。
人食いを外から攻撃するおかま、いーげには知る由もないが、人食いは助態たちを食べている。
とにかく目の前にいる人食いを倒して、被害に遭う人間を減らそうとする考えしか頭にはない。
そんないーげの考えを何となく気が付いている助態たちは、一刻も早く人食いの体内から脱出しなければという焦燥感に駆られる。
「外にいる人がこの洞窟モンスターを倒す前に脱出しないと、私たちもモンスターと同じ運命になっちゃいます!」
慌てるようにルブマがティーパンがさっき言ったことを繰り返し言う。
それもう聞いた。ともふともが走りながら呆れる。もう3度目の繰り返しだ。
今、助態たちは洞窟の入り口であるモンスターの口に向かっている。
外の人物がモンスターに攻撃を加えているため、中で食べられている助態が走ろうとどうしようと、くねくね動くのは変わらない。
「正に蠢く洞窟だね。」
走りながらティーパンが呟く。
横の壁がモンスターの肉ならばと、大刀で先ほど攻撃してみたが、びくともしなかった。
ティーパンの予想では、体内からの攻撃にはほぼ効果がないのだろうということだ。
「オロロロロ~。」
助態のリバースも二桁に突入した。
「うぎゃー!また汚されたっすー!」
叫びながらぱいおが助態の汚物を純純の服で拭き取る。
「ちょっ、やめてください。」
本当に嫌そうな言い方を純純がしたので、助態はすごく傷ついた顔をした。
「俺、勇者だよ?」
「常に発情して他人に色んな体液をぶっかける勇者っすけどね!」
「いっ、色んな体液ってなんだよ!」
「そりゃー唾液とか、セー」
「見えた!」
助態とぱいおの言い合いを遮るようにティーパンの鋭い声がした。
おかげでぱいおの、し。という言葉は誰にも聞こえなかった。
ティーパンが指さす先には月明かりが見える。
モンスターが口を上に向けて開けているからだ。
その口の外に向かって助態たちは脱出した。
●
「あんらぁ~?アナタ達人食いに食べられていたのね~?」
喋り方は女だが、その声質は低く渋い。
助態たちは洞窟に擬態していたモンスター、人食いの口から何とか脱出したところだった。
人食いの口は想像以上に高い場所にあったようで、身軽さが売りのもふともと熟練のティーパン以外のメンバーは地面にべちゃっと着地をしたり、しりもちをつく形となった。
助態は地面とキスをしていた。
ちあはどういうわけか助態の背中の上に着地していたが、その衝撃で目を覚ましたようだ。
「なっ…」
見事な着地を見せたもふともが絶句する。
「なんじゃこいつは?」
そのもふともの絶句をものの見事にちあが言葉に言い表した。
助態もその妙に違和感のある話し方に目を上げると、話し方だけでなく姿恰好までもがとんちんかんな大男がそこには立っていた。
「あんらぁ~?いい男じゃな~い?あちきのタイプよ~ん。あちきはいーげ。よろしくね~ん。」
いーげと名乗った筋肉ムキムキのブリーフ一丁の大男は、そう言って助態にウインクした。
よく見れば、ゴツゴツした顔に剃り残しなのか青髭が目立ち、すね毛も胸毛も腕毛ももじゃもじゃだった。
正にちあが言った、なんじゃこいつは。がぴったし当てはまる。
そのままムキムキのおかま大男は人食いに向かって走り出した。
素早くティーパンがそれに並走する。
一拍遅れてもふともも後に続く。
「あれは何?」
得体の知れないモンスターを見ながらティーパンは、得体の知れない大男に問う。
同じ得体の知れないものでも、モンスターよりは人間の方が信用があるようだ。
「あれは人食い。普段は洞窟に擬態してて迷い込んだ人間を食べるモンスターよぅ。」
両手を上に上げ、しゅたたた!と走りながら簡単にいーげが説明する。
