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もう1つの姿
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ドドドドドという轟音でラズは目を覚ました。吹雪は止んでいた。洞窟の中に眩しい光が差し込んでいた。轟音は段々と近付いて来ている。体に振動が伝わってくる。地面どころか洞窟全体が揺れだしたので、ラズは外へ出ることにした。
外へ出てみると思った通り雪崩が起きていた。かなり広範囲だ。ラズがいるところにはこなさそうだったが、念の為いつでも飛び立てるよう羽を広げた。そこで初めて、ラズはいつもつけていた数珠の気配が近くに感じられることに気付いた。理望は数珠をあの場に置いていった。あの数珠は闇の力を封じる。本来は、ガラやゾルが触れられる物ではない。もしここまで持ってきた者がいるのなら、十中八九旅の仲間だ。
ラズは雪崩の起きている箇所に目を凝らした。ここからでは、よく見えない。翼をバサリと大きく羽ばたかせ飛び立った。
上空から見ると、おかしなものがあった。近寄ると、木に矢が刺さっており、そこから綱が伸びているのがわかった。その矢には見覚えがあった。…ミックのものだ。
綱の先は完全に雪に埋まっている。この先に埋まっているのだろうか。すぐに助け出さなくては、窒息死してしまう。ラズは綱が埋まっている場所の雪をガッガッと鋭い爪で掘り進めた。ある程度掘ったあと、綱を思い切り引っ張った。
「うげぇっ!」
蛙が潰れたような声がして、氷のボールがずぼっと雪の中から出てきた。シュートの魔法か、とその出来にラズは素直に驚いた。声の主はミックだった。綱に直接結ばれているミックは、ボールの中でつっかえ棒のような役割になり、ボール全体の重さが体にかかったのだ。とりあえず全員が生きているのを確認できて、ラズは安心した。
シュートが魔法を解き、氷の球はパッと散ってなくなった。思わず助けてしまったが、ラズは仲間と顔を合わせたくはなかった。
また逃げよう、と思ったがベルの方が速かった。ぱっと飛び出し、ラズの足の指に数珠をはめた。
ラズの体は、今度は眩い光りに包まれ、それが徐々に縮んでいった。光が消えた時、足首に数珠をはめたラズがそこにいた。
「あんたねぇ…!!」
ベルは怒りの形相だ。ああ、きっと罵られるのだ。あるいは、詰問されるか。ラズはベルを力のない目で見た。
「そんな便利な移動手段あったのに、何でさっさと言わないの!」
「…は?」
今なんといったのだ。ガラだとか闇だとか、そういった単語は一切なかった。移動…?
「最初は驚いたけど…何でガラなのかとか、ドラゴンってどういうことだろうとか。でも、あんた探してるうちに段々腹が立ってきちゃって。」
ベルは何とか言いなさいよ、と言った様子でラズを睨んでいる。
「お前、最初に言う言葉がそれかよ!ラズだって色々あんじゃねぇの?」
「だって、本当のこと黙ってたの二回目なんだもの!」
ベルは今度はシュートを睨みつけた。シュートは先程の正拳突きを思い出したのか、少したじろいた。
「まあまあ。見つかったからいいじゃない?今後は俺達乗せて運んでくれるかもしれないし。ラズは、怪我はないの?」
いつもの調子でフォローに入るディルに、ラズは呆気にとられて返事ができなかった。
「とりあえず、街に戻ろ。あ、帰り道は運んでくれなくて大丈夫だよ!…見てこれ!!」
ミックはミニスキー板をラズに見せた。目がこれまでないくらいに輝いている。帰りはくだりなのでスキーで行くという。ラズの分の板も用意されていた。
何だか拍子抜けしてしまって、ラズはなされるがまま板を履き、仲間とともに山を下った。
外へ出てみると思った通り雪崩が起きていた。かなり広範囲だ。ラズがいるところにはこなさそうだったが、念の為いつでも飛び立てるよう羽を広げた。そこで初めて、ラズはいつもつけていた数珠の気配が近くに感じられることに気付いた。理望は数珠をあの場に置いていった。あの数珠は闇の力を封じる。本来は、ガラやゾルが触れられる物ではない。もしここまで持ってきた者がいるのなら、十中八九旅の仲間だ。
ラズは雪崩の起きている箇所に目を凝らした。ここからでは、よく見えない。翼をバサリと大きく羽ばたかせ飛び立った。
上空から見ると、おかしなものがあった。近寄ると、木に矢が刺さっており、そこから綱が伸びているのがわかった。その矢には見覚えがあった。…ミックのものだ。
綱の先は完全に雪に埋まっている。この先に埋まっているのだろうか。すぐに助け出さなくては、窒息死してしまう。ラズは綱が埋まっている場所の雪をガッガッと鋭い爪で掘り進めた。ある程度掘ったあと、綱を思い切り引っ張った。
「うげぇっ!」
蛙が潰れたような声がして、氷のボールがずぼっと雪の中から出てきた。シュートの魔法か、とその出来にラズは素直に驚いた。声の主はミックだった。綱に直接結ばれているミックは、ボールの中でつっかえ棒のような役割になり、ボール全体の重さが体にかかったのだ。とりあえず全員が生きているのを確認できて、ラズは安心した。
シュートが魔法を解き、氷の球はパッと散ってなくなった。思わず助けてしまったが、ラズは仲間と顔を合わせたくはなかった。
また逃げよう、と思ったがベルの方が速かった。ぱっと飛び出し、ラズの足の指に数珠をはめた。
ラズの体は、今度は眩い光りに包まれ、それが徐々に縮んでいった。光が消えた時、足首に数珠をはめたラズがそこにいた。
「あんたねぇ…!!」
ベルは怒りの形相だ。ああ、きっと罵られるのだ。あるいは、詰問されるか。ラズはベルを力のない目で見た。
「そんな便利な移動手段あったのに、何でさっさと言わないの!」
「…は?」
今なんといったのだ。ガラだとか闇だとか、そういった単語は一切なかった。移動…?
「最初は驚いたけど…何でガラなのかとか、ドラゴンってどういうことだろうとか。でも、あんた探してるうちに段々腹が立ってきちゃって。」
ベルは何とか言いなさいよ、と言った様子でラズを睨んでいる。
「お前、最初に言う言葉がそれかよ!ラズだって色々あんじゃねぇの?」
「だって、本当のこと黙ってたの二回目なんだもの!」
ベルは今度はシュートを睨みつけた。シュートは先程の正拳突きを思い出したのか、少したじろいた。
「まあまあ。見つかったからいいじゃない?今後は俺達乗せて運んでくれるかもしれないし。ラズは、怪我はないの?」
いつもの調子でフォローに入るディルに、ラズは呆気にとられて返事ができなかった。
「とりあえず、街に戻ろ。あ、帰り道は運んでくれなくて大丈夫だよ!…見てこれ!!」
ミックはミニスキー板をラズに見せた。目がこれまでないくらいに輝いている。帰りはくだりなのでスキーで行くという。ラズの分の板も用意されていた。
何だか拍子抜けしてしまって、ラズはなされるがまま板を履き、仲間とともに山を下った。
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