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犬だ
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次の日、僕はまた昼休みに中庭に来ていた。いつも座っているところにもたれると、本を開く。
やっぱり落ち着く。毎日昼休みはこうして中庭で本を読むのが日課だった。
栞のところを開き、続きを読む。
「あの、!」
中庭には自分しかいないはず。そう思って声の方を向くと、昨日のタレ目くんが肩で息をしながら立っていた。
「どうしたの?」
昨日いきなり頭を触ったのはやっぱりだめだったのかな。フワフワしてたなぁ。
「な、名前を!名前を教えてください!俺は成瀬春です!」
・・・どんな文句が飛び出してくるかと身構えていた分、名前を聞かれきょとんとしてしまった。
「あの・・・?」
困ったように眉を下げるタレ目・・・、いや春くん。なんだかとても可愛く思えてきた。読んでいる途中だった本に栞を挟んで春くんに体を向ける。
「僕は黒川湊。よろしくね」
「湊先輩お隣!よろしいですかっ!」
緊張気味にそう言う春くんが可笑しくて、少し笑いながら了承した。
「湊先輩は、いつもここにいるんですか?」
「うん。本が好きなんだ。」
肌を撫でる風が気持ちいい。と、風下にいた春くんがぐっと近づいてきた。
「なんかいい匂い。」
「え、」
そのまま僕の首元を嗅ぐ。
な、なな・・・っ!?
あ、と納得したように呟いた。
「ミルクだ。ミルクの匂い。」
ニカッと笑ってこちらを向くも、首元を嗅いでいた距離のまま顔を向けたので近すぎて何が起こっているのかわからなかった。
「っあ!すいません!つい、!」
いい匂いがしたから、と赤くなって縮こまる。
「・・・いい匂いって、」
なんだかとても気恥ずかしくて、それで春くんが犬っぽくて笑ってしまった。
「笑わないでくださいよぉ」
「あはは、ごめんね」
拗ねた顔で文句を言う春くん。クスクスと笑っていると、小さい虫がはるくんの頭にとまった。
「あ、虫。」
ふわふわの頭にとまって気持ちよさそう、なんて考えていたら、
「え!?虫!?取ってくださいぃいい!!」
と春くんが絶叫した。虫が苦手なのかな。
「わかった、じっとしてて。」
身を乗り出して春くんの頭に近づくと両手で虫をすくって、ふっと息を吹きかけた。
突然の風に驚いたのであろう虫はどこか遠くへ飛んでいった。
「はい。飛んでったよ。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
よほどゾッとしたのか、ふわふわの髪をぷるぷるさせている。・・・触りたい。
衝動を抑えきれず、頭に手をのせる。
「先輩?」
「あぁ、ごめんね。ふわふわだから。」
謝る割には離れる気はなく、両手でふわふわと弄る。気持ちいい。くせっ毛なのだろう、ゆったりとしたカールが指に絡んで飽きない。
「俺の髪なんて面白くないですよー?先輩の髪も触らしてください!」
ウキウキキラキラとした目で僕を見上げてくるので名残惜しいけど春くんの髪を弄るのをやめて座り直す。
一つにまとめていた髪ゴムをとって、ふるふると頭を揺らすと束ねていた髪はサラリと肩に触れた。
「はい、どーぞ」
と頭を突き出すと、春くんは少し緊張しながら僕の髪に手を伸ばした。
僕の髪の毛なんて何も楽しくないだろうに、サラ、サラと指で髪を梳き続ける。
春くんは少し頬を赤らめながら眺めの黒髪を弄り続ける。
「・・・」
無言で髪をいじり続ける春くん。僕はずっと頭を突き出している体勢だから、そろそろ疲れてくる。
「あの・・・」
春くんはハッと我に返って僕の体勢に気づくと、
「あ!すいません疲れましたよね!えーとじゃあ・・・」
少し考えるような仕草を見せて、こうしましょう!とにっこり笑った。
春くんに提案されたのは、春くんが木にもたれかかって足を開いてその間に僕が座るというものだった。
「は、春くん・・・」
「?」
僕だけ意識してるようで恥ずかしくて、大人しく春くんの足の間に入る。
・・・うん、確かにこれは落ち着く。
