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第20話 同居
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アルとの生活は思っていたより楽しいものであった。
彼は自分から喋ることはないものの、話しかけると嬉しそうに口許を緩めてくれた。
家事が苦手な私のことも彼なりに助けてくれたのである。
「カミルさん、これはここで良いですか? 」
「うん、ありがとう」
お皿を丁寧に並べるアル。まるで弟が出来たみたいでちょっと嬉しい。
しかし、依然として彼の記憶の手がかりになるような情報は入ってこなかった。
すると誰かが扉を叩く音が聞こえた。
「あ、僕出ますよ」
パタパタと走っていくアル。
後を追うように私も向かうと、そこには驚いた表情で私とアルを交互に見るリクの姿があった。
「あ、リク。どうしたの? 」
「……この子はカミルの子どもか? 」
「そんなわけないでしょう! どこかから来た迷子みたいなの。記憶がないみたいだから思い出すまで一緒に住んでいるだけよ」
「良かった」
よ、良かった?
それってどういうことなんだろう……。
しかしアルは不機嫌そうな顔でリクを見つめている。
「カミルさん、この人は誰ですか? カミルさんの恋人? 」
「こっ……」
変な声をあげるリク。
「違う違う、ご近所さんよ」
……吸血鬼にしてしまった青年とは言わないでおこう。
「それなら良かったです」
「良かったってどういうことだよ」
「別に。貴方には関係のないことです」
あれれ、この二人、もしかして仲悪い……?
「まーまー、良いじゃないですか。喧嘩しないで」
二人の間に割り込んだ私はリクの方に向き直る。
「それで、今日はどうしたんですか? 」
「ああ、何やら怪しい連中がこの辺りをうろついているらしい」
「怪しい連中? 」
「全身真っ黒な服を着て、顔を隠しているそうだ」
「怖いね……」
もしかしたら私を探しに来た追っ手かもしれない、そう思うと背筋が震えた。
「戸締まりはしっかりしろよ、女の独り暮らしなんだから」
「ありがとう」
心配して見に来てくれたのか。
リクはやっぱりぶっきらぼうだけど優しい。
そのとき、ピリッとした殺意を感じる。
思わずそちらを振り向く私とリク。
そして私が動くより先に、リクが飛び出していた。
あっという間に気配を追いかけて森のなかに姿を消すリク。
……凄い。
元々の身体能力が高いのもあるだろうが、吸血鬼と化したことでその能力が一層増している。
事情を知らないアルは、ポカンとその様子を見ていた。
「な、なんなんですかあの人は? 目も赤いし、人間じゃない……? 」
「えーっとね……」
どう説明すれば良いのだろう。
一応私も人間ではないんだよね……。
「駄目だ、見失った」
リクは案外直ぐに戻ってきた。
「不安ね……何者かしら」
「分からん。でも用心するに越したことはないだろう」
それもそうね、と私は頷く。
「その、なんだ……。今日泊まろうか? 危ないし」
視線を私から逸らしながらテレるリク。
「大丈夫よ、ミルファも心配するから帰ってあげて」
「そ、そうか」
あれ? ちょっとリク残念そう。
ま、いっか。
そしてアルは心なしか嬉しそうだ。
「……でも平気か? 」
「大丈夫よ、私を誰だと思ってるの」
違いない、とリクは頷いた。
彼は自分から喋ることはないものの、話しかけると嬉しそうに口許を緩めてくれた。
家事が苦手な私のことも彼なりに助けてくれたのである。
「カミルさん、これはここで良いですか? 」
「うん、ありがとう」
お皿を丁寧に並べるアル。まるで弟が出来たみたいでちょっと嬉しい。
しかし、依然として彼の記憶の手がかりになるような情報は入ってこなかった。
すると誰かが扉を叩く音が聞こえた。
「あ、僕出ますよ」
パタパタと走っていくアル。
後を追うように私も向かうと、そこには驚いた表情で私とアルを交互に見るリクの姿があった。
「あ、リク。どうしたの? 」
「……この子はカミルの子どもか? 」
「そんなわけないでしょう! どこかから来た迷子みたいなの。記憶がないみたいだから思い出すまで一緒に住んでいるだけよ」
「良かった」
よ、良かった?
それってどういうことなんだろう……。
しかしアルは不機嫌そうな顔でリクを見つめている。
「カミルさん、この人は誰ですか? カミルさんの恋人? 」
「こっ……」
変な声をあげるリク。
「違う違う、ご近所さんよ」
……吸血鬼にしてしまった青年とは言わないでおこう。
「それなら良かったです」
「良かったってどういうことだよ」
「別に。貴方には関係のないことです」
あれれ、この二人、もしかして仲悪い……?
「まーまー、良いじゃないですか。喧嘩しないで」
二人の間に割り込んだ私はリクの方に向き直る。
「それで、今日はどうしたんですか? 」
「ああ、何やら怪しい連中がこの辺りをうろついているらしい」
「怪しい連中? 」
「全身真っ黒な服を着て、顔を隠しているそうだ」
「怖いね……」
もしかしたら私を探しに来た追っ手かもしれない、そう思うと背筋が震えた。
「戸締まりはしっかりしろよ、女の独り暮らしなんだから」
「ありがとう」
心配して見に来てくれたのか。
リクはやっぱりぶっきらぼうだけど優しい。
そのとき、ピリッとした殺意を感じる。
思わずそちらを振り向く私とリク。
そして私が動くより先に、リクが飛び出していた。
あっという間に気配を追いかけて森のなかに姿を消すリク。
……凄い。
元々の身体能力が高いのもあるだろうが、吸血鬼と化したことでその能力が一層増している。
事情を知らないアルは、ポカンとその様子を見ていた。
「な、なんなんですかあの人は? 目も赤いし、人間じゃない……? 」
「えーっとね……」
どう説明すれば良いのだろう。
一応私も人間ではないんだよね……。
「駄目だ、見失った」
リクは案外直ぐに戻ってきた。
「不安ね……何者かしら」
「分からん。でも用心するに越したことはないだろう」
それもそうね、と私は頷く。
「その、なんだ……。今日泊まろうか? 危ないし」
視線を私から逸らしながらテレるリク。
「大丈夫よ、ミルファも心配するから帰ってあげて」
「そ、そうか」
あれ? ちょっとリク残念そう。
ま、いっか。
そしてアルは心なしか嬉しそうだ。
「……でも平気か? 」
「大丈夫よ、私を誰だと思ってるの」
違いない、とリクは頷いた。
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