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第三章 時空捜査クラブのメンバー

第12話

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 通り抜けた先は山の木々の中で、人気は全くない。

「ここなら、人が踏み入ってこないから安心だよ。でも、帰り道を忘れないように、木の形を覚えながら歩き回らないと迷子になるよ」

 木なんて、大祇にはどれも一緒に見える。

(すぐに迷子になりそうだな……)
 大祇は心の中でつぶやいた。

「たいきは、その時空の繋がっている出入り口のところで、座って待っていてね。僕は酒呑童子がいないか探してくるから。三十分したら戻ってくるけど、もし帰ってこなかったら、先に時空を通って教室に行っていてね。もし、万が一、鬼に遭遇したらその刀を前に突き出した状態で、後ずさりしながら時空に入るといいよ。時空に刀文様通行証のない鬼は入れないからね」

「わかったよ。マシューも気を付けてね」

 理解したことを伝えると、マシューはサッと木の上に飛び上がって姿を消した。

(マシューは、忍者みたいだし、あの錬金術みたいな不思議な力も使えているし、俺の考えもしないことをしているんだな。さっきの錬金術も一体全体どういう仕組みでできているんだか、俺にはさっぱりわからないなぁ)

 大祇は、時空の出入り口前で、仰向けに横たわる。マシューが鬼除けとして護身用に造ってくれた刀の刃に巻き付けていた汗拭きタオルをはずして、それを丸めて枕替わりにした。刀はいつでも使えるように右手からは離さないようにしている。
 
 昼寝をするには最高の天気だ。涼やかな風が通り抜けて、目の前に広がる木々を揺らしていく。風に揺れた葉に光が反射してキラキラと美しい。

 大祇は目を閉じている間に、いつの間にか眠ってしまった。

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