わりとガッシリとした春くんに抱きしめられているような感覚にそわそわするけど、髪をさらさらと弄られるのは気持ちがよかった。
なんだか、眠くなってきちゃった。
やっぱり落ち着く。毎日昼休みはこうして中庭で本を読むのが日課だった。
栞のところを開き、続きを読む。
「あの、!」
中庭には自分しかいないはず。そう思って声の方を向くと、昨日のタレ目くんが肩で息をしながら立っていた。
「どうしたの?」
昨日いきなり頭を触ったのはやっぱりだめだったのかな。フワフワしてたなぁ。
「な、名前を!名前を教えてください!俺は成瀬春です!」
・・・どんな文句が飛び出してくるかと身構えていた分、名前を聞かれきょとんとしてしまった。
「あの・・・?」
困ったように眉を下げるタレ目・・・、いや春くん。なんだかとても可愛く思えてきた。読んでいる途中だった本に栞を挟んで春くんに体を向ける。
「僕は黒川湊。よろしくね」
「湊先輩お隣!よろしいですかっ!」
緊張気味にそう言う春くんが可笑しくて、少し笑いながら了承した。
「湊先輩は、いつもここにいるんですか?」
「うん。本が好きなんだ。」
肌を撫でる風が気持ちいい。と、風下にいた春くんがぐっと近づいてきた。
「なんかいい匂い。」
「え、」
そのまま僕の首元を嗅ぐ。
な、なな・・・っ!?
あ、と納得したように呟いた。
「ミルクだ。ミルクの匂い。」
ニカッと笑ってこちらを向くも、首元を嗅いでいた距離のまま顔を向けたので近すぎて何が起こっているのかわからなかった。
「っあ!すいません!つい、!」
いい匂いがしたから、と赤くなって縮こまる。
「・・・いい匂いって、」
なんだかとても気恥ずかしくて、それで春くんが犬っぽくて笑ってしまった。
「笑わないでくださいよぉ」
「あはは、ごめんね」
拗ねた顔で文句を言う春くん。クスクスと笑っていると、小さい虫がはるくんの頭にとまった。
「あ、虫。」
ふわふわの頭にとまって気持ちよさそう、なんて考えていたら、
「え!?虫!?取ってくださいぃいい!!」
と春くんが絶叫した。虫が苦手なのかな。
「わかった、じっとしてて。」
身を乗り出して春くんの頭に近づくと両手で虫をすくって、ふっと息を吹きかけた。
突然の風に驚いたのであろう虫はどこか遠くへ飛んでいった。
「はい。飛んでったよ。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
よほどゾッとしたのか、ふわふわの髪をぷるぷるさせている。・・・触りたい。
衝動を抑えきれず、頭に手をのせる。
「先輩?」
「あぁ、ごめんね。ふわふわだから。」
謝る割には離れる気はなく、両手でふわふわと弄る。気持ちいい。くせっ毛なのだろう、ゆったりとしたカールが指に絡んで飽きない。
「俺の髪なんて面白くないですよー?先輩の髪も触らしてください!」
ウキウキキラキラとした目で僕を見上げてくるので名残惜しいけど春くんの髪を弄るのをやめて座り直す。
一つにまとめていた髪ゴムをとって、ふるふると頭を揺らすと束ねていた髪はサラリと肩に触れた。
「はい、どーぞ」
と頭を突き出すと、春くんは少し緊張しながら僕の髪に手を伸ばした。
僕の髪の毛なんて何も楽しくないだろうに、サラ、サラと指で髪を梳き続ける。
春くんは少し頬を赤らめながら眺めの黒髪を弄り続ける。
「・・・」
無言で髪をいじり続ける春くん。僕はずっと頭を突き出している体勢だから、そろそろ疲れてくる。
「あの・・・」
春くんはハッと我に返って僕の体勢に気づくと、
「あ!すいません疲れましたよね!えーとじゃあ・・・」
少し考えるような仕草を見せて、こうしましょう!とにっこり笑った。
春くんに提案されたのは、春くんが木にもたれかかって足を開いてその間に僕が座るというものだった。
「は、春くん・・・」
「?」
僕だけ意識してるようで恥ずかしくて、大人しく春くんの足の間に入る。
・・・うん、確かにこれは落ち着く。
わりとガッシリとした春くんに抱きしめられているような感覚にそわそわするけど、髪をさらさらと弄られるのは気持ちがよかった。
なんだか、眠くなってきちゃった。
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