「あれに食べられるとねぇ、外の声は聞こえるのに中からの声は全く聞こえないのよ~ぅ。まさかアナタ達が食べられてるなんて思ってもみなかったわぁ~ん。」
「どういうことだい?洞窟に擬態して人間を食べるモンスターなら、食われてるやつがいるかもって思うのが普通じゃないのかい?」
やや後方で話を聞いていたもふともが今度は訊ねる。
「違うのよ~ぅ。人食いってこの辺りにしか生息してないんだけどねぇ~。この辺に住んでいる人の中では常識なのよ~ぅ。だからみんな、まさか人食いに食べられる人がいるとは思わないわけ。」
振り上げた両方の手を組んで拳を作り、そのまま人食いに振り下ろす。
「どういうこと?確かにガイラ付近の人たちにとっては常識のことかもしれないけれど、ここを通る旅の人や商人だっているはずでしょ?」
今度はティーパンが大刀を人食いに振り下ろしながら言う。
「残念だけど、ここの近くには船の墓場があるからねぇん。旅人も商人もいないのよねぇ。」
さっきとは打って変わって、暗い声をいーげが出す。
「だからアナタ達も船の墓場を避けるようにこのルートを使ったわけでしょう?残念だけどこの先は行き止まりだけどねん。」
「ってことは!」
話を聞いていた助態が起き上がりながら声をかける。
「そうよ~ん。ガイラには船の墓場を通るルートか森を抜けるルートしかないのよぉ~。」
つまり、助態たちが人食いに食べられたのは、そういった土地勘を全く知らなかったから起きた悲劇だった。
「ガイラできちんと聞き込みをしなかったのも痛かったわけか…」
ちっ、と舌打ちをして八つ当たりをするようにもう一度大刀を叩きつける。
「あちきがお花を摘みに来てなかったらアナタ達は全滅だったわねぇ~ん。」
再びいーげが拳を叩き込む。
それに、といーげが付け加えた。
「この人食いはなかなか倒れないのよぅ。」
●
いーげが言うように、確かに人食いは全然倒れなかった。
少なくともティーパンの大刀攻撃を2度はくらい、いーげのパンチを何度もくらっている。
にもかかわらずダメージがあるようには見えない。
洞窟に擬態していた時は、洞窟にしか見えなかった人食いも、洞窟に擬態していない状態ではただの巨大なミミズだった。
「ちあに任せるのじゃ!」
いーげの説明を聞いていたちあが前に出る。
「大海の君臨者よ、反逆者を縛れ!水途束縛(アクアリストレイント)!」
ちあが構える杖から水で出来た輪っかが複数飛んで人食いの行動を制限した。
「魔導レベル8の魔導?おチビちゃん一体何者なの?でも人食いの行動を制限しても意味ないわよ?」
驚きながら言ういーげの言う通り、人食いは元々動きが速くない。
動きを制限する必要はあまりない。
しかし、水途束縛(アクアリストレイント)の効果は敵の動きを縛るだけではなかった。
「天候の支配者が怒れる嵐を呼ぶ!氷之雨(アイスレイン)」
ちあが杖を上に上げると、人食いの上空から氷が降り注いだ。
「あの魔導の効果には、属性攻撃が効きやすくなる効果もあるのよね。」
いーげの隣でティーパンが説明をする。
いーげは、口をぱくぱくさせながら、魔導レベル9…と呆気に取られていた。
無理もない。魔導レベル8を1回使用するだけでも莫大な魔力を消費する。
それどころか、きちんと扱える者も少ない。
それがまだ子供のちあが平気で扱えているのだから。
「ま。あの子は特別だから。」
そう言い置いてとどめと言わんばかりにティーパンが大刀で人食いを叩き切る。
「なかなか強いメンバーが揃っているパーティーなのねん。」
いーげもティーパンに合わせてパンチを叩き込み、ようやく人食いを倒した。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる