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討伐
有力な情報
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石の動きがかなり激しいので近くに例のゾルがいるとみて、めぼしい情報がなくても一行はモデローザに滞在し続けた。ミックは調査の合間にこっそりと雪だるまを作り、自分の密かな夢の一つを実現させた。
ある日、ディルが気になる情報を入手したと全員で集まった。
「雪帽子山の麓に湖があるらしいんだ。湖に冬場は氷が張るから、そこに穴を開けて釣りをするんだって。」
なんて楽しそうなんだ。ミックは想像しただけでわくわくした。景色を楽しみながらも寒さに耐えて釣った魚はさぞかし美味しいだろう。
「おい、よだれが出てるぞ。」
ラズに言われてミックは我に返った。
「続けるね。そこで釣りをしていた人たち数人が女の幽霊を見たって言うんだ。女性の姿だということはわかるんだけど、黒くぼんやりとしていてなんだかはっきりしなかったんだって。」
オーリッツの北の館で見たザーナ姫の真名を半分知ったゾルは、確かそんな姿をしていた。
「その幽霊は、雪帽子山に入っていったんだって。それが今日の午前の話。」
今は昼食を食べ終わったばかりの時間だ。日没までにはまだ時間がある。しかし、雪山に入るとなるとまた話は変わってくる。山での捜索活動を開始するには、少し遅いかもしれない。
「明日その湖から雪帽子山に入ることになるのかな?」
「それなんだけど…。」
ミックの疑問にはっきり答えず、ディルはラズを見た。懇願するような、期待するような眼差しだ。なるほど、と思いミックもラズを見つめた。ベルとシュートも察したようで、右に倣えをして見つめた。全員に見つめられて、ラズは少しぎょっとしたようだが、すぐ軽く溜息をついた。何を求められているか気付いたようだ。
「そういうことか。俺に全員を運べと?」
「ダメか?」
シュートが手を合わせて上目遣いでラズを見た。それは逆効果なのでは…とミックは思ったが何も言わなかった。
「その気色悪い顔つきをやめたら、考えてやってもいい。」
ラズはシュートの頭を鷲掴みにし、ぐいっと自分から遠ざけた。ラズは街の人に見られないならば、ドラゴンに变化することは構わないと言った。
「ただし、俺は人を乗せて飛んだことはない。ウィンストールまでミックを運んだときは手で抱えていた。抱えられるのは、そうだな…せいぜい二人。他は背中や首にしがみついてもらうしかない。それに、それで俺がうまく飛べる保証もない。」
上に乗る二人には、過酷な体験が待っていそうだ。あのスピードの中ずっとしがみつくのは、相当な筋力、体力が要求されるだろう。ミックは想像してみたが、楽しそうな反面、かなり怖そうだった。
「命綱みたいに、ラズと乗る人を結ぶのは大丈夫?」
「首と翼と尻尾が自由に動く範囲なら、恐らく大丈夫だ。」
話し合いの結果、手で持つなら軽いほうがいいことと、上に乗るには体力がいるということで、ミックとシュートは手で運んでもらい、ベルとディルが上に乗ることになった。
「ドラゴンの姿の時って喋れるの?」
「いや、言われたことはわかるが、口腔の形状が違うから人の言葉は話せない。」
ラズはディルに首を振った。
「っていうかずっと気になってたんだけど、何でドラゴンなんだ?お前の魔力とかが関係してんのか?」
シュートと同じ疑問をミックも持っていた。蛇や蟹もいたが、一体どういう経緯で変化対象は決まるのだろうか。ラズは少し不機嫌そうな顔になった。興味津々の旅の仲間達に太刀打ちできないと見てか、ラズは言いたくなさそうに話しだした。
ある日、ディルが気になる情報を入手したと全員で集まった。
「雪帽子山の麓に湖があるらしいんだ。湖に冬場は氷が張るから、そこに穴を開けて釣りをするんだって。」
なんて楽しそうなんだ。ミックは想像しただけでわくわくした。景色を楽しみながらも寒さに耐えて釣った魚はさぞかし美味しいだろう。
「おい、よだれが出てるぞ。」
ラズに言われてミックは我に返った。
「続けるね。そこで釣りをしていた人たち数人が女の幽霊を見たって言うんだ。女性の姿だということはわかるんだけど、黒くぼんやりとしていてなんだかはっきりしなかったんだって。」
オーリッツの北の館で見たザーナ姫の真名を半分知ったゾルは、確かそんな姿をしていた。
「その幽霊は、雪帽子山に入っていったんだって。それが今日の午前の話。」
今は昼食を食べ終わったばかりの時間だ。日没までにはまだ時間がある。しかし、雪山に入るとなるとまた話は変わってくる。山での捜索活動を開始するには、少し遅いかもしれない。
「明日その湖から雪帽子山に入ることになるのかな?」
「それなんだけど…。」
ミックの疑問にはっきり答えず、ディルはラズを見た。懇願するような、期待するような眼差しだ。なるほど、と思いミックもラズを見つめた。ベルとシュートも察したようで、右に倣えをして見つめた。全員に見つめられて、ラズは少しぎょっとしたようだが、すぐ軽く溜息をついた。何を求められているか気付いたようだ。
「そういうことか。俺に全員を運べと?」
「ダメか?」
シュートが手を合わせて上目遣いでラズを見た。それは逆効果なのでは…とミックは思ったが何も言わなかった。
「その気色悪い顔つきをやめたら、考えてやってもいい。」
ラズはシュートの頭を鷲掴みにし、ぐいっと自分から遠ざけた。ラズは街の人に見られないならば、ドラゴンに变化することは構わないと言った。
「ただし、俺は人を乗せて飛んだことはない。ウィンストールまでミックを運んだときは手で抱えていた。抱えられるのは、そうだな…せいぜい二人。他は背中や首にしがみついてもらうしかない。それに、それで俺がうまく飛べる保証もない。」
上に乗る二人には、過酷な体験が待っていそうだ。あのスピードの中ずっとしがみつくのは、相当な筋力、体力が要求されるだろう。ミックは想像してみたが、楽しそうな反面、かなり怖そうだった。
「命綱みたいに、ラズと乗る人を結ぶのは大丈夫?」
「首と翼と尻尾が自由に動く範囲なら、恐らく大丈夫だ。」
話し合いの結果、手で持つなら軽いほうがいいことと、上に乗るには体力がいるということで、ミックとシュートは手で運んでもらい、ベルとディルが上に乗ることになった。
「ドラゴンの姿の時って喋れるの?」
「いや、言われたことはわかるが、口腔の形状が違うから人の言葉は話せない。」
ラズはディルに首を振った。
「っていうかずっと気になってたんだけど、何でドラゴンなんだ?お前の魔力とかが関係してんのか?」
シュートと同じ疑問をミックも持っていた。蛇や蟹もいたが、一体どういう経緯で変化対象は決まるのだろうか。ラズは少し不機嫌そうな顔になった。興味津々の旅の仲間達に太刀打ちできないと見てか、ラズは言いたくなさそうに話しだした。
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