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雪とココア

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 雪が駸々と降り積もり、俺の目の前には、いつもと違う景色が広がっていた。

 高校の施設としては立派な四階建ての図書館。その四階にあるカフェが併設された閲覧室からは、真っ白になった中庭と、その奥にある教職員用の駐車場が見える。蔵書を守るための温度と湿度は常時保たれているのだろうが、暖房は止められたようで、窓の近くにいると外の冷気が伝わってくる。

 今日は朝から、南関東では今季二度目の雪が降っていた。前回は散らついただけで終わったが、今回はしっかりと降り積もっている。天気予報では昼から雨に変わるだろうと言っていたが、午後三時を回った今でも、灰色の空からはぼってりとした重そうな雪が降りてくる。交通機関はまだ頑張っているけど、このまま降り続けたらいつ止まってもおかしくない。そんな状況だから、学校からは全校生徒に帰宅命令がでて、委員会や部活動はすべて中止になった。教職員も同じならしく、駐車場からは一台、また一台と雪をかぶったままの車が出て行く。

 しばらく外を眺めていると、雪は更にひどくなり、指先が少し冷えてきた。ハーッとそこに息をかけ暖めていると、天井付近にあるスピーカーから、さっさと帰れと言わんばかりに完全下校を促す時の音楽が流れてきた。しかたなく俺は読みかけの本を閉じ、帰り支度をしながら、ある男の顔を思い浮かべていた。こんな寒い日は、あの人が作った熱々のココアを飲みたくなる。あの人が作るココアはチョコレートのように濃厚で、一口飲んだだけで心も体も温まる。

(まだいるかと思ったんだけどな)

 カフェのカウンターはすでに照明が落とされ、クリーム色のシャッターで閉じられている。
 しかたがないので校内の自販機にあるココアで我慢しようと考えていると、ポケットの中のスマホがメッセージの着信を伝えてきた。アプリを開くとそこには、

あつあつ濃厚ココア
飲みたくありませんか?
今ならもれなく
僕特製のバタークッキーもついてます
各種トッピングも可能ですよ

とあった。

 それは、さっき顔を思い浮かべたばかりのあの人からのメッセージだった。メッセージにはマシュマロやチョコレートがのった皿の画像と、彼のアパートまでの地図が添付されていた。ここからだと歩いて十分ほどの距離だった。

 返事を打とうとしたタイミングで、再び彼からメッセージがきた。

きみに会いたいです
来てくれますか?

 答えはイエスしか思い浮かばなかった。